
左から、大東翔生さん、東良介さん
芸歴11年。数々の漫才賞レースで結果を出してきた、今、劇場で最もウケる若手コンビが狙うは、全国制覇!
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【ダブルヒガシ】今、このコンビがおもろい! 劇場を連日沸かす、注目の漫才師。
2023年に、第12回ytv漫才新人賞決定戦と第44回ABCお笑いグランプリでW優勝、’24年には第9回上方漫才協会大賞で大賞を受賞と、ここ数年で関西の名だたるお笑い賞レースを制覇し、舞台を沸かせてきたダブルヒガシ。今、波に乗る彼らの笑いを見逃してはいけない!?
――’23年、’24年と着実に結果を出してきました。次に目指すところはやはり漫才の頂上決戦『M‐1グランプリ』(以下、M‐1)なのではないかと思います。エントリーも始まって、周囲からの期待の声も大きいと思いますが、ご自身たちはいかがですか?
東良介(以下、東):それはもちろん、今年も出場する気持ちでいます。昨年の『M‐1』では同期のバッテリィズが準優勝をして大ブレイクを果たした。大阪でずっと一緒にがんばってきた身近な仲間がぽーんと売れて、テレビに出たり、全国区のテレビCMを何本もやっている。これはちょっと俺らもがんばらなあかんぞ、と気合が入りました。
大東翔生(以下、大東):いくつか大きな賞をいただいて、ありがたいことに関西での仕事がぐんと増えたんですよ。昨年はまずそれについていくことに必死で。『M‐1』対策ができてなかったかなという反省があります。でも、今年はもうその忙しさにもだいぶ慣れてきた。今年は、気持ちを切り替えて、ネタづくりとも向き合ってがんばれそうかなと思っています。
東:今年は、いいペースで新ネタできてるもんな。
大東:去年は一年で5~6本しか書けなかったんです。これまでは月イチくらいで新ネタをおろしていたのに、その半分くらいしかできてない状態で。ネタを書く人って、緻密に構成をコツコツ考えて練るタイプと、パッと降ってきたものを広げていくタイプがいると思うんですが、僕は完全に後者。そうなると、おもろいことが降ってくるメンタルでいることが大事なんですが、去年はちょっとその余裕がなかった。もうずっと頭の中に傘を差してしまっている状態でした。ネタが降ってきても受け止められない自分がいて…。
東:なんか、おしゃれな言い方して…。でも、その気持ちはすごくわかるなって。本当にしんどかったんです。だからこそ、売れながらきちんと結果を出してる人たちは、本当にすごい存在なんやなって思うようにもなりましたね。
――『M‐1』では準々決勝の壁が厚く、これまで決勝にコマを進めることは叶いませんでした。現時点でなにか傾向と対策として考えていることはありますか?
東:’23年にワイルドカードで一回だけ準決勝に上がることができたんです。でも、それも決勝に勝ち進めずで、正直、正解がわからんわってなりました。でも、僕たちは二人がおもろいと思っていることに齟齬がない。だからその軸をより伝わるように、突き詰めていくだけかなと思っています。
大東:僕ら、しゃべくりもコント漫才もあって、歌ネタもあればダブルボケのスタイルもできる。システム的なことで言えばなんでもありなんです。こういうシステムだとかスタイルやから面白いっていうより、ダブルヒガシは何やっていても、二人がただ喋っているのがおもろいなって、みなさんに思ってもらえるのが理想。
東:傾向で言えば昨年の『M‐1』も最終決戦に残った3組は、もちろんそれぞれにテクニックはあるけれど、それ以前に“人”の面白さがウケてた。大東の「こいつ何やねん」と笑える空気感や動きだとか、喋りのおもろさがもっと認知されれば、人間力で先に行けるんじゃないかと密かに希望を持っています。
――近年は、先ほど名前の挙がったバッテリィズやマユリカ、さや香など「よしもと漫才劇場」のエース格メンバーが東京進出を果たしています。お二人は賞レースのその先の目標としてどんなことを考えていらっしゃいますか?
東:大阪はもちろん大好きです。在阪の道を選んで、漫才に邁進するミルクボーイさんたちのような選択もかっこいいなと思います。でも、やっぱり全国区で活躍することに憧れがありますね。
大東:僕たち、意外と思われるかもしれませんけど、漫才したくてこの世界に入ったわけじゃないんです。もちろん今はめっちゃ漫才が好きですけど。僕らの原点はやっぱりテレビなんです。みんなが知っているゴールデンタイムの番組に出て、大勢の人にもっと名前を知ってもらいたい。この間、仕事で姫路の学校に行ったら、姫路の高校生は僕たちのことを知らず、ゼロ拍手だった(笑)。関西圏の姫路にさえ名前が届いてない。こんな悲しいこと、ありますか?
