シリーズ誕生から今年25周年を迎えた『相棒』。長きにわたり支持を集める秘密は、杉下右京と歴代相棒…だけでなく、バディを取り巻く独自の人間模様にある!?

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    個々の正義感と意思で動く、縦横無尽な共闘のカタチ

    特命係の杉下右京と亀山薫を中心に、多くの個性的な人物が登場する『相棒』。右京と亀山の“バディもの”という見方ではなく、“特命係の二人を取り巻くチームもの”として見た時、『相棒』の独自の面白さが見えてくる。

    「チームものの従来の刑事ドラマだと“捜査一課”や“科学捜査研究所”など、所属するメンバー全員が一丸となるパターンが多いのですが、特命係は窓際部署的な存在。ある程度は自由の利く立場だからこそ、部署の違う人たちが組織の論理ではなく自分の意思と正義感に基づき行動し、特命係に協力する。個人の思いが行動のベースにありますから、事件によっては対立することもあります。そのため、事件ごとに臨機応変に“チーム”が変わっていくのが特徴。次はどんなメンバーで難題を解決するのかわからない、そこに飽きることのない魅力があると思います」(社会学者・太田省一さん)

    【Point1】事件ごとにチームが組み変わる自由さ

    「政治家の不正や市井の殺人、過激派のテロ組織まで、豊かな話のバリエーションに合わせて、事件解決に関わるメンバーも自由に入れ替わるのがこの作品ならでは。例えば、鉄道愛好家の米沢守の知識が事件解決の糸口になったり、ジャーナリストの亀山美和子が情報提供することで捜査が進展したり。自由自在なチーム編成と展開の背景には、複数の脚本家の方がそれぞれの切り口で本作を捉えて書いているということもあると思います」

    【Point2】“個”のスペシャリストたちの間にある緊張感

    「右京を筆頭に、『相棒』はそれぞれが自分の仕事に誇りを持っているプロフェッショナルの集まり。どこかツンデレ気味でもあって、ずっと協力的でいるというよりは状況に応じて合流する。『手を貸したくないけど特命係に弱みを握られているから、仕方なく』ということも(笑)。プロの個人集団ですから、彼らの間にはある種の緊張感があるのも独特です。“この事件限りの即席チーム”だからこその面白さもありますね」

    ファンの心を掴んで離さない絶妙な距離感の名メンバーたち

    特命係

    杉下右京(水谷 豊)

    特命係・警部。類い稀なる頭脳と観察力で事件解決に挑む。切れモノゆえに厄介者扱いされることも。

    亀山 薫(寺脇康文)

    特命係・巡査部長。小国・サルウィンに移住していたが、帰国。出戻りで特命係に復帰した。

    捜査第一課

    伊丹憲一(川原和久)

    捜査一課の刑事。特命係を疎ましく扱う一方で実直な正義感の持ち主。亀山と犬猿(?)の仲。

    出雲麗音(篠原ゆき子)

    白バイ警官から捜査一課の刑事に。男だらけの刑事部の中でも動じないメンタルの強さを持つ。

    芹沢慶二(山中崇史)

    伊丹と組んでいる捜査一課の刑事。場合によっては特命係に捜査情報を提供してくれることも。

    元鑑識・現警察学校

    米沢 守(六角精児)

    鑑識として特命係に協力していたが、辞令で警察学校の教官に。今は特命係と距離を置いている。

    薬物銃器対策課

    角田六郎(山西 惇)

    薬物銃器対策課の課長。課の奥の一室に特命係があるため、「ヒマかっ?」とよく顔を出す。

    内閣情報調査室

    青木年男(浅利陽介)

    内閣情報調査室所属。ITに強い元特別捜査官。極度の“警察嫌い”で、特命係を苦手に思っている。

    亀山美和子(鈴木砂羽)

    薫の妻。帝都新聞の元記者で、フリーのジャーナリスト。現在は業務委託として復職している。

    “ならでは”のチームを楽しむ過去の要復習エピソード

    一夜限りの復活、犬猿の仲との共闘、理解者との対立…。独自のチーム観が詰まったエピソードを2時間ドラマ枠の『土曜ワイド劇場』時代から追ってきたプロの目で厳選してご紹介。

    「米沢守再びの事件」“鑑識”米沢守、待望のカムバック回

    鉄道愛好家として引退間近の車両を見ようと訪れた路線の線路脇に遺体を発見した米沢。廃線がささやかれる沿線の事件とあって、捜査に米沢も加わり、彼の知識が捜査の手がかりになっていく。「この時、米沢はすでに鑑識から警察学校に異動済み。しかし、この事件限定で鑑識として復帰するんです。シリーズ当初から協力的な印象が強い米沢ですが、何でも手を貸してくれるというよりは、彼の琴線に触れるものがあるから行動するという姿勢が垣間見られます」

    「ご縁」特命係の独自推理から大捜査へ発展!

