ファーストアルバム『ROCK TO YOU』を引っ提げ、7月26日の東京・EX THEATER POPPONGIを皮切りに全国11都市を巡るツアー「ROCK TO YOU LIVE TOUR」を開催した横山裕さん。9月16日(火)に行われたZepp Haneda(TOKYO)でのステージの模様をレポートします。
現在、1年間限定プロジェクト「ROCK TO YOU」と題して、ソロアーティストとして武者修行中の横山さん。ソロツアーは、2010年以来、15年ぶり。ロック魂を炸裂させたステージは、定刻の19時を少し過ぎた頃、白幕に横山さんのシルエットが映し出されてスタート。「今日は俺たち、ロックしに来ました! ロックの定義は分かりません。今日が最高っていうライブがやりたいんよ。俺がやるって言うからにはやるから。全力でかかってこいよ!」と、のっけからパッション全開。オレンジのサングラスにロックTシャツというカジュアル衣裳でギターをかき鳴らしながら歌ったのは、「ロックスター」だ。
君の前ではロックスターでいたいという、ロックスターへの憧れを歌ったこの曲は、横山さんが作詞したもの。言葉足らずだからこそ歌で伝えたいという、不器用だけど、等身大な気持ちを綴った歌詞だからこそ、胸にまっすぐ飛び込んでくる。生バンドをしたがえながら、“君を愛してる”と愛の言葉も歌でならサラリと言えてしまう姿は、まさにロックスター! 「ロックしてんだろー?」とペロリと舌を出し、「まだまだこんなもんじゃないですよね?」と、集まったファンをあおった。

一緒にロックするバンドメンバーを愛おしそうに紹介してから、「イエ~イ! 最高にぶち上がってるじゃない? 大事なこと忘れてません? 俺、まだ自己紹介してないっす。改めまして、横山裕です。40越えてギター始めちゃいました!」と2曲目を駆け抜けたところで挨拶。「俺、本名・横山侯隆(きみたか)って言います。親が付けてくれた大事な大事な名前です。『ROCK TO YOU』というプロジェクトを立ち上げるにあたって、大事なことに気づけたんですよ。横山裕の“ゆう”、侯隆の“きみ”、どっちとも“あなた”(YOU)なんです。俺、あなたにロック届けに来ました。本気で感情をぶつけるんで、あなたたちも本気で俺に感情をぶつけてください。それが俺の存在意義です!」と目の前の“あなた”にロックな想いを届けようと歌ったのは、「存在意義」だ。
この曲も、横山さんが作詞を手掛けたもの。自分の存在意義を歌った一曲だ。ラスト、「あなたへ届け」と叫び、人差し指を天高く掲げる。「最高の時間が流れてるよ。ありがとうございます!」と笑顔を覗かせてから、「俺、ライブハウスツアーって初めてやんのよ。水分補給しない? 乾杯しない? 『ROCK TO YOU』の完走に乾杯と、俺のマラソンの完走、あなたの幸せに乾杯!」と、全員で給水タイムも。
「怒涛のように毎日が過ぎていて…。何日ですか? えっ、16日? 早いね。今週末にはもう(渋谷)すばると対バンやってんだ」と充実している日々を語り、「今回『ROCK TO YOU』アルバム1本でセットリスト作ってます。SUPER EIGHTの曲はやりません。それはもう僕の信念、美学でやってます。武者修行なのにSUPER EIGHTの楽曲をやるのは違うなと思って。でも、アルバム1本でやったら、総尺が49分しかないです。ライブにならないんですよ。なので、残りは喋ります(笑)」と、MCを随所に挟みつつの2時間のライブ。うちわもペンライトももたないファンの皆さん。横山さんの言葉ひとつひとつに反応して、歓声で盛り上げる。
4曲目に歌ったのは、安田章大さんが作曲、横山さんが歌詞を綴った、「Kicyu」。横山さんと安田さんのユニット曲として誕生した曲を今回のアルバムでソロバージョンとして初音源化した曲だ。「この曲ね、すごくファルセットが多いんですよ。僕、今ファルセットが出なくて。なんでしょうね、マラソンとかもあったと思う。息をして、摩擦で声が嗄れたり、ライブやったり、いろんな仕事をしたりで」と説明をしてから、ファルセットの部分を「やってみません?」とファンに委ねる。横山さんが“そのクチに”と歌うと“ふれたいよ”と歌うファンの皆さん。飲み込みが早いと褒めてから、「一緒に歌った方が楽しいなって最近気づいた」とニコリ。ファンとひとつになって「Kicyu」を歌った。

