甲斐翔真さん

世界で、日本で、熱狂と実績を生み出し続ける韓国発のミュージカル。今秋上演される話題の作品にも出演する、甲斐翔真さんにお話を伺いました。

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    心臓を貫かれるような臨場感ある音作りがすごいです。

    日本では3度目の上演となるミュージカル『マタ・ハリ』に、今回、アルマン役として初参加する甲斐翔真さん。

    「もともと、今作の音楽を担当しているフランク・ワイルドホーンのファンなんです。前回の公演を拝見したとき、音楽に浸ったという感覚がありました。あとはなんといっても、マタ・ハリを演じる柚希(礼音)さんと愛希(れいか)さんの美しさに惹き込まれました。その美しさゆえにいろんなドラマが起きるわけで、その人生は壮絶ではありますが、そんな中でもアルマンと出会い、真実の愛を手にするところに心を掴まれます。そこにエモーショナルでドラマティックなワイルドホーンの旋律が加わり、迎えるラストがとても魅力的です」

    作品の背景には戦争があり、終始不穏な空気が流れるが、その中でアルマンは「作品の中の救いであり、オアシス的な役割を担っている存在」。

    「とくに、屋上でふたりがまるで少年少女のように朝日を眺めるシーンが好きなんです。任務でマタ・ハリに近づいたはずが、恋の沼にハマっていく。純粋な青年なんですよね。だからこそ真逆の立場にあるラドゥーとの絡みが面白いし、ファンの方も楽しみにしているふたりが言い争うシーンは、僕自身も演じるのが楽しみです」

    ワイルドホーンの楽曲が、自然と役に導いてくれるとも。

    「曲という船があるとしたら、そこに乗ってしまえば、自然とあるべき場所に連れていってくれるんです。でもその上で、自分がその船を操縦できるようになったら無敵。このシーンでなぜこの旋律なのか、役の心情と楽曲を自分の中でリンクさせることによって船に帆を張って進んでいけるので、しっかり向き合っていけたらと思います」

    いまや、次々と大作への抜擢が続き、ミュージカル界になくてはならない存在となっている甲斐さんだが、そのきっかけは、韓国で観たミュージカル『ジキル&ハイド』。

    「それまでは、観てはいてもミュージカルというものが自分の中で理解できていなかったんです。でも、『ジキル&ハイド』で完全に歯車が噛み合った。舞台から受けるパワーに、心を打ち抜かれてしまったんです。あれを観た瞬間からミュージカルを絶対にやりたいと思って、事務所に頼んでミュージカルのオーディションを受けさせてもらいました」

    初舞台にして初主演を務めた『デスノート THE MUSICAL』もオーディションで手にした役。日本で制作されたミュージカルながら、韓国でも現地俳優によって上演され、大ヒットを記録している。

    「ジキル役も演じたホン・グァンホさんがデスノートの曲を歌っている動画を見てひたすら練習して臨んだんです。そしたら会場で、『絶対にあれ見たでしょ』と言われたくらい(笑)」

    とくに甲斐さんが韓国ミュージカルに惹かれる理由は音圧。

    「NYともロンドンとも違う、心臓を貫かれるような音作りをしているんですよね。それがより迫力や臨場感を生み出している気がします。劇場の音響も良く、あの環境で歌えるのは素晴らしいと思います」

    年に数回は渡韓しており、観劇するたび、日本とのミュージカルの土壌の違いを感じることが多いと話す。

    「舞台に立つ俳優の多くは訓練を積んできていて、ミュージカル俳優は若い世代に憧れられる存在です。日本に比べて若い観客の割合が多く、比較的劇場にカジュアルに観に来ています」

    韓国ミュージカルとは

    韓国で制作され、上演されたミュージカル作品。それらの作品が日本に輸出され、日本版演出で上演されることも一般化。近年、ミュージカル界に一大旋風を巻き起こす存在に。さらに、気になる演目や俳優として出演するK‐POPスターを観るべく、渡韓するファンも急増中!

    甲斐さんの韓国アルバム

    演出が一新されたと知り観に行った『デスノート THE MUSICAL』。「あまりの人気に、日本版で夜神月を演じた身ですが、席が全然ないとのことで3階席から観ました(笑)」

    「雷に打たれたような衝撃だった」という’18年の『ジキル&ハイド』。「ミュージカルにハマってからそれ以前に観た作品をもう一度観に行ったら、感じ方が全然違って驚いたくらい」

    ワイルドホーンの楽曲に大満足!

    昨年観た『モンテ・クリスト伯』が素晴らしかったです。最初はささやくような楽曲で始まり、終盤は歌い上げる大曲揃いで、ミュージカルを観た、という満足度の高い作品です。俳優では、僕が『ジキル&ハイド』で拝見したパク・ウンテさんはもちろん、『笑う男』を観に行って歌を聴いただけで泣いたパク・ガンヒョンさん、仲良しのミン・ウヒョクさんなど、素晴らしい方ばかり。韓国のミュージカルはみなさん総じてレベルが高いので絶対に楽しめるはずです。

    甲斐翔真さん

    Profile

    かい・しょうま 1997年11月14日生まれ、東京都出身。近作にミュージカル『キンキーブーツ』。今年、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』などの演技で菊田一夫演劇賞を受賞した。

    ミュージカル『マタ・ハリ』

    Information

    10月1日(水)~14日(火)東京建物Brillia HALL 脚本/アイヴァン・メンチェル 作曲/フランク・ワイルドホーン 訳詞・翻訳・演出/石丸さち子 出演/(ダブルキャスト出演あり)柚希礼音、愛希れいか、加藤和樹、廣瀬友祐、甲斐翔真、神尾佑、春風ひとみほか 全席指定S席平日1万5000円、土・日・祝日1万6000円ほか 梅田芸術劇場 TEL:0570・077・039(10時~18時) 大阪、福岡公演あり。

    ジャケット¥51,700 シャツ¥25,300 パンツ¥27,500(以上ラッド ミュージシャン/ラッド ミュージシャン 原宿 TEL:03・3470・6760)

    写真・小笠原真紀 スタイリスト・鹿野巧真 ヘア&メイク・木内真奈美(Otie) 取材、文・望月リサ

    anan2454号(2025年7月9日発売)より
    Check!

    No.2454掲載

    ボーダレスカルチャー 2025

    2025年07月09日発売

    アニメ、映画…世界で沸いているカルチャーをボーダレスに楽しめるようになった昨今。あまたある情報の中からいま注目すべきエンタメをピックアップします。海外からの反響も大きい日本発の配信ドラマ、日本で楽しむ韓国ミュージカル、国際化著しい大阪のお笑い、女性作家中心に人気を集める東アジアの文学界など、知っておきたい最新エンタメ事情&話題の人々に迫ります。さらに開催中の大阪・関西万博で世界中のカルチャーを体感できるエリアをレポート。

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    白紙に戻したい、もしくは別の生き方をしたいという心境になりやすい日です。イメージチェンジへの憧れ。結果として実際にそういう行動に出る人もいるでしょう。それでも、今やっていることを途中で投げ出すと後で問題になりがちなので、リセットに走る前に、とにかくやっておくべきことだけは終えておくほうが無難です。

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