時代に優しい変化をもたらす、新たな驚きに満ちたサウンド。
「ひとつの音楽性を貫くバンドのカッコよさもあるけど、どんどん変化していくバンドが好きなんです。僕らはいろんな音楽に影響を受けて音楽をやっているので、自分たちの作品もジャンルなどに制限を持たせずに作っていきたいです」(内澤崇仁・Vo&Gt)
「それぞれ好きな音楽は違うけど、andropで音を鳴らす時はメンバー全員が違う方向から同じ所を見てる。だからいろんなジャンルの曲と自然と向き合えています」(前田恭介・Ba)
配信シングルとしてもリリースされた1曲目の「Beautiful Beautiful」はハードコア・ヒップホップ調のサウンドで、現代の闇を映し出すような歌詞がリスナーに驚きと衝撃を与える。
「2017年にCreepy Nutsとコラボした時にヒップホップを直接体感しながら制作できた経験も大きかったですね。曲の速さはゆっくりなのに、お客さんは倍のBPMで乗っているという海外のライブ映像を見て、そんな曲を作りたいなと思いました」(内澤)
メロウなR&Bサウンドが心地よい「Lonely」や、華やかなホーン・セクションを取り入れてジャジーに仕上がった「Super Car」など、豊かなアイデアを自分たちのモノにしてしまうバンドのポテンシャルは底知れない。ソングライターである内澤さんへの信頼がバンド全体の進化を実現するようだ。
「ドラマーとしてもヒップホップやトラップと呼ばれるようなビート感の音楽は今の時代、避けては通れないジャンル。ライブで再現するのは大変ですけど、大変さがないと面白くない。内澤くんが作った曲を何の苦労もなく演奏できるなら僕じゃなくてもいいと思うし、大変なぐらいがちょうどいいんですよ」(伊藤彬彦・Dr)
「メロディが良い曲も、時代に合わせた攻めた曲も書いてくる内澤くんの振り幅がすごい。それを楽しみにしてくれている人たちに、ちゃんと届けるのはバンドの一員としてのやりがいですね」(佐藤拓也・Gt&Key)
そんな内澤さんだが、この撮影時、衣装にコーヒーをこぼしてしまうハプニングに見舞われたのは、ここだけの話(笑)。「着替えてきます!」と慌てる彼を和やかに見守るメンバー。この4人だからこそ生まれた曲が、このアルバムには詰まっている。
「メンバーみんな、サウナが好きで。『andropのサタデーナイトサウナ』というラジオ番組を名古屋のFM局で担当していたこともあるほど。だから『Lonely』の歌詞に〈ロウリュ〉というサウナ用語が入っていたりします」(佐藤)
「以前この4人でジョン・メイヤーのライブを観にシカゴに行ったことがあるんですけど。『Chicago Boy』はその時のことを思い出して書いた曲です」(内澤)
そして曲のテイストが幅広くなるとともに、内澤さんのボーカルも更に多彩な表情を放つのも聴きどころ。
「今までで一番、歌のレコーディングに時間をかけました。コロナ禍になって自宅で歌録りができる環境作りをしたので、納得がいくまで何度も歌と向き合えたんです」(内澤)
その歌声が、この時代を生きる人に優しさと温もりをもたらす。
「今回のアルバムはどういう瞬間を歌にするかを考えてから作り始めた曲が多くて。ピアスの穴をあける瞬間のような青春の痛みを描いた『Pierce』など、一曲一曲にプロットがあります。そして全曲に、この時代に生きる人間のエゴを呼び起こさせるようなテーマ性を持たせました。自己中心的な考えを描くことで、それとは対極的な人と人との繋がりを描きたかったんです」(内澤)
インターネット上の誹謗中傷、正直者が馬鹿を見るような世の中、それらがコロナ禍で加速していったからこそ、andropが音楽を通じて伝えたかったこと。それが“人と人との繋がり”だ。
「自分が音楽に大変な時を救ってもらったように、自分たちの音楽もそうでありたい。エフェクターが楽器の音を変えるように、この曲たちが聴いてくれた人の心を生活の中で変えられるものであったらいいなと思い『effector』と名付けました。ライブのことも考えて作ったので、また機会があればライブにも遊びに来てもらいたいです」(内澤)
6th AL『effector』。今年の彼らが精力的にリリースしてきたデジタルシングル5曲を含む充実作。12月22日発売。【通常盤(CD)】¥3,300(SPACE SHOWER MUSIC)
アンドロップ 左から、伊藤彬彦(Dr)、前田恭介(Ba)、佐藤拓也(Gt&Key)、内澤崇仁(Vo&Gt)。2009年にデビュー。12月23日・24日に恵比寿ザ・ガーデンホールで演劇×音楽のコンセプトライブを開催。
※『anan』2021年12月22日号より。写真・大嶋千尋 取材、文・上野三樹
(by anan編集部)