社会のじかん

ネットに蔓延する「フェイクニュース」 知らないうちに拡散のキケン…

ライフスタイル
2017.04.07
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「フェイクニュース」です。

真偽の判断は困難。ほんとかな? の意識を常に持って。

堀潤

ネットで発信・拡散されるフェイクニュース(嘘のニュース)の問題が昨年から話題になっていますね。大きなきっかけは、アメリカの大統領選挙でした。ローマ法王がトランプ氏を支持しているなどのセンセーショナルなニュースが世界を駆け巡りましたが、真っ赤な嘘だったのです。問題は、それらのニュースが、信ぴょう性のありそうなニュースサイトに掲載されていたことです。偽のサイトを作っていたのは、マケドニアの若者たちでした。

サイトは、アクセス数だけ、そのページに掲載された広告料が入ってきます。人々が拡散したくなるような刺激的なタイトルをつければ、アクセス数も伸び、収入も増える。マケドニアの若者たちはお小遣い稼ぎに100以上の偽ニュースサイトを立ち上げ、フェイクニュースを流し続けていました。

2015年、コロンビア大学とフランス国立研究所が調査したところ、SNSユーザーの約6割が、リンク先の元記事をクリックせずに、タイトルだけでリツイートしたりコメントを書いていることがわかりました。しかも、アメリカ成人の過半数がニュースをSNS上で入手しています。日本も同じような状況ですよね。

テレビで明らかに問題のある情報を流せば、第三者組織がそれを監視、指摘しますが、ネットにはそういう機関がありません。この問題を受けフェイスブックでは、利用者が真偽を疑われるサイトを見つけたら通報でき、虚偽判定されたものには警告、共有・拡散するときにアラームが鳴るシステムを、アメリカだけでなくドイツや大統領選が近いフランスでも導入し始めました。

既存のニュースメディアもファクトチェックを始めました。ただ、いったん拡散されてしまったら、あとから真実を流したところで、追いつきません。防御策としては、私たちが、すぐにネットの情報を盲信せず、どんなことも、「そうなんだ。でもほんとかな?」という姿勢で受け取ることだと思います。

フェイクニュースは問題ですが、発信していなくても、知らず知らずに拡散の手助けをしている場合があります。クリックひとつでできてしまうことだけに、慎重でいたいですね。

堀潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2017年4月12日号より。写真・中島慶子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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