社会のじかん

「デジタル庁」誕生に、東京五輪など… 21年になってどう変わる!?

ライフスタイル
2020.12.31
堀潤&五月女ケイ子の「社会のじかん」SP。激動の時代、日本は、世界はどう変わる?

東京五輪はフルスペックでの開催にならなそう。

五月女(以下、五):‘20年に開催予定だった東京五輪が、新型コロナで延期になってしまいました。‘21年はできそうなんでしょうか?

堀:僕が取材した大会関係者によると、通常の形では無理といわれていますね。

五:国際オリンピック委員会のバッハ会長も来日していたので、やる気満々なのかと思ってました。

堀:「できるものならやりたい」というのはみんなの総意なんですよ。そして、バッハ会長は開催する立場の人。ただ、実際には、いかに混乱させずに、通常開催は難しいという空気を広げていくか。「激変緩和策」というのですが、急に計画を変更できないので、段階を踏んでみんなが納得できる形を目指そうとしています。どの競技なら開催できそうかという検証が水面下で始まっているんですね。

五:密にならずにできる競技に絞って開くということですか?

堀:そうです。基本的にフルスペックではやれない。開催方法も模索しています。たとえば、各国のプールで水泳選手が一斉に泳ぐのをカウントするのはどうかとか。フェンシングなどは密を避けられる競技ですよね?

五:ほんとだ。マスクもしていますし、完全に距離を保てる! 今後、コロナでも大丈夫な新しい競技が増えるかもしれないですね。

堀:はい。競技によってはルールの変更もあるかもしれません。パラリンピックは、障害によっては感染リスクも大きいので、無理はさせられないといわれています。

五:選手たちはどう受け止めているのですか?

堀:パラリンピック選手のメンタルトレーナーの方に伺ったところ、東京に照準を合わせて、開催できなくなると衝撃が大きいので、次のパリやロサンゼルス五輪にモチベーションを持っていこうとしているとおっしゃっていました。

五:4年後、8年後にですか…。

堀:でも、ほかにも方法は模索されていて、最近では「バブル(注1)」といって選手と関係者だけを完全隔離して、ホテルと競技会場を往復する開催方法が試されました。先日は水泳の国際大会で採用され、北島康介さん率いる日本チームが好成績を残しました。

注1「バブル」
選手と競技を「バブル(泡)」のなかに包み込むイメージで、徹底した感染予防対策を講じた大会運営方法。競技場、練習場、ホテル、移動バスをすべて隔離し、移動の動線まで制限し、開催期間中、バブルにはPCR検査で陰性が証明された関係者しか入れないようにします。NBAが行ったものを参考に、‘20年秋にブダペストで行われた国際水泳リーグでも実施されました。

新省庁「デジタル庁」がコロナ対策の時短を進める?

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堀:‘21年の大きな目玉としては、「デジタル庁」が誕生します。

五:具体的にはどんなことをするんですか?

堀:いままで、いろんな省庁にまたがっていたことを統合します。たとえば、‘20 年5月に「スーパーシティ法(注2)」の改正案を成立させましたけど、これを実際に運用しようとすると、新しい技術革新が必要になる。自動車の自動運転や再生可能エネルギーの一体運用、高齢者の健康をリアルタイムで把握できるIoT等々。これらは管轄がそれぞれ、国土交通省、経済産業省、厚生労働省とバラバラだったんです。データをどこでどう管理するか、どう認可を出すか、全体設計を描くのがデジタル庁。五月女さんは、マイナンバーカード(注3)は作りました?

五:まだです。区役所で申請用紙をもらってはきたんですけど(笑)。

堀:‘21年3月からマイナンバーカードの健康保険証利用、‘26年には運転免許証との一体化が予定されています。マイナンバーは総務省、保険証は厚生労働省、運転免許証は警察庁関連。これらを1枚のカードに統合するのに、デジタル庁のような統合機関が活躍するんですね。マイナンバーカードがあれば、住民票や印鑑証明もコンビニの複合機に差し込めば読み取ってすぐに入手できますよ。

五:うわー、便利になりますね。

堀:コロナ対応も、これまでは保健所から上がってくる感染者数を手書きで書いてそれをFAX送信して集計するというアナログなやり方が一部で課題とされました。それが、今後、発熱者数からPCR検査を受けた人、入院の必要な人などデータで一括運用できれば効率的かつ迅速な対応がとれます。コロナによって働き方もライフスタイルも国の仕組みも変わりました。防災の観点からもテクノロジーの活用は、これからさらに求められるようになるでしょうね。

