アストラ芦魔『ラブイズオーバーキル』1

前作『ハンサムマストダイ』では、オタク女子がとある目的を果たすために、性別を偽ってアイドル養成所に通い、デビューを目指す顛末を描いたアストラ芦魔さん。最新作は勢いとハチャメチャっぷりを踏襲しつつ、ラブコメに挑んでいる。


凶悪犯を蘇生させて結婚!? ブレーキが壊れた愛のゆくえ

「最初にイメージしていたのはゾンビものなのですが、担当編集さんのリクエストもあって今の形になりました。ギャグ漫画は現実離れした“ウソ度”が高いぶん、一本通った筋が大切だと思っていて。私はトキメキより登場人物の行動原理を重視しているので、正直、ラブコメは得意じゃないんです。人と人が距離を詰めていく上での納得できる熱い感情を『ドラゴンボール』など好きな作品からイメージして、恋愛に落とし込むような形で執筆しています」

主要キャラが殺人鬼と死体蘇生者なのは、初期構想のゾンビものの名残。スモア・ミルウォーキーは、遺体を美しく修復する天才科学者。多忙ゆえ恋する暇もなく、身を焼かれるような恋愛に憧れていたところ、職場の刑務所に移送されてきたデッド・ペインキラーに一目惚れ。あっさり(2コマで!)処刑されたペインキラーを蘇生させ、遺体引き取り人として強引に結婚! 心酔する対象に突き進むヒロインは、アストラさんが得意とするキャラクターだ。

「好きなものに対する思いを、別方向への努力や自己実現につなげているオタクの人って結構いらっしゃるじゃないですか。スモアが当てはまるかどうかは別として(笑)、エネルギーをポジティブに転換できるのはいいことだなと思います」

対してペインキラーは結婚に納得しておらず、隙あらば逃げ出そう(もしくは殺そう)とするものの、スモアが常に一枚上手で、殺人鬼が哀れに思えるほど。そんなドタバタ劇に見応えをプラスしているのが、ゴシック調の妖しく耽美な世界観。

「1940~1950年代のクラシックなホラー映画が好きなんです。邦画はむしろ怖すぎるので洋画に限るのですが、古いホラーはファッションやインテリア、建築もファンタジーに近い気がして。首が飛んでもハリボテみたいで生々しくなく、笑えるくらいなのもよくて、漫画の表現にも影響を受けてます。死に方ややられ方が湿っぽくないというか、景気よく描かれている作品が好みですね」

オーバーキル(やりすぎ、殺しすぎ)な結婚生活が行き着く先は、破綻? それとも奇跡の歩み寄り!?

「これだけ狂っている人たちがどうすれば仲良くなれるのか、今のところ謎だとは思いますが(笑)。お互いの成長を感じられるような、愛の話になればいいなと思っています」

Profile

アストラ芦魔

あすとら・あしま 著作に『教えて!サバトさん』『ハンサムマストダイ』。近年感銘を受けた作品は近藤信輔さんのアクション漫画『忍者と極道』だそう。

Information

アストラ芦魔『ラブイズオーバーキル』1

殺人罪で処刑された凶悪犯が、天才科学者の手で蘇生、(勝手に)結婚(させられる)! 本当の愛を知らない男と、愛を求めすぎる女のスリリングな新婚ライフ。集英社 770円 Ⓒアストラ芦魔/集英社

写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

anan 2458号(2025年8月6日発売)より

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