ディズニー作品とキャラクターたちを深く愛し、世界に広げる役割を担う3人に特別インタビュー!
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ウォルト・ディズニー・スタジオのキーパーソンたちが語る、ミッキーのこれまでとこれから
常にミッキーマウスを新鮮に見せる方法を考えています

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオで活躍する、オースティン・トレイラーさん。3歳の時に映画『ファンタジア』(1940年)でミッキーに出会い、ディズニーのアニメーターになる夢を追い続け、ついに叶えた。手描きアニメーションの見習いプログラムに合格した当時を、こう振り返る。
「まさに、夢が叶った瞬間でした。ディズニー映画から学んだのは『星に願いを唱えれば、願いは叶う』ということ。それが僕の人生にも起こったんです。ディズニーのキャラクターたちにインスパイアされてきたので、感謝の気持ちでいっぱいでした」
エリック・ゴールドバーグさんやマーク・ヘンさんら巨匠のもとで修業を積んだオースティンさんは、『ワンス・アポン・ア・スタジオ‐100年の思い出‐』(2023年)でミッキーなどのアニメーションを担当した。短編や長編などで様々なキャラクターを手がけているが、ミッキーならではの楽しさや難しさもあるという。
「ミッキーは耳からつま先まで、丸い形が多く、リズムがたくさんあって、描いていてとても楽しいです。ただ、一番難しいのは、オリジナルのパフォーマンスを作り出すこと。過去のアニメーターに倣うのは簡単ですが、新しい観客に、どう新鮮に見せるかを常に考えていなければなりません。リサーチはたくさんできますし、インスピレーション源も多いですが、最終的には自分自身が深くキャラクターを理解しないと、本物のパフォーマンスは描けません」
ミッキーのスクリーンデビューからは今年で97年。デザインにもたくさんの進化があった。
「ミッキーの進化はアニメーションの進化そのものなのです。約100年の間に、ディズニーのアニメーションは常に発展してきたし、ミッキーも同様です。1942年公開の『ミッキーの誕生日』という短編アニメ作品で、ミッキーのデザイン、特に目の形が完全に変わり、現在の白目のある目の描き方になりました。特にこの進化がポイントだと思いますし、個人的には当時のこのデザインが最も魅力的だと感じます」
描き手として、そしてファンとして、ミッキーの魅力をこう分析。
「ミッキーは、常に今の人生よりも大きな夢を抱いているキャラクターです。僕自身も、アニメーターになりたかったし、ミッキーを見てきて、彼が目的を果たし、様々な夢を叶えていく姿に共感してきました。僕も楽観的でファンタジックなミッキーのようにありたいと思っています」

オースティンさん直筆のミッキーをいただくサプライズも。貴重すぎる…!
ミッキーを描く過程が見られる、ドローイングセッションも!
Profile
AUSTIN TRAYLOR
オースティン・トレイラー。手描きアニメーター。数千人の応募者から、手描きアニメーションの見習いプログラムに選出。2023年公開の短編『ワンス・アポン・ア・スタジオ』でミッキーマウスなどを手がけている。
なかまがミッキーマウスの新たな一面を引き出してくれる

ディズニーの主力キャラクターのフランチャイズ(キャラクターや物語か ら展開するブランドやビジネス)のマーケティング施策を統括する、ティム・ペノイヤーさん。日々変化する世の中に対して、ミッキーをどのようにアップデートしながら、打ち出しているのだろうか。尋ねてみると、意外ながらも納得の答えが返ってきた。
「重要なのは、ミッキーの“核”は変化していないということです。私たちが生み出してきた作品の中で、ミッキーの性格を変えることはありませんが、着ている服や行動は時代に応じて変化しています。でも、ミッキーはやはり『タイムレス』。勇気と遊び心があり、想像的で、革新的。どの時代でも共感できるキャラクターなのです」
ミッキーの魅力を語るには、今回King&Princeともコラボレーションした「ミッキー&フレンズ」の“なかまたち”の存在も欠かせないという。
「ミッキーのなかまたちは、このフランチャイズのスーパーパワーです。彼らがいるから、ミッキーの新たな一面が見えてきます。ミニーがスイートな姿を引き出したり、ドナルドの怒りっぽさに反応したり、グーフィーと一緒におっちょこちょいなことをしたり。なかまたちがいることで、いろんなミッキーの姿が見られるんです」
Profile
TIM PENNOYER
ティム・ペノイヤー。ブランド・マーケティング・ディレクター。ミッキー&フレンズやディズニープリンセスなど、主力フランチャイズの企画やマーケティングを統括。コンテンツや製品、SNS、体験型イベントなどの施策を指揮している。
ミッキーマウスはまさに“このクラブのリーダー”

ケルシー・ウィリアムズさんに話を聞いたのは、ウォルト・ディズニー・アーカイブスのリーディングルーム。本社社屋の一角にあり、従業員も訪れる。ディズニーの歴史を知り尽くすケルシーさんが考える、ミッキーならではの革新性とは?
「長編映画の前に上映された短編作品から始まったことです。キャラクターが人々の心を掴んだので、短編の殻を打ち破り、長編となり、様々な商品もできました。また、初めて音楽とシンクロしたこともそう。ポップカルチャーに適応し、変化し続けている、キャラクターとして面白い人生を送っていると思います」
展示会などのクリエイティブ・リーダーを務めるケルシーさん。様々な展示会をキュレーションしている彼女が感じる、ミッキーの魅力のひとつが求心力だという。
「まさに“このクラブのリーダー”。なかまたちを集められる存在です。ミッキーを思うと、ミニーやチップ&デールなど、他のキャラクターも連想しますよね」
ちなみに、ミッキーのあまり知られていない秘密も教えてくれた。
「ミッキーはハリウッド通りでスターを持った初めてのキャラクターで、彼が初めて発した言葉は“ホットドッグ”。『カーニバル・キッド』(1929年)という作品にこのセリフが出てきます」
Profile
KELSEY WILLIAMS
ケルシー・ウィリアムズ。展示デザインキュレーター。ウォルト・ディズニー・アーカイブスの展示クリエイティブ・リーダー。ディズニー大型ファンイベント「D23」や没入型イベント等の体験施策をキュレートしている。
anan 2457号(2025年7月30日発売)より