コメディ、とはいえ大声で笑うのとは少し違う。クスッもしくはククッくらいか。シニカルなのになんだかオカシくて、くだらないのにちょっと粋。ナイロン100°Cの新作舞台『イモンドの勝負』は、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さん曰く「ナンセンスの、或いは、不条理の極北に行ってみる覚悟」。となれば欠かせないのは、大倉孝二さんの存在だ。

「僕にとってはくだらないことが一番。やれる場があるってありがたいです」

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「日々台本が少しずつ上がってきて、そこを稽古していってる訳ですけど…。やりながらも、いまだどんな芝居になるのかわからないんです。たぶん意図的に、シーンごとに笑いの質とか芝居の質が違っていて訳がわからない。ただ間違いなくコメディではある…というか、ほぼ意味なんてない内容になるのではないかと」

劇団員の大倉さんからすれば、これぞ真骨頂というところだろうか。

「僕はもともとKERAさんのナンセンスが好きで入ってきたんで。昨今は別の作風のものもやっていますが、僕にとってはくだらないことが一番で、この歳になってもそれをやれる場があるってありがたいです」

近年は、名バイプレイヤーとして、ドラマや映画でも重要な役柄を任されることが増えている。しかし、大倉さん自身は「くだらないこともしていないと、自分の中で整合性がとれないんです」と苦笑する。

「ちょっとしたセリフにKERAさんがつけてくれた演出が、たまらなく面白いときがあるんです。唐突に訳のわからないセリフを言ったり、行動したり。全然理屈に合わないし、理由もないけど、そういう場面を見るのもやるのもすごく楽しい」

つい先頃には、放送中の大河ドラマ『青天を衝け』での、渋沢栄一を新政府に請うため熱弁をふるう、大倉さん扮する大隈重信の軽妙かつ説得力のある演技が注目を集めた。しかし、当の本人は複雑な表情。

「自分ではいまだにうまくできないって思ってしまうんです。大隈も、現場で監督さんの意向にできるだけ沿うようにとやっていましたが、うまくできないなって思っていたんです。それが予想外に評判がよくて、むしろ戸惑いの方が大きいです」

自分自身に対してもシニカルな人なのだ。それでも舞台、そしてコメディへの思いは強い。

「今回の作品は、このまま訳のわからない方向に突き進んでいくんだと思います。お客さんがゲラゲラ笑えるものになるかは、あまり保証できないんですけど(笑)、喜んでもらえたらいいなと思います。でも、そうならなかったとしても、それがナイロンのあり方だと思うんです。KERAさんと劇団員、客演陣にとって、後悔のない作り方ができればそれが一番かな」

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『イモンドの勝負』 11月20日(土)~12月12日(日) 下北沢・本多劇場 作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 出演/大倉孝二、みのすけ、犬山イヌコ、三宅弘城、峯村リエ、赤堀雅秋、山内圭哉、池谷のぶえほか 全席指定7600円ほか キューブ TEL:03・5485・2252(平日12:00~18:00) https://cubeinc.co.jp/ 兵庫、広島、北九州公演あり。

おおくら・こうじ 1974年7月18日生まれ、東京都出身。ナイロン100°C所属。最近の出演作にドラマ『コタローは1人暮らし』、舞台『マシーン日記』など。ドラマ『青天を衝け』(NHK)出演中。
シャツ¥25,300 パンツ¥18,700(共にサノバチーズ TEL:03・6427・1986) その他はスタイリスト私物

※『anan』2021年11月24日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・JOE(JOE TOKYO/TRAVOLTA) ヘア&メイク・山本絵里子 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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