弱ったカラダを養生する、春の「臓活(ぞうかつ)おかゆ」レシピ。
基本の白がゆと、今の季節に取り入れたいトッピング。冬の間に溜まった疲れや胃腸の不振を梅干しやクコの実、黒ゴマで癒して、朝の喉の渇きをレモンで潤す。シソの葉は、冷えた体を温めて、消化を助けてくれる。
【臓活のキホン1】正気(しょうき)vs邪気(じゃき)、五臓のバランスが崩れると抵抗力が失われてしまう。
北京中医薬大学 医学博士の尹生花さんによると、いわゆる“免疫力”は、中医学においては“正気”と呼ばれているという。
「中医学では、寒さや暑さなどの外的要因、怒りや極度の喜びといった内的要因など病気を引き起こす原因をまとめて“邪気”と呼びます。“正気”は、邪気に対抗するもの。心や体に正気が満ちていれば、邪気をはね返して病気になりにくい。まさに、免疫力が高い状態にあるといえるのです」
正気を高めて病気を防ぐには、“臓活”をすべしと尹生花さん。
「臓活とは、五臓の働きを整えて、活性化すること。五臓とは心や体の働きを指す言葉で、肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)からなります。たとえば心は、五臓を調和させたり、栄養や水分を運ぶ“血(けつ)”を全身に巡らせたりする働きを持っています。似ている部分はありますが、西洋医学でいう心臓などの臓器とは別物。そして、それぞれが一方の働きを高める“相生(そうせい)”や抑制する“相克(そうこく)”の関係にあり、ベストなバランスを保っています。どこかひとつの臓が極端に弱っていたり、逆に元気だったりしてもそのバランスが乱れ、正気が不足して邪気に侵されてしまいます。五臓すべてをバランスよく活性化させる臓活をすれば、正気が満ちて邪気を払いのけることができますよ」
【臓活のキホン2】春先の臓活で、キーとなるのは「肝」。
自然界のものすべてを5つの性質に分けて考える中医学において、立春から5月にかけての春先は、肝が活発になる季節。
「肝には血を貯蔵したり、心や体のエネルギーにあたる“気”と“血”を全身に流す働きがあります。冬の間溜め込んでいた水分や老廃物を排出して体調を整えるなら、今がチャンス。肝を活かす食材を食べて巡りを促し、デトックスしましょう。ただし肝が元気になりすぎると、イライラしたり怒りっぽくなったりするので加減も大切。また、肝は目と密接な関係にあります。目が疲れているなと感じる人は、もしかしたら肝の働きが鈍っているのかもしれません」
「肝」を活かす代表的な食材
青色の食材:チンゲンサイ、キャベツ、ブロッコリー、ニラ、春菊、菜の花
酸味:梅、レモン、トマト、クコの実
動物性食材:エビ、カニ、イカ、マグロ、シジミ
【臓活のキホン3】臓活に朝のおかゆがおすすめな理由は?
臓活を実践する方法として尹生花さんが推すのは、朝のおかゆ。「朝7時から9時は、五臓の中でも胃が元気な時間帯。ここで栄養をしっかり摂れば、一日元気に過ごせます。そしておかゆは、消化がよくて胃に優しい。五臓のどこかが弱っている人は、重い食べ物を受けつけません。おかゆならサラリと食べられて、効率的に栄養を補えますね。前の晩に米を水に浸しておけば、あとは簡単なので、忙しい朝にぴったり。具材として、あるいは副菜として肉や魚をプラスすれば、朝に積極的に摂りたい、タンパク質も補えます」
基本のおかゆの作り方。
トロトロ柔らかくて飲めるくらいの食感に。
臓活おかゆのポイントは、前日から米を水に浸けておくことだけ。あとは焦げないように火を入れれば、できあがり。米と水の分量は、各おかゆのレシピを参照して。
1、分量の米はよく洗い、たっぷりの水を入れてー晩(6~8時間)浸水させる。当日の朝、ざるにあげる。
2、米と分量の水を鍋に入れて中火にかけ、沸いたら底からヘラで静かに混ぜて弱火にし、噴きこぼれないように蓋をずらして20~30分炊く。
3、具材を加える場合は、一口大に切った具材を入れてさらに10~20分ほど煮る。火を消して、塩で味をととのえて完成。
【キャベツと卵のおかゆ】春らしい色彩と食材で食欲不振をケア。
キャベツで胃の消化力を助けて、食欲不振や胃もたれをケア。卵は、体に必要なアミノ酸をバランスよく含む優秀なタンパク質であると同時に、体に潤いを与えてくれるという。卵を入れるタイミングは、フィニッシュの直前。溶いてからおかゆに流し入れて軽く混ぜ、火を止めてから5分蒸らすとふわふわに。
<材料(2人分)>
米…75g、水…3カップ(600ml)、キャベツ…50g(短冊切り)、卵…1個、塩…小さじ1/4
※仕上げに溶き卵を流し入れて軽くかき混ぜて火を止め、蓋をして5分蒸らしてから、塩で味をととのえる。
【ホウレンソウと舞茸のおかゆ】口の中のトラブルや肌荒れ改善を目指す。
ホウレンソウは、疏泄(そせつ/新陳代謝)を助けて“血”を補う食材。貧血、唇や舌の腫れ、口内炎、便秘を改善するほか、皮膚や目の健康に役立つといわれている。舞茸は“気”を補い、疲労回復に効果的。煮込めば旨味が染み出て、上品な味わいに。どちらの具材も、火入れ時間は5分ほどにして食感をキープしよう。
<材料(2人分)>
米…75g、水…3カップ(600ml)、ホウレンソウ…75g(一口大に切る)、舞茸…15g(ほぐす)、塩…小さじ1/4
※ホウレンソウと舞茸のおかゆは『まいにち臓活おかゆ』に掲載されているレシピです。
いん・せいか 北京中医薬大学 医学博士。美と健康と若さの実現を目指すホリスティックビューティサロン『BHY』代表。近著『まいにち臓活おかゆ』(世界文化社)には、季節ごとのおかゆレシピが満載。
※『anan』2023年3月29日号より。写真・中垣美沙 スタイリスト・宮田桃子 レシピ、料理作製・石松佑梨 イラスト・松尾モノ 取材、文・風間裕美子
(by anan編集部)