格差で分断されたアメリカをどう手当てしていくのか。
アメリカ合衆国の第46代大統領にジョー・バイデン氏が就任しました。共和党政権から民主党政権に変わり、政策も大きく方向転換します。トランプ政権の特徴は、企業活動を積極的に支援し、企業が潤うことが国民の生活水準向上につながるというスタンスでした。貿易でも強い交渉力を示し、企業家や投資家にとっては喜ばしい政策でした。これに対してバイデン政権は、社会保障、医療、最低賃金の引き上げ、生活保護など、市民の生活基盤から底上げしようという姿勢です。
バイデン大統領は、「アメリカ救済計画」と謳い、200兆円規模のコロナ対策を打ち出しました。日本のコロナ対策の約2倍です。具体的にはワクチン接種の推進、検査の拡大、国民1人当たり1400ドルの給付、失業保険を週あたり400ドル上乗せ、失業手当の9月末まで延長など。公衆衛生関連の人材育成も進めると表明。
経済政策としては、財務長官(日本の財務大臣)に初となる女性、ジャネット・イエレン氏を起用。イエレン氏は経済学者でもあり、「失業者と中小企業を支えることが、今のアメリカにとって大規模な景気刺激策になる」と話しています。しかし、共和党の議員からは、「市民にお金をつぎ込むより、企業を支えないと財政を痛めるのではないか」と反発の声が上がっています。
バイデン政策のもう一つの大きな柱は環境です。トランプ政権が脱退を表明したパリ協定に復帰。SDGsに該当する産業の育成に焦点を当てています。Black Lives Matterで注目された人種格差問題も優先課題として挙げています。人種差別撤廃を謳い、トランプ前大統領の移民政策も見直しに。トランプ政権下では受け入れを拒否された移民たちですが、南米から職を求めアメリカを目指す人々が再び、多数押し寄せています。
どの政策も結果が出るまでには時間がかかります。大統領選は僅差での勝利だったため、政権運営は難しい舵取りを迫られるでしょう。真っ二つに分断された国内をどう手当てするのかが大きなテーマです。不満を持つ人に恩恵の行き渡る経済政策が成功するのかどうか、今後も注視していきましょう。
堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『モーニングCROSS』(TOKYO MX 平日7:00~8:00)にメインキャスターとして出演中。
※『anan』2021年3月3日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)