幼なじみの人物像を自分のものとして偽った女の子の話です。
「私が演じている笠松ほたるは、クラスでの立ち位置は中心グループの4番手から5番手くらい。秀でた部分が特別あるわけでもなく、地味で目立たないというわけでもない普通の女の子です。そんなほたるには、小中高が一緒で、天敵ともいえる存在の同級生・鍵谷美晴がいます。美晴は、ほたると正反対の性格で、スポットライトを浴び続ける存在。そんな彼女に憧れているとか羨ましいという気持ちを素直に表現できないほたるは、美晴を一方的に意識している。そして本当はああなりたいけれどなれない自分に厭気がさしています。そんな劣等感って、誰しもが一度は抱いたことがある感情だと思うので、その複雑な機微を表現しました。主人公が心の声を語るモノローグがすごく多いので、その時間を考慮しながらセリフを話すのが結構大変でした。でも、声のトーンとか表情など、全シーンに集中しながら演じるように心がけました」
就職活動で連戦連敗中のほたるは、美晴の個性を自分のものとして偽ったエントリーシートを提出し、通過。どう受け止めたらよいのかわからないまま、面接に進むことになる。
「私自身、就活の経験がないので想像しながらやるしかなかったのですが、面接のシーンはセリフ量が多くて覚えるのが大変でした。でも実際に就活中の方から『私もウケのいいエントリーシートの書き方を調べて提出しました』『僕も全く同じ状況です』と、感想のDMをたくさんいただいて、みなさんこんな辛い経験をしながら社会人になっていくんだなって改めて知ることができました」
ほたるは無事に内定を獲得。第5週の放送回から、舞台は3年後へ。大手企業でバリバリと仕事をこなすほたるは、美晴と再会。浅からぬ縁のふたりの関係性にも変化が訪れる。
「5週以降は、ほたるの人間らしい部分がさらに見えてきます。そして付かず離れずの関係だった美晴との距離がグッと縮まっていきます。美晴を演じた髙石あかりさんとは、この作品を通してすごく仲良くなりました。大阪で4か月間撮影していたのですが、撮休の日は一緒にごはんを食べたり、東京に戻ってきてからも一緒に遊びに行くことが多く、最高の友達ができました。作品では、友達の仮面をかぶったほたるが、美晴とどんな関係性を築いていくのかも見どころのひとつなので、ぜひそこにもフォーカスしながら最後まで見ていただけるとうれしいです」
夜ドラ『わたしの一番最悪なともだち』 本当の自分に自信がなく、誰かの理想的な人生を拝借することができたら…。そんな自分を偽り、友人の仮面をかぶった女性の物語。繊細で瑞々しい青春ドラマ劇を個性的な若手俳優たちが繰り広げる。NHK総合で毎週月~木曜22:45~放送中(各話15分)。全32回。
まきた・あじゅ 2002年8月7日生まれ、神奈川県出身。7歳で子役デビュー。NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』のほか、是枝裕和監督の作品にも数多く出演。主演を務める映画『ハピネス』は2024年公開。
※『anan』2023年9月27日号より。写真・魵澤和之(まきうらオフィス) スタイリスト・小蔵昌子 ヘア&メイク・山口恵理子 インタビュー、文・鈴木恵美
(by anan編集部)