若者たちの心と体を守るために必要な場所。
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「ユースクリニック」とは、若者がセクシュアルヘルスや体の悩みを医師や看護師に気軽に相談できるところ。「ユース相談室」「街の保健室」とも呼ばれ、保険証不要で無料か一律ワンコイン程度の低価格で利用できます。
たとえば性感染症に罹患したり、望まない妊娠をしてしまった場合、年若い人にとって病院にかかるのはとてもハードルが高いことです。一人で抱え込み、赤ちゃんをトイレで産み落とすというような事態も起きました。
ユースクリニックは親や友達に相談できない悩みを打ち明けられる場所として、北欧が先進的に取り組んできたシステムで、およそ13~25歳の若者を対象にしています。スウェーデンには国内に200か所以上あり、日本ではこども家庭庁が誕生してから、近年増えており、全国に約60か所あります。
小児科が運営している場合もありますし、自治体やNPOが担う場合もあります。話しやすい環境を作るために、ネイルアートなど各所多様なサービスを付与していますが、医師や看護師、臨床心理士など専門家が常駐しているかどうかはバラバラ。ユースクリニックが今後広がる上では、団体としての連携や仕組みづくりが必要でしょう。
性と生殖に関する健康と権利(SRHR)は、自己決定で選択できるようにしなければいけないのですが、日本の学校の性教育は国でコントロールされており、他国に比べて大変遅れています。性や体に対する正しい知識や性交渉におけるリスクは、本来であれば義務教育課程でもっと教えるべきでしょう。ところが、「そういうことを教えると逆に性が乱れる」「望まない妊娠中絶が増える」などの憶測が飛び交い、日本の性教育は旧態依然です。
最近では梅毒が急激に蔓延したリ、HPVワクチンについても適切なケアが広がっていません。若い女性だけでなく、男性も正しい知識を得ることが必要です。性の話をタブー視し、学校や社会で話しづらい環境がある。これを改善するには、高齢化した男性中心の政治を変える必要があると思います。政治のジェンダーバランスを整え、人権意識に敏感な議会になることが急務なのかもしれません。
PROFILE プロフィール
堀潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。
anan 2432号(2025年1月29日発売)より