今や国境や世代を超えて、世界中で同じエンタメを同じタイミングで共有できる時代。そんなボーダレスカルチャーのなかから、ここではビデオゲームの最前線に注目。ゲームジャーナリストのJiniさんにお話を伺いました。
【GAME】若者文化を凝縮した日本ならではのインディゲームが、国内外で大ヒット。
ゲーム界におけるグローバルなトレンドキーワードが、インディゲーム。インディペンデント・ビデオゲームの略称で、経済的に独立した状態で作るゲームを指している。
「以前はゲームを作るというと、企業に会社員として所属して、言われたタイトルを作る形が主流でした。それが、2010年頃から、企業の意向やマーケティングなどにとらわれず、自分たちが表現したい作品を作るインディゲームが本格的に流行り始めました。クリエイターの価値観やこだわりが反映されやすい、作家主義的なところが特徴で、今や世界で大きなムーブメントになっています」
Jiniさんが注目しているのは、日本のインディゲーム開発者ならではの視点を味わえる、“インターネット”がキーワードになった大ヒット中の2タイトル。
「一つは『NEEDY GIRL OVERDOSE』です。プレイヤーは“超絶最かわてんしちゃん”という配信者のピになって、30日以内に彼女のフォロワーを100万人獲得することを目指すという、ある種の育成ゲームのような作品。日本のインディゲームとしては記録的な全世界売り上げ200万本超えを達成しています。現代の配信者文化や、バズる快感みたいなものをゲームに落とし込んでいるところはもちろん、配信に力を入れるあまり自分の身を切り売りするような辛さを味わったり、フォロワーからの心ない言葉に傷つくなど、日本のインターネットの光と闇を映し出すような視点で描かれています」
もう一つは、主人公が巷の都市伝説の正体を解き明かすという内容の『都市伝説解体センター』。
「謎を解く楽しさがあるのはもちろん、インターネットの噂や無責任な発言、偏見や差別みたいなものの恐ろしさも描かれている作品です。『NEEDY GIRL OVERDOSE』が、配信者として一発当てることを目的としているという点において、インターネットを成り上がるためのツールとして描く一方で、『都市伝説解体センター』は、偏見などネガティブなものが生まれる場所という描き方をしているのかなと。このように、今、日本の若者がいちばん注目している土壌であり、現代を象徴するようなテーマに対する解釈の違いを、感じたり楽しめるところも、インディゲームの面白さであると思います」

『NEEDY GIRL OVERDOSE』
承認欲求が強い女の子・あめちゃんを、超絶かわいいインターネットエンジェルに変身させる、マルチエンディングアドベンチャー。プレイヤーは、彼女と生活をする中で配信用のネタを集め、動画配信を行いながらフォロワー獲得を目指す。Nintendo Switch、PS4/5、Steamでプレイ可/Why so serious, Inc.
ⒸWSS playground

『都市伝説解体センター』
主人公の福来あざみは、怪異や呪物、異界などの調査をして謎を解明する「都市伝説解体センター」で働くことに。センター長であり能力者である廻屋渉と共に都市伝説にまつわる依頼を解決していくが、そんな彼らを衝撃の展開が待ち受けていた…。Nintendo Switch、PS5、Steamでプレイ可/集英社ゲームズ
ⒸHakababunko/SHUEISHA, SHUEISHA GAMES
お話を伺った方・Jiniさん
Profile
ジニ ゲームジャーナリスト。ビデオゲームの批評や歴史、ビジネスなどの記事を執筆。有料ゲームメディア「ゲームゼミ」を主宰。『アフター6ジャンクション2』(TBSラジオ)に準レギュラーとして出演するなど、さまざまなメディアにも出演。
anan2454号(2025年7月9日発売)より