日本&世界が注目する話題作とは? ボーダレスカルチャー最前線、ここではアニメに注目します。
【ANIME】ジャパニーズアニメが、国籍とは違う“ナショナリティ”で世界を繋ぐ。
海外のジャパニーズアニメ人気は、近年、より一般化しているという。
「昨年、アニメのイベントの司会をするために、3か月連続でアブダビとシンガポール、韓国に行きました。会場には日本のアニメーションが好きな人たちがたくさん集まっていて、司会は日本語のままでいいとのこと。実際、日本語で喋って笑いが起き、さらに翻訳されてもう一回笑いが起きるような感じでした。また、シンガポールでのイベントの時は、韓国とインドネシアから来たアニメファンが日本語で話す場面にも遭遇。彼らが『日本語はオタクのラテン語みたいなものだから』と言っていたことが印象的でした。いわゆるオタクたちから日本のアニメが支持される流れは、10年以上前から続いていましたが、コロナ禍によってブームアップされているのを感じます。コロナ前までは、本当に濃いオタクが集まっていたのが、約2年の間にサブスクでアニメを見ることが一般的になり、海外でのジャパニーズアニメ人気がジャンプアップしたのだなと。昨年あたりから、イベントも最高動員数を更新し続けている状態になるなど、今ものすごい勢いで、日本のアニメが国外に出ています」(ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記さん)
海外でヒットする作品は、日本のヒット作と変わらないという。
「海外のオタクと話す時に聞かれるのは、『いま日本ではどんなアニメが流行っていますか?』ではなく、『この声優さんに会ったことはありますか?』みたいなニッチな質問。そのくらい海外の方も同じタイミングで、同じ作品を見ています。職場の隣の席の人より海外のオタクの方が話が合うこともあるくらい、オタク同士は共通言語を持っているんですよね」
『週刊少年ジャンプ』の漫画をアニメ化した作品が人気なのは変わらないが、最近は、それ以外の作品がヒットすることも増えている。
「いま話題なのは『薬屋のひとりごと』です。脚本が良く、ちゃんとしたクオリティのものは、国外でもヒットします。また、転生モノも引き続き人気です。毎シーズン50~70作くらいの新作アニメが作られていますが、その半分弱くらいが転生や異世界をテーマにした作品で、日本より海外のニーズが高いといえます。なかでも最近、視聴数が高いのが『アラフォー男の異世界通販』。アラフォーの男性が異世界に転生し、通販で家電などを買って無双するという作品です。辛いことも多い世の中では、現実の写し鏡のような作品ではなく、どこかに楽園が存在すると思えるような、ストレスケア的役割をアニメに求めている人が、世界共通で多いのかもしれません」

『薬屋のひとりごと』
人さらいに遭った薬師の猫猫は、売り飛ばされた後宮で働くことに。そこで起こる事件や謎を次々と解き明かしていく。「TikTok上半期トレンド大賞2025」において、大賞とマンガ・アニメ部門をダブル受賞したことでも話題に。第2期Blu‐ray第2巻¥14,850 7月16日発売。発売・販売元:東宝
Ⓒ日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

『アラフォー男の異世界通販』
アラフォーの独身・ケンイチは突如、異世界に転移するが、巨大ネット通販サイト「シャングリ・ラ」が使えることに気づく。異世界のアイテムを換金して現代日本の商品を購入する能力を駆使して商売を始め、スローライフを目指すが…。NetflixやU‐NEXTなど各配信サイトで配信中。
Ⓒ朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
お話を伺った方・吉田尚記さん
Profile
よしだ・ひさのり ニッポン放送アナウンサー。漫画やアニメに精通、国内外のイベントで司会を行うなど幅広く活動。マンガ大賞の発起人であり実行委員。今年4月から東京大学大学院へ進学、推し活とウェルビーイングの関係を研究。
anan2454号(2025年7月9日発売)より