五:アナログだった私もコロナによって、キャッシュレスとかオンライン打ち合わせとか、新しいことを強制的にでも受け入れるようになりました。自分がIT改革されたみたいでびっくりです(笑)。SF映画のようなことが現実になって、私だけじゃなく政治も変わっていかないといけないんですね。

都市と地方の格差を埋めるのは防災力UPがカギ。

五:人によってコロナの感染予防の意識もいろいろですよね? Go To トラベルキャンペーンが始まって、旅に出る人もいれば、「東京から来るな」と言われて実家の法事にも出られないという人の話も聞きます。

堀:本当に難しい問題ですよね。東京は比較的近くに病院がたくさんあります。それでも感染者が増えて、病院がひっ迫しそうな勢いなのに、地方の医療体制はさらに脆弱なんですね。地方で感染者が増えれば、医療崩壊も起きかねません。地方の防災力を上げていかない限り、そうした批判はなかなかやまないでしょうね。

五:いつになったら、気兼ねなく東京と地方を行き来できるようになるのでしょう? まだ時間がかかりそうですよね…。

堀:いつとは言い難いですが、一方で、コロナ禍でリモートワークが可能になって、都心から周辺地域に移住を決めた人も目立ってきたんですよ。地方のほうが住環境もいいし、暮らしやすいと、鎌倉や逗子、葉山、茅ヶ崎などの湘南エリアに家族連れで引っ越す人たちが増えて、物件の値段が上がっているそうです。

五:そうしたい気持ちはわかる気がします。

堀:通勤ラッシュも、地方と都市の格差も、東京一極集中が問題なんですよね。国もワーケーション(注4)を推進したり、地域にいながら日常の生業を維持できるあり方を提唱したりしています。新型コロナ問題がある程度解決の目処がついたら、本格的に都市と地方の格差是正を進めることが今後の課題になるだろうと思います。

五:地方の医療体制は、これから良くなっていきますか?

堀:そこで有効なのが「オンライン診療」ですね。初診からオンラインでできるようになりました。いままでは地域の薬局を守るために、オンラインで薬を出すことは許可が下りませんでしたが、コロナによって、一気に解禁の流れになってきています。

五:暮らしも人の価値観もコロナで変えざるを得ないことになって、いろんなことを良い方向に変えていってくれているのかも?

堀:進まなかった問題が一気に進んだところはありますよね。コロナくらいの大きなインパクトがないと、なかなか変えられなかったんでしょうね。

注2「スーパーシティ法」
「スーパーシティ」構想を盛り込んだ、国家戦略特別区域法(特区法)の一部を改正し、規制緩和する法案が‘20年6月に公布。スマートシティに防災や社会福祉の要素を加え、地域住民のデータを連携して管理することで、効率のいい都市計画を‘30年ごろまでに実現しようとしています。

注3「マイナンバーカード」
マイナンバー(個人番号)とは、住民票を持つすべての人に番号をつけ、年金や保険、税金、収入などを一括管理しようというシステム。マイナンバーカードは、マイナンバーが記載された顔写真やICチップつきのカードのことで、交付には申請をしなければいけません。マイナンバーカードがあれば、1枚で様々な行政手続きがオンラインで申請できるようになります。政府はカード所持者を増やしたく、マイナポイントを発行するなど、手を尽くしています。煩雑だった申し込みも、スマホやPCでもできるようになりました。

注4「ワーケーション」
「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語。リモートワークを進化させ、地方やリゾートなど、旅行先でも仕事ができるようにし、積極的に休暇が取れるようにしようと、国が推奨しています。

堀 潤さん 1977年生まれ、兵庫県出身。ジャーナリスト。監督したドキュメンタリー映画『わたしは分断を許さない』が公開中。同名著書も刊行。ほかに『堀潤の伝える人になろう講座』等。

五月女ケイ子さん 1974年、山口県生まれ、横浜育ち。イラストレーター。WEBサイト「五月女百貨店」では、‘21年のカレンダーほか、楽しいグッズが絶賛販売中。https://sootomehyakka.com

※『anan』2020年12月30日-2021年1月6日合併号より。イラスト・五月女ケイ子 取材、文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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