社会のじかん

国のサポートは必要最低限…国民皆保険だけど、日本は“小さな政府”?

ライフスタイル
2021.04.21
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「大きな政府 小さな政府」です。

日本はさらなる小さな政府になろうとしている。

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「大きな政府」とは、税金を多く集め、その分、社会保障を手厚くするという国のあり方。イメージでいうと北欧の国々です。国に対する国民の信頼は厚く、必然的に民主主義指数が高くなります。自分たちのお金が適切に使われているかを国民が監視しますし、投票率も高く、民意は強く反映されます。

一方、「小さな政府」は、税率を抑える分、自分たちの力で自分たちの暮らしを維持するのが基本。外交や防衛は国が担いますが、国民の老後の面倒は自分たちで見るというスタンス。国がサポートするのは必要最低限です。小さな政府の代表はアメリカですね。

日本には国民皆保険制度があるので、大きな政府のイメージがあるかもしれませんが、数字で見ると、先進諸国のなかでも小さな政府なんです。国の支出を公的社会保障に充てる割合は、2010年の対GDPで見ると、フランスが32%、アメリカが20%なのに対して、日本は22%とアメリカとあまり変わりません。公務員の数は、人口1000人に対してフランスは90人、イギリスは69人、アメリカは64人。これに対し、日本はわずか37人ととても少ないんです。足りない分は、非正規や契約の公務員がまかないます。先日もハローワークで働く職員の皆さんが雇い止めにあい、非正規の公務員が切られていることが問題になりました。

私たちは普段から、自助を求められる国であるという認識を持つべきです。日本の場合、超高齢化や少子化により、十分な税収確保ができないという事情もあります。国の財政が厳しいので、民間事業者に公的分野の問題解決を担ってもらおうとしていますが、COCOA(新型コロナウイルス接触確認アプリ)が活用できていなかったり、原発廃炉作業問題、国立病院の不足による医療現場の疲弊など、弊害が出てきています。日本は1人当たりのGDPが下がって、稼ぐ力が弱くなってきています。政府はさらなる小さな政府を目指そうとしていますが、民間の競争を促すにしても、一部に有利な競争の仕組みを作るのは問題です。予算の支出先はどこなのか? 私たちはきちんと見ておく必要がありますし、信頼関係をもって初めて税金を支払えます。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。新しい朝の報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が放送中。

※『anan』2021年4月28日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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