
「僕も最初、“自分で大丈夫ですか?”って(笑)。俳優が本人役を演じる舞台『コンプレックス★ステッカー』を観た監督が、“駿河太郎は何にも満足していないんだな”と感じられたそうで、夢二役にと(笑)。不思議なご縁でしたが気負いはなかったです」
妻・たまき(黒谷友香)、最も愛した女・彦乃(小宮有紗)との愛憎を通して描かれるのは、大正ロマンを代表する画家・竹久夢二の男としての人間くささ。
「主役って周りに作られるもんなんやなって思いましたね。ふたりとも役柄そのままに現場にいてくれて、黒谷さんとは挨拶しただけでほかには一言も喋ってないくらい。一方、有紗ちゃんはずっとそばにいてくれて。夢二の美人画から抜け出してきたようなふたりの佇まいといい、大正ロマンの色気とあいまって、日本よりヨーロッパとか海外でのほうが評価される気がしてますね」
それも納得。「Japan Film Festival LA 2015」では、最優秀作品賞と最優秀主演男優賞を受賞しています。白いスーツで夢二の洒落者ぶりにもときめかせてくれる駿河さんですが、濡れ場にも初挑戦。
「撮影の半分ぐらいは前貼りしてましたね。スタッフは僕のケツの穴まで知ってるんじゃないかと(笑)。たまきに対しては支配欲しかないと感じて、台本と違うアプローチをさせてもらったり。ちゃんと伝わってるかわかりませんが、彦乃の抱き方とたまきの抱き方は違います」

その違いから見えてくるのは、夢二という男の「真実」。観ている側の心にも、彼への愛憎が渦巻きそう。
「女性目線で観たら、夢二はとんでもないロクデナシですね(笑)。でも、観終わった時にはそんな男をしょうがないと受け入れてしまう。そうなるのが、僕の夢二としては正解ですよね」
竹久夢二が愛した女たちとの関係を通して、「夢二」の本質に迫る人間ドラマ。監督/宮野ケイジ 出演/駿河太郎、小宮有紗ほか 7月30日よりシネ・リーブル池袋、シネ・ヌーヴォほか全国順次公開。(C)2015映画「夢二~愛のとばしり」製作委員会
※『anan』2016年8月3日号より。写真・GENKI(IIZUMI OFFICE) スタイリスト・種市 暁ヘア&メイク・白銀一太(ピュアナプー) インタビュー、文・杉谷伸子 衣装協力・マレアエッレ
(by anan編集部)