各国、目標値を上げているなか、日本は大丈夫?
昨年12月、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の採択から5年を記念し、首脳級の会合がオンラインで開催されました。ここで70か国以上の国と地域の首脳が気候変動への取り組みの強化を表明しました。
COP(国連気候変動枠組条約締約国会議) 21でパリ協定が採択される前は、先進国と新興国の間で環境対策に溝がありました。それが両者を含めた70か国以上の首脳が「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロに」「世界の平均気温の上昇を、産業革命前に比べて2度未満に抑える」という目標を掲げて合意したのです。気温は年々上昇し、目標まで残り30年となり待ったをかけられない状況となりました。早く目標を達成したほうが企業価値も上がりますから、各国で対策競争が始まっています。EUは、温室効果ガスの排出を1990年に比べて55%削減に合意したと表明。中国は2030年までに温室効果ガスの排出量のピークを迎え、それ以降は減らす努力を、二酸化炭素の排出量は2030年までに2005年に比べて65%以上削減する方針を明らかにしました。アメリカは、トランプ前大統領時代にパリ協定から離脱しましたが、バイデン大統領は復帰の文書に署名しました。
そんななか、菅政権は脱炭素を謳い、2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロにする方針を示しました。しかし、日本では2011年の福島第一原発事故以降、石炭火力に頼っています。原発を動かさないかぎり目標は達成できないのではないかと懸念されています。各自動車メーカーでは大急ぎで電気自動車化を進めており、トヨタでは電力に頼らない“からくり”で動く工場を導入。パナソニックは太陽光発電や風力、バイオマスを使った、CO2ゼロ工場を推進しています。全日空は食品廃棄物で作られた燃料で飛行機を飛ばす取り組みを行い、日本航空はアメリカの企業に出資し、家庭ゴミを原料とするバイオジェット燃料の調達を目指しています。
原発の安全性の問題はまだ未解決です。地元が抱える課題がクリアにされないまま、再稼働を進めることはないようにしていただきたいと思います。
堀潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。映画『わたしは分断を許さない』が、2/5までポレポレ東中野でアンコール上映中。
※『anan』2021年2月10日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)