加藤和樹さん

韓国発のミュージカルが、世界で、日本で、熱狂と実績を生み出し続けています。今秋上演される話題の作品にも出演する加藤和樹さんにその魅力を伺いました。

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    同じ役でも演じる方によってアプローチが全然違うのが面白いです。

    韓国ミュージカルについての連載を持つなど、造詣が深い加藤和樹さん。

    「初めて現地で観たのは『エリザベート』です。もともと作品自体がすごく好きで観に行ったのですが、日本とは美術や演出が全然違い、自分の中で凝り固まっていたイメージが根底から覆されるような斬新さがありました。そして役者さんの力量というか…歌の届け方の力強さに驚いて、そこから気になって観るようになりました」

    そんな中、自身の出演が決まり観に行った韓国発のミュージカル『フランケンシュタイン』に、「作品として断トツに好き」と言うほど魅了された。

    「面白いのは、同じ役でも演じる方によってアプローチが全然違うこと。それは風貌ひとつとってもですし、動きも違えば、セリフも違うこともあるくらい。合わせる側は大変だと思いますが、それだけ俳優の個々の意見を尊重していて、受け入れる土壌があるということ。自分が観客なら、ダブル、トリプルキャストを全部観てみたいと思いますし、それがハマる要因のひとつでもあると感じます」

    その根底には、韓国の俳優たちの基礎力の高さもある。

    「韓国でミュージカルの舞台に立っている俳優の多くが、専門的に演劇や歌を学んできた方々なんですよね。日本では…まさに僕自身もですが、ミュージカルの世界に入ってから勉強し始めたパターンで。向こうの舞台の全般的なレベルの高さ、ジャンルとしての成長速度の速さも、そこにあると思います」

    韓国で『フランケンシュタイン』を観たとき、その実力の差に打ちのめされ、同じ役を演じるパク・ウンテさんから紹介を受けた先生について発声のトレーニングを受けるように。

    「レッスンといっても音域を広げる発声や喉の調整が主で、歌の練習をするわけではないので最初は半信半疑でした。でも徐々に変化が見えて、以前は出なかったキーで楽に歌えるようにもなって。今も渡韓するたびにお世話になっています」

    その加藤さんは、韓国で制作し世界初演されたミュージカル『マタ・ハリ』に日本初演から参加している。

    「時代や権力者たちに翻弄されながら、誇りや尊厳を失わずに生きたマタ・ハリという人物が何より魅力的で、その心の強さや壮絶な人生に心掴まれます。マタの感情が揺れ動くほど、お客さんも共感できると思いますし、そこにどれくらい説得力を持たせられるかで作品の良し悪しが決まるといってもいい。彼女と深く関わる人物として、マタ・ハリ役の柚希(礼音)さんと愛希(れいか)さんの心をどれだけ揺さぶれるかが課題だと思っています」

    第一次世界大戦中にスパイとして処刑されたダンサーで高級娼婦でもあったマタ・ハリ。加藤さんは、彼女を脅してフランス軍のスパイ活動に協力させる諜報局のラドゥーと、マタと恋に落ちる青年・アルマンという真逆の二役を、交互に演じる。

    「ラドゥーは戦争の一番の犠牲者だと思っています。父にも義理の父にも時代にも逆らえずに生きてきたからこそ、自分の生き方を貫くマタに惹かれたと思うし、命令に抗うアルマンに嫉妬するんです。一方のアルマンは、任務としてマタに近づくも、彼女の中に真実の愛を見つけて成長していく人間くさいキャラクター。どちらもすでに演じている役ですが、また今までと違った変化があると思いますので自分でもとても楽しみにしています」

    韓国ミュージカルとは

    韓国で制作され、上演されたミュージカル作品。それらの作品が日本に輸出され、日本版演出で上演されることも一般化。近年、ミュージカル界に一大旋風を巻き起こす存在に。さらに、気になる演目や俳優として出演するK‐POPスターを観るべく、渡韓するファンも急増中!

    加藤さんの韓国アルバム

    『ベン・ハー』観劇後、敬愛するパク・ウンテさんと。「役者としてのご助言やご自身のトレーニング方法まで惜しみなく共有してくださる先輩の国境を超えた優しさも尊敬しています」

    初めて韓国で観劇した’15年の『エリザベート』。「エリザベート役がオク・ジュヒョンさん、トート役がチョン・ドンソクさん。ふたりの名前は日本にいたときから知っていました」

    何を観劇するか迷ったら…!

    僕が断トツに好きな作品は『フランケンシュタイン』ですが、『エリザベート』や『ファントム』など、日本でも馴染みのある作品は、言葉がわからなくても楽しめるのではないでしょうか。どの作品も出演者のみなさんのスキルが高いので満足感は高いはず。それでも迷ったら、パク・ウンテさん、オク・ジュヒョンさんの名前がある作品を選べば間違いないです。今は、いろんなアイドルの方も出られていますので、それをきっかけにしてもいいと思います。

    加藤和樹さん

    Profile

    かとう・かずき 1984年10月7日生まれ、愛知県出身。楽曲リリースやライブツアーなど、音楽活動も積極的に行い、12月開幕のミュージカル『サムシング・ロッテン!』への出演も控える。

    ミュージカル『マタ・ハリ』

    Information

    10月1日(水)~14日(火)東京建物Brillia HALL 脚本/アイヴァン・メンチェル 作曲/フランク・ワイルドホーン 訳詞・翻訳・演出/石丸さち子 出演/(ダブルキャスト出演あり)柚希礼音、愛希れいか、加藤和樹、廣瀬友祐、甲斐翔真、神尾佑、春風ひとみほか 全席指定S席平日1万5000円、土・日・祝日1万6000円ほか 梅田芸術劇場 TEL:0570・077・039(10時~18時) 大阪、福岡公演あり。

    シャツ¥44,000 パンツ¥49,500(共にIRENISA) ネックレス¥145,200(IVXLCDM/IVXLCDM 六本木ヒルズ TEL:03・6455・5965) リング、右手中指¥17,600 左手人差し指¥31,900 ブレスレット¥48,400(以上MIRAH/STUDIO FABWORK TEL:03・6438・9575) シューズ¥136,400(SHEIK YERBOUTI/STUDIO FABWORK) その他はスタイリスト私物

    写真・小笠原真紀 スタイリスト・立山 功 ヘア&メイク・瀬戸口清香 取材、文・望月リサ

    anan2454号(2025年7月9日発売)より
    Check!

    No.2454掲載

    ボーダレスカルチャー 2025

    2025年07月09日発売

    アニメ、映画…世界で沸いているカルチャーをボーダレスに楽しめるようになった昨今。あまたある情報の中からいま注目すべきエンタメをピックアップします。海外からの反響も大きい日本発の配信ドラマ、日本で楽しむ韓国ミュージカル、国際化著しい大阪のお笑い、女性作家中心に人気を集める東アジアの文学界など、知っておきたい最新エンタメ事情&話題の人々に迫ります。さらに開催中の大阪・関西万博で世界中のカルチャーを体感できるエリアをレポート。

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    白紙に戻したい、もしくは別の生き方をしたいという心境になりやすい日です。イメージチェンジへの憧れ。結果として実際にそういう行動に出る人もいるでしょう。それでも、今やっていることを途中で投げ出すと後で問題になりがちなので、リセットに走る前に、とにかくやっておくべきことだけは終えておくほうが無難です。

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