無駄こそ大事!? “創造するチカラ”を高める6つのアクション

ライフスタイル
2022.09.22
AIの進化が著しい昨今、これまで人間がやってきた役割の中でも、AIが代行できる領域は増えている。そんな中、人間独自の特性として養っておきたいのが、自分だけの個性や、何か新しい物事を創造するチカラ。

無駄と思えることに人間の創造性は宿る。

「人間は、一見、無駄のように思えることに価値を見出します。そして、それを追求するからこそ、個性や創造性が育まれるんです。実は今、最新の研究では“創造性のあるAI”の開発も進んでいますが、単にAIが今までノイズと判断してきたものにも価値を見出せるようにするプログラムの研究が多く、人間のように本当に価値を感じているとは言い難いものといえます。つまり、“創造性のあるAI”が実用化されたとしても、人間の本質的な個性や創造性が損なわれることはないのです」(医学博士・大黒達也さん)

ただ、その“無駄なこと”が創造的とみなされるためには、ある条件が揃うことが必要だという。

「私はモノ自体に創造性が宿るとは思っていないんです。もちろんモノ自体の新しさや革新性も大切ですが、それ以上に重要なのが、それを受け入れる社会や人々の準備が整っているかどうか。ゴッホの絵画だって評価されるようになったのは後世です。世の中には、多様な価値観があり、人がいる。皆がそう意識することで、個々の個性や創造性を生かしやすい社会になりますし、受け入れる力こそが創造性を高めるという調査結果もあります」

多様な価値観を受け入れ、創造性に富んだ自分であるために取り入れたいのが、6つのアクション。

「これらは、いつもの自分のパターンを変えて、脳に刺激を与えることに役立ちます。多様性の観点から、全ての人に高い創造性が必要というわけではありません。ただ、学歴社会の中で、ある問題に対して1つの答えを追求するような思考を重点的に鍛えてきた人たちも多いはずなので、6つのアクションで発想力や創造性を伸ばし、バランスをとるといいでしょう」

また、アイデアを生み出したい時に、創造的なひらめきを得たいなら4つのステージを意識。

「ポイントは『準備期』と『あたため期』。どうすればいいか限界まで考え、いったん別のことをする。それにより問題が脳の中で無意識的に処理され、快感レベルの発想がひらめくように。天才科学者の証言などでもよく聞く手法です」

人間の脳が創造的にひらめくメカニズム。

4つのステージは、イギリスの社会心理学者のグラハム・ワラスにより提唱されたもの。人間に備わるひらめく能力を引き出しやすくしてくれるので、うまく活用しよう。

STAGE1:準備期

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とことん突き詰めて、限界まで考える。
問題や課題に対して、解決する方法を行き詰まるまで考え抜く。この時に大切なのは、解決法を複数考えるのではなく、ベストな方法を追求すること。“準備期”とはいえ、準備ではなく最終的な答えを考え出す心づもりで!

STAGE2:あたため期

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問題から一度離れて、関係ないことをする。
散歩や入浴などで、行き詰まった頭をリフレッシュ。すると脳の中では、準備期に学習した外部情報が遮断され、内部処理がスタート。意識的に考えていたことが、短期記憶から長期記憶として無意識レベルで整理される。

STAGE3:ひらめき期

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脳内で無意識に内部処理された情報が組み合わさり、アイデアに!
無意識的な処理が脳内でうまく整理され、ナイスアイデアが思い浮かぶ。これが“ひらめき”で、この快感に身に覚えがある人も多いはず。ひらめくまでの時間は人それぞれで、ひらめかなかったら準備期に戻ろう。

STAGE4:検証期

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ひらめいたことが妥当なアイデアか検証する。
ひらめいたアイデアは忘れないうちに紙に書くなどして、本当に一番いい答えなのかを冷静に検証する。いわば直感を確信に変える作業。自分の中で確信が持てたら、それを人に話したりして、さらに客観的に検証すると◎。

脳の創造性UP、6つのアクション

1、他人ではなく自分をライバルにする。

創造性を高め、発想を豊かにするためにまず意識したいのがこのアクション。「他人をライバルにするということは、自分と違うアイデアを生み出している人を否定するようなもの。それより、自分のアイデアに対して『これでいいのか』と問い続けるほうが、発想のブラッシュアップにつながります。それに全ての人に勝つのは到底ムリ。むしろ自分の個性を理解して、それを高めていけば、自分の社会的な立ち位置も確立できます」

2、ルーティンワークを変えてみる。

脳は身の危険を回避するために、いつもと同じ、安心できることを選択しようとするそう。「もちろんそれも大切なのですが、創造性を高めるには、新しい情報に触れるなど、脳への刺激が必要です。ルーティンワークを変えるのも一つの手。例えば、いつもと違うルートで散歩をするだけでも『こんな店があったんだ』など発見があり、周りに注意を向けられるように。こうした脳の活動により、ひらめきも起こりやすくなると思います」

3、一度認められたやり方はいったん捨てる。

せっかくの成功体験も、それに固執しすぎると、新しいアイデアが浮かびにくくなってしまう。「脳は使わなければ劣化します。同じ思考ばかり繰り返していると、ほかのネットワークが途絶えてしまうからです。例えば、仕事で過去に評価されたやり方があったとしても、それをいったん捨てて、ほかの方法に変えてみること。すると、脳のネットワークが活性化。新しいアイデアがひらめきやすくなるし、脳の劣化を抑えることもできます」

4、自分と全く違うタイプの人と行動する。

自分の考え方に固執している自分に気づくためには、違うタイプの人と行動することが有効に。「一緒にいて相手の意見を聞いているうちに、自ずと気づくはず。自分の中で固着した考え方から解放され、相手から学びを得ることも多々あるでしょう。自分の成長につながります。ただし、違うタイプの人が身近にいることは、ストレスにもなりかねないので、そういう場合は適度な距離を保つなど、無理のない範囲で調整してみてください」

5、赤ちゃんを観察する。

創造する力を養ううえで、いいお手本になるのが赤ちゃんや小さな子ども。「とくに赤ちゃんの脳はまっさらな状態で、全ての情報を新鮮に捉え、先入観もほとんどありません。目新しい物事に探求心旺盛で、その行動は創造性にあふれています。赤ちゃんや子どもを観察していると、大人にはない創造性の伸ばし方が学べると思いますし、何か問題に直面した時にも、子どもの素直な言動がいいヒントになり、問題解決に導かれるかも」

6、直感的な好奇心を大切にする。

新しい情報などさまざまな物事に対して、好奇心を向けることも、創造性を伸ばす一助に。「ただ、自分で“これは好奇心だ”と意識した瞬間に、それは論理的な発想となってしまう。大切なのは、直感的で無自覚な好奇心。何かを見たり聞いたりした時に、刺激を受けて無意識に感動する。そんな感覚が、本来の好奇心といえるでしょう。自分の心が動いた瞬間を逃さず、実際に行動に移してみることで、創造性は高まると思います」

大黒達也さん 医学博士。専門は音楽の脳神経科学。オックスフォード大学、マックス・プランク研究所などで脳神経科学の研究を行い、現職に。著書に『AI時代に自分の才能を伸ばすということ』(朝日新聞出版)など。

※『anan』2022年9月28日号より。イラスト・やべさわこ 取材、文・保手濱奈美

(by anan編集部)

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