1950年代から1960年代の戦後日本では、短期間ながら前衛美術界で女性が大きな注目を集めていた。その理由に海外から流入した「アンフォルメル」という芸術運動の影響がある。
アンフォルメルは従来の絵画形式によらない新しい表現方法で、その思想は戦前の伝統的な価値観を打ち破るものだった。
ただ、そんな潮流もその後すぐに男性主役の時代に引き戻されてしまう。絵の具を垂らしたり、飛び散らせたり、叩きつけたりといった、作家の動きに注目させる絵画技法「アクション・ペインティング」が日本に広まると、豪快で力強い男性的なその表現に、当時の男性批評家たちの視線が集まるように。再び、女性美術家たちは美術界の日陰の存在へと追いやられてしまう。
本展では、戦後のこうした「アクション」への女性美術家たちの応答や挑戦を「アンチ・アクション」という言葉で捉え、日本の戦後美術の広がりを紹介。形や身体性、反復など、共通するいくつかのキーワードを取り上げ、草間彌生、福島秀子、山崎つる子、田部光子ら14名の作品約120点を紹介し、その独自性を探る。なかでも今回は、本展のための綿密な調査により発見された宮脇愛子や赤穴桂子、多田美波の初期・未発表作品も初公開。
会場にはライトを用いた立体作品や、天井高に迫る3.3mの大作絵画など、新たな時代に躍り出た女性美術家たちの力強さを感じさせるダイナミックな作品を一堂に会し、作品群がつながる空間を演出している。
ジェンダーギャップに負けず、全身全霊を注いだ女性美術家の作品には、後世まで同じ立場の女性を勇気づける力があると実感できる内容だ。

宮脇愛子《作品》1967年 真鍮 47.5×49.5×12.0cm 撮影:中川周

山崎つる子《作品》1964年 芦屋市立美術博物館蔵 ⒸEstate of Tsuruko Yamazaki, courtesy of LADS Gallery, Osaka and Take Ninagawa, Tokyo

田部光子《作品》1962 年 ピンポン玉・紙(襖) 170.0×174.6cm 福岡市美術館蔵
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アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦
東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 東京都千代田区北の丸公園3-1 開催中~2026年2月8日(日)10時~17時(金・土曜は~20時。入館は閉館の30分前まで) 月曜(1/12は開館)、12/28~1/1、1/13休 一般2000円ほか TEL. 050-5541-8600(ハローダイヤル)
anan 2476号(2025年12月17日発売)より

