    特殊詐欺グループによるアポ電強盗が発生。代理婚活パーティで強盗するターゲットの情報を得ていたのではと推理した右京は、青木年男を(無理矢理)婚活パーティにエントリー、自身を“親代わり”にして潜入捜査することに。「当時の相棒・冠城亘(反町隆史)がパーティのスタッフとして潜り込み、青木には容疑者とデートを重ねてもらいつつ、最後は中園照生参事官(小野了)がおとりになり自宅に侵入した強盗犯を確保。課を超えた合同捜査となった珍しいチーム回です」

    「バクハン」決して馴れ合いではない、必然の対立

    組織犯罪対策四課の賭博担当課長・源馬寛(中野英雄)による裏カジノ一斉摘発の背後に、源馬と反社組織の繋がりを疑う右京。組織犯罪対策五課の課長だった角田六郎は戦友のような存在の源馬をかばうが、右京は捜査の手を緩めず…。「いつもは『ヒマかっ?』と特命係にやって来る角田が右京の胸ぐらを掴まんばかりに怒る。反社組織への捜査には裏社会の情報源も大事だと知る角田と、罪は見逃せない右京の信念がぶつかります。ただの仲良しチームではないことが伝わる回」

    「伊丹刑事の失職」正義のため、期間限定で手を組む二人

    特命係とは相容れない関係であり続ける捜査一課の伊丹憲一が、あることからクビの危機に。「自宅謹慎を命じられてしまい、自分だけでは真実を突き止めることはできないと、失職覚悟で右京に捜査を頼みに行く。『最後の事件になるかもしれない』と覚悟を決めた伊丹が真実を突き止めたいと右京と行動を共にする姿からは、二人に共通する正義を貫く信念が感じられます」。特命係と伊丹のトリオは謹慎中の今だけという特別感に、ファンの多いエピソードの一つ。

    「右京、風邪をひく」右京の“チーム観”(?)がのぞく瞬間

    ある理由から、身寄りのない初老の男性を殺害した男女。「(天涯孤独なのだから)亡くなって誰が悲しむんですか」と言う犯人に対し、右京が印象的なセリフを放つ。「『誰とも繋がっていない人間など、この世にいるとお思いですか。時には本人さえ知らないどこかでみな誰かを支え、誰かに支えられている』。万能で、一人で何でもできる右京が語るからこそ響くものがあります。右京にも心の中ではチームの思想みたいなものがあるのだろうと思わせるエピソードです」

    お話を伺った方

    Profile

    太田省一

    社会学者、文筆家。テレビと戦後日本社会の関係が主な研究・著述テーマ。著書に『水谷豊論-テレビドラマ史の相棒-』(青土社)など、多数。現在は『相棒』に関する書籍を執筆中。

    information

    相棒24

    “警視庁の陸の孤島”と揶揄される窓際部署「特命係」に在籍する杉下右京と、捜査一課から左遷され、やって来た亀山薫。次々に起こる事件と背後で蠢く陰謀に二人が立ち向かう刑事ドラマ。『相棒 season24』は毎週水曜21:00~テレビ朝日系で放送中。

    ©︎テレビ朝日

    イラスト・岡田成生 取材、文・間野加菜代

    anan 2470号(2025年11月5日発売)より
    Check!

    No.2470掲載

    The TEAM 2025

    2025年11月05日発売

    ひとつの目標を目指して集まり、個々の才能や長所が混じり合うことでより高いパワーを発揮することができるチーム。そんなチームの現代における理想的な形や形成するための条件など多角的に考察する特集です。エンターテインメント界における注目チームにもフォーカス。4人の光る個性と大人の魅力に磨きがかかるA.B.C-Zは、メンバー4人によるグラビア&座談会が必見必読。まもなく結成15年を迎える超特急からはリョウガさん、ユーキさん、シューヤさん、マサヒロさんが登場。そして今年20周年を迎えたHANDSOME LIVEからは小関裕太さん、渡邊圭祐さん、東島京さん、本島純政さんに思いを語っていただきました。

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