歌い終わってから「『横山万博』、行こうとしてたけど、行けなくてごめんね。飛行機がどうしようもなかった。飛ぶって言ってたのに飛んでくれなかった(笑)」と悪天候のため、飛行機で大阪に向かえなかったことを謝罪する場面も。続いて過去に横山さんが作詞、安田さんが作曲を手掛けたポップチューンを今回のプロジェクトのために新たなアレンジで届けた可愛らしい恋のうた「cHocoレート」を。2010年のソロライブツアーで初披露された懐かしの曲をリズムをとりながら歌う。「泣いてた」というフレーズでは首をかしげるキュートな振り付けも。
そして、ファンクラブ会員限定のBBQイベントについても報告。「この前ね、北海道でバーベキューやったんですよ。バーベキューに来てた人、今日も何人か来てくれてるよね。顔、覚えてるから。その時に『(チケットが取れなくて)ライブ1回も行けなかったです』みたいな人がいっぱいいたの。そんな当たってないのかと思って。俺、結構みんな来れてるもんって思ってたから…人気者! 待って、言わせないでよ(笑)」と照れ笑いをして、会場から「フゥー」と言うツッコミが。息の合ったやりとりを見せる横山さんとファンの皆さん。「恥ずかしい。何言わせてんのよ。乾杯したりして、2時間を2回やったんですよ。で、合間2時間空いてたの。バンドメンバーもいてくれたから、その2時間でシャンパンあけちゃって、気持ちよくバーベキューできた(笑)。またなんか楽しいことできないかなって、今スタッフとかと色々話してます」とまたファンとの交流イベントを計画したいと語り、喜ばせていた。
ド直球な横山さんの生き様を歌った楽曲「ど真ん中」では、会場にいる目の前の一人ひとりに訴えかけるように歌う。途中、熱い言葉を投げかける場面も。「あなた、今楽しいですか。今日を迎えるにあたっていろんなことあったでしょ。生きてりゃ、いろんなことあるよね。何が正解か分からへん世の中になってきてんなって。(中略)俺はこう思うことにしていて、まず自分を信じる。自分を信じないと人を信じれない。人を信じなかったら、人が優しくしてくれない。だから俺は自分を信じるようにしてんねん。だから、あなたもまずは自分を信じて。自分を信じたら人を信じれるようになるから。そしたら人が助けてくれたら人が寄ってくる。俺とあなたでそんなかっこいい人生にしていこうよ」。目の前の“あなた”を思いやり、ひとりひとりの力になるような数々の直球メッセージに会場が温かい空気に包まれた。
そして、「コール&レスポンスやろうよ」とコール&レスポンスタイムも。「村上っぽいやつやります。『男だけ~』とかいうの、やります。物理的に数で負けてますとか関係ないよ?」と男性ファンに呼びかけ、「イエーイ!!」と大きな声で叫ぶ男性のファンに、「最高です!」と嬉しそうな横山さん。今度は「子猫ちゃんでやって。SAY、ニャンニャン」と言って、招き猫のように手招き。「そんなんじゃ誰も飼ってくれないよ? 俺なんてもう44なんだから。おい、何照れてるんだよ!」とファンの皆さんをいじり倒す。「次はワンワン! そこに可愛さいらないっすよ。俺、狂犬だよって」と、横山さんの遠吠えをマネして、会場も遠吠えをするなど、楽しい雰囲気に包まれた。
「繋がる」の前には、渋谷すばるさんとの繋がりトークが。「今度すばると対バンをするけど、彼が脱退して8年経つね。8年前の記者会見の残像が忘れられへんかった。8年前、なんであいつ辞めんねんとか、俺がもっと説得したらあんな結末になってなかったかなとか、自分に問いかけたこともあった。いざ記者会見を迎えてさ、ホンマにこの日が来んのやってめちゃくちゃ悲しかったし、あいつの門出やのにさ、俺真っ先に泣いちゃって。『今日が来ないでほしいです』って」と、当時の涙ながらの発言をマネして、「おい、笑ったな?(笑) でもさ、これ笑えてるのが最高なんですよ。8年前だったら、笑えてないんすよ。でも、今、あなた笑えてるんすよ。それって、俺たちが今生きてる未来が最高だからですよ。あいつが覚悟を持って脱退という道を選んで、今もすごいボーカリストとして輝き続けてさ。あいつの男の決断のおかげで、俺、ギター持ててると思うねん。何が正解かわからへん。自分を信じるのが大事で。まず自分を信じて、最終的に花丸にしたいね。俺はマジでそう思ってる。だから俺とあいつは繋がれてる。もちろん俺とあなたも繋がってる」と渋谷さんへのリスペクトを滲ませながら、今も繋がっていることの幸せな気持ちを語った。