東:だから一回は東京で思いっきり勝負したいなって思いますね。まだそのステージにも僕らは立ってないですから。
ここでは「おもろいヤツ」が最上級の褒め言葉です
――大阪のお笑いをもっと全国で見せたいというお気持ちも?
東:そうですね。テレビつけたら吉本新喜劇やってますから。やっぱりお笑いの本場だと思うので、全国どころか、全世界から大阪のお笑いを見に来てほしいです。
大東:もうこれは県民性なんでしょうね。何よりの褒め言葉が「おもろいヤツ」ですから。老若男女問わずで全員が全員「あんた、おもろいね」って言われたい。たとえば悪口で「ブス」とか「デブ」と言われても別になんとも思わないですけど、「おもんないな」と言われると、めちゃくちゃ腹が立つ。そういう気質です。
東:その時点で他の地域と笑いにかけるウェイトがだいぶ違うな。
大東:うちのオカンなんて「あんたがおもろいのは私がおもろかったからやで」って言うんですよ。オカンでさえ「自分がいちばんおもろい」とマジで思ってる。
東:そういう場所だからおもろいもんが生まれて当然なんです。僕らももっと自分たちの笑いを追求してそれをみなさんにしっかり届けられるようがんばりたいです!
ダブルヒガシ
Profile
大東翔生(おおひがし・しょうい/ボケ担当)が、高校の同級生だった東良介(ひがし・りょうすけ/ツッコミ担当)を誘いNSC大阪校(36期生)に入学。2014年4月にコンビを結成。同期にはカベポスター、オダウエダなどがいる。『せやねん!』(MBS)にレギュラー出演中。
先輩芸人・ギャロップ林さんに聞く、ダブルヒガシのええところ!
『THE SECOND』の初代王者・ギャロップの林さんがダブルヒガシの漫才の魅力を徹底解剖!
人間味あるコンビ間の空気感の良さは、彼らの大きな武器。
まず大前提として彼らのネタはよくウケます。毎回、必ずチェックしているわけではないですけど、同じ公演に出演しているときなんかにチラッと覗くと、ぼちぼちのウケだとか、すべっているということはほぼなく、ドッカンドッカン笑いをとっている。この不定期に覗いてるときだけでも、いつもちゃんとウケている印象があるというのはすごく大事なこと。チャンスっていつ来るかわからないですから。いつどの現場でもウケているというのは、転がってきたチャンスの場面でもきちんとヒットが打てるということ。それくらいのステージには、彼らはすでに立っていると思います。
二人の漫才を見ていて思うのはすごく楽しそうだということ。二人の仲の良さだとか、信頼し合ってやっているんだなというのが漫才を見ているとよくわかる。二人で誘い笑いをし合って、本当におかしくて笑ってるんだろうな、というシーンをよく見ます。これってテクニックとかではできないことじゃないですか。コンビ間の空気が良くないとできない、すごく大きな武器なんです。「本当にわろてもうてるやん」という面白さは、たとえば、千鳥さんなんかを彷彿とさせます。自分たちのネタをちゃんと自分たちが面白いと思ってやっている。このリアルな人間っぽさというのは必ずお客さんにも伝わってええ評価に繋がる。大事にしてほしいなと思いますね。
あとはテクニック的なところで言うと、東くんのツッコミがいいなと思います。なんかあまり全否定しないんですよね。大東くんのボケはけっこうわけわからん突飛な世界へ連れていこうとします(笑)。でもそれを「そんなわけあるか!」と全否定してしまったら、世界が広がらないわけです。東くんは「え、まじで?」くらいのツッコミで世界観を半肯定くらいで優しく受け止める。それが展開を生んでいくので、お客さんもすっとワールドへ入っていけるんです。
コンビの関係性、技術のポテンシャル、何をとっても力量的にはいつ跳ねてもおかしくないコンビです。注目しておいて損はないと思います。
林 健さん(ギャロップ)
Profile

はやし・たけし 2003年、相方の毛利大亮とコンビ結成。ボケ担当。『THE SECOND 2023』王者。趣味は競馬、大好物は炒飯。おいしい炒飯を紹介するYouTubeチャンネル「チャーハン林」も持つ。
anan 2454号(2025年7月9日発売)より