
鞘師里保さん
12歳でモーニング娘。としてデビューし、卒業後はソロアーティストとしてストイックに独自の音楽を作ってきた鞘師里保さんが、待望のメジャーデビュー。1作目となるEP『Too much!』は、一生懸命“すぎる”人に寄り添いたいという鞘師さんの思いが込められている。
模索し続ける人生も“最高”だと思いたい
「私自身、頑張りすぎたり、その反動で何もできなさすぎるときがある。ちょうどいい加減で生きるのって、とても難しいと思うんです。そんな、行きすぎてしまう人を肯定するような曲を作りたいと思いました。『Too much』は英語のスラングで“最高”。『You’re too much!』は、ポジティブな意味で『やりすぎですごい』という褒め言葉です。模索し続ける人生も結果的に最高だと思えたらいいし、私も最高と言われるものを作りたい。あえて大きな一歩を感じさせるタイトルをつけたのは、自分の背中を押す気持ちも込めています」
真面目で、頑張り屋。イメージカラーの“赤”を纏いながらも、これまでの自分を超えていこうと、大胆なイメージチェンジにも挑戦した。
「慎重に結論を出すタイプですが、今回は自分の殻を破りたかった。ビジュアルをかなり変えて、ノリに任せて作ることも恐れずに受け入れてみようと思いました。『転生chu☆』は、いつもの私なら絶対つけられないタイトルです(笑)。レコーディングでテンションが上がった勢いのまま形になるのも、自分のはっちゃけた部分を出せたと思います」
全6曲、各プロデューサーにはNumber_iを手がけるMONJOEやヒップホップ界を牽引するFOUXなど、多彩な制作陣が集結。
「制作過程を細かく見させてもらい、みなさんの感覚やセンスに驚きと学びがつまっていました。なので、私も新しいことに挑戦できた。自分に近い部分を歌うときは見据えている景色から言葉を選ぶんですけど、『Super Red』は最初から高いところにいる設定で歌詞をお願いしました。“この自由さえ 正解にするだけ”は一番伝えたかった。『アイセヨイマヲ』はラップを織り交ぜた曲。民謡を意識して、バラエティに富んだ歌い方を試みました」
今作では作詞にも参加。プライベートでも仲の良いyaccoとスタジオにこもり、それぞれ歌詞を考えて意見交換しながら言葉を重ねた。
「強い曲が並ぶ中で、『ただただ今の里保ちゃんを語る曲があってもいいんじゃない?』と提案してくださって、変化が激しい今を日記のように綴る曲として『27yo』ができました。周りと比べて焦る年齢だけれど、ベンチに横並びで座って街を眺めるような場面を想像して書きました。『beyond』は初めて聴いたとき、ピンクオレンジの雲と空がある、走馬灯のような美しい景色が思い浮かんで。私は今の人生が気に入っているけれど、ふと手放したくなる瞬間もあって、何かあったとき前向きに生きるための記録として書きました。ライブで、みんなで歌う姿が思い浮かんでいます」
過去を振り返り、現在地を確認し、新しい世界に踏み出していく。今の鞘師さんを体現するようなEPは、時間をかけて話し合いながら、サウンドの土台と背骨が作られた。そこには、それぞれの視点で噛み砕かれた新しい“鞘師里保”が存在する。
「誰かにお願いすると自分がいなくなっちゃうんじゃないか、なんてことはなかったです。むしろ感情の広がりや発見があった。一方で変わらない私もいて、ダンスが音楽やステージと繋いでくれていることを再確認して『踊っていこう』という気持ちが強くなりました。私もお客さんも体が動き出す、踊ることの解釈を広げていけたらいいなと思います」
Profile
鞘師里保
さやし・りほ 1998年5月28日生まれ、広島県出身。アクターズスクール広島でダンスを学び、2011年にモーニング娘。に加入。2015年、グループを卒業し、ダンス留学へ。2021年に自主レーベルを立ち上げ、今年avexからメジャーデビュー。
Information

EP『Too much!』
EP『Too much!』。クラブミュージックをベースとした、メジャーデビューシングル曲「Super Red」を含む全6曲を収録。【初回生産限定盤(CD+BD+フォトブック+ステッカー)】¥9,900 【CD+Blu‐ray 盤(CD+BD)】¥7,700 【通常盤(CD)】¥2,750(avex trax)
anan 2457号(2025年7月30日発売)より