意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「OTC類似薬」です。
医療費削減の狙い。高齢になっても薬が買える安心を
「OTC医薬品」とは薬局やドラッグストアで購入できる市販薬のことで、「OTC類似薬」は市販薬と同様の有効成分の入った処方薬を指します。
例えば頭痛薬や湿布薬など、病院で医師に処方されれば保険適用となり、市販薬を買うよりも安く購入できます。しかし、日本は高齢化社会で、医療費は年々膨らみ2023年度は約48兆円でした。そこでOTC類似薬は保険適用から外し、市販薬を購入してもらえばよいのではという議論が持ち上がったのです。
そして昨年末、厚生労働省は保険適用は継続するけれども、全77成分(約1100品目)の薬に対してOTC類似薬を使う患者に、薬剤費の25%を追加で全額患者負担にし、残りの75%は保険適用によって1~3割を患者が別途負担することを決めました。この仕組みは2027年3月から実施されます。対象には解熱鎮痛薬の「ロキソニン」や、抗アレルギー薬の「アレグラ」、胃薬の「ガスター」、皮膚保湿剤の「ヒルドイド」などが含まれています。
なお、子供、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱える人、低所得者、入院患者、長期使用が必要な場合への配慮は検討中です。
OTC類似薬の負担増には、現役世代の保険料負担を軽減する目的があり、年間約900億円の医療費削減が見込まれています。
70歳以上の高齢者の医療費負担は1~2割なので、気軽に病院に通えるという利点がありました。社会保険料をこれまで支払ってきて、薬代が増えることに反対意見もあります。また、薬局で薬を買うことを促すので、軽症のうちにかかりつけ医を受診することで、がんや生活習慣病の早期発見につなげる機会を奪わないかという懸念も。
今後は個人の検診結果や投薬情報などパーソナルヘルスレコード(PHR)のデータ化や共有を進めて、適切な量の薬を処方できる仕組みを作る必要があるでしょう。
経済が低迷しても日本が穏やかなのは、皆保険制度により、誰もが医療を受けられるからです。現役世代が高齢者になった頃にも安心して医療を受けられるのか。社会保障制度の議論に本腰を入れてほしいと思います。
五月女ケイ子解読員から一言

カロナールとか湿布とか、あんまり考えずに処方されていたのですが、そうか、そうですよね。保険が適用されていたのですね。病院への行き渋りは増えそうです。うちの80代の父なども「高いなら病院は行かん」なんて言い出しそうで心配です。
解説員
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堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
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五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2484号(2026年2月18日発売)より




