「繋がる」を歌ってからも渋谷さんの話は続き、「あいつと対バンするのは、感慨深いけど、やっぱりちょっと怖さもあんのよ。すごいボーカリストやからさ。俺は気持ちでは負けへんからな。でも、あいつも気持ちが強い。困ったもんなんですよ(笑)。でもやりますから!」と対バンへの闘志を募らせた。そして、「続いての曲…これも繋がってるんです。『神様のバカヤロー』。この曲はAぇ! groupのカバーです。俺がプロデュースしていた彼らに曲を作ってとお願いして、小島が歌詞を書いてくれて、佐野が曲を作ってくれて、正門がギター、すえ(末澤誠也)の唯一無二のボーカルが入って、すっげぇかっこいい曲なんですよ。僕はそれを客席で見て、こいつら売れなあかんと見てました。それが6年経って、あいつらめっちゃ売れてるやん(笑)。24時間テレビで、あいつらは俺らの曲を歌ってくれてさ。帰ってから放送を見直したけど、歌ってるって嬉しくてさ。でも、俺より出るの早くない? 俺らは8年かかったのに(笑)」とプロデュースをしていたAぇ! groupのブレイクぶりを親のような表情で嬉しそうに語っていた。
そして、この日見学に訪れていた、なにわ男子の藤原丈一郎の話へ。「今日は丈が観に来てくれて。(ジュニア歴が長かった)丈は色々くすぶってどうしていいか分からんかったこともあった思うけど、今はなにわ男子で(活躍して)何日連続でドームやんの? 俺ら抜くわ(笑)」と可愛がってる後輩のグループが成長したことに喜び、「あんなちっちゃかったガキが、なにわですげぇでっかくなって。嬉しいことに全部繋がっていってんだよ。横山会、横山万博って。ちっちゃかった丈も今はもうすっごい背中大きくなってる」としみじみ語る姿から後輩たちとの繋がりはもちろん、人との繋がりを心から大切にしていることが伝わってきた。
パッション全開で張り上げていた歌声から一変、静かに語りだしたのがラスト曲の「オニギシ」だ。「この曲は、15年前に今と同様ソロツアーでやってました。当時、一人で大阪城ホールで…すごいことやね。それをおかんが見てくれて、すっごい嬉しかって。おかんもこの『オニギシ』っていう曲が大好きでした。それから1か月後ぐらいかな、青森で待ってたんやけど、本番1時間前に弟からおかんが亡くなったって電話があって、信じられんかったし、俺どうしたらいいんやって。本番できるかなって不安でした。でも、今帰ったらおかんが1番嫌やろうなと思って、ライブすることに決めた。ツアーではラストで歌ってたんやけど、青森公演では歌えなくて、号泣しちゃって。みんな何が起こったか全然分かってないから、不安にさせて本当に申し訳なかった」と、泣いて歌えなかった青森公演を振り返った。

今回、アルバムの曲と「オニギシ」を青森で歌い切ると決めてプロジェクトを立ち上げたそうで「この前、青森で歌ったんやけど、泣いて歌われんかった(笑)。でも、それでいいんやなって思った。もうそれが俺やし。(中略)『24時間テレビ』を見直したらさ、メンバーが『オニギシ』を歌ってくれてさ、めちゃくちゃ嬉しかったんだよ。最高の親孝行になった。本当にメンバーに感謝してます」とますます大切な曲になったことを語る。「あと、大事なこと言いたい。確かにおかんはいなくなったんですよ。でも、いてくれたことが大事なんです。いてくれたから、俺が生まれて、弟たちが生まれて、素敵なメンバー、SUPER EIGHT、後輩、あなた、スタッフ、たくさんの方に出会えてます。全部、おかんなんです。おかんが繋いでくれました」と感謝の想いを込めて「オニギシ」を届けた。
最後の曲で盛大な拍手に包まれると、アンコールへ。ステージに再び姿を現した横山さんは、「分かってるんすよ。あなたたちは、もうアンコールなしじゃ生きられないって。そんな身体にしたのは俺たちだって(笑)」と笑い、アンコール曲「ロックスター」へ。感情をぶつけあって、会場がひとつに。「これが最後だと思っているからさ、それぐらいの覚悟でやります。それがロックってもんでしょ。最高にぶち上がってくれてありがたいんだけど、俺まだあなたを帰しませんよ。そんなもんじゃないっすよね」と会場に呼びかけ、「存在意義」へ。曲中も皆の顔を見渡し、「今日のことを忘れないで。絶対、大丈夫!」とメッセージを送り続ける横山さん。歌い終わると「ありがとう。めっちゃええ顔してるわ。最高!」と叫び、会場の誰もが晴れやかな笑顔に。ギターをかき鳴らし、出会えた全ての人との繋がりに感謝しながらロックを届けた2時間。横山さんのロックは愛に包まれていた。