AV女優や作家として活躍している紗倉まなさんが、新作小説『春、死なん』を発売しました。

老人、母親、妻、娘…。役割から解放されていく人々を描く純文学。

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「もともと話し下手なんです。お仕事を始めて書く機会が増えて、文章のほうが推敲して言葉を選べるので好きだな、と思いました」

AV女優として人気を博す一方、近年は作家として注目が集まる紗倉まなさん。新作小説『春、死なん』の表題作は70歳の富雄が主人公だ。

「私のイベントには年齢が上の方もいらっしゃるので、身近に感じていました。デジタル化が進んでアナログが排除されるなかで、そういう方たちはどう寂しさの補填をするんだろうとも気になっていました」

夫婦で田舎に隠居しようとしたが、息子の提案で建てた分離型の2世帯住宅に暮らす富雄。今は妻の喜美代を亡くし、家でアダルト雑誌を眺める日々。親は子供のそばにいるのが嬉しいはず、おじいちゃんには性欲なんてないはず…ありがちなイメージとは違う生身の人間がそこにいる。

「おじいちゃんだからこうあるべきとか、母親だからこうすべきといった役割に縛られて可動域が狭まっている人は多いと思うんです」

富雄の息子、賢治がリアルだ。孝行息子を演じ、周囲にも役割のイメージを押し付けている印象。ただ、たとえば善良な喜美代が生前、賢治の妻の里香に子作りについて心ない言葉を発し場を凍りつかせたことも。

「喜美代に悪気はなく、感覚の世代間ギャップだと思うんです。ただ、懸け橋になるべき賢治が橋を壊すデストロイヤーになっている(苦笑)。この家は一見幸せそうだけど、実は賢治の自己満足が詰まった、寂しい家ですよね」

終盤には富雄と里香が思いをぶつける場面があり、そこに一筋の光が。

「お互いに役割から解放されて、歩み寄る部分があればいいなと思って書いていきました」 

併録の「ははばなれ」は、還暦を迎える一人暮らしの母に、恋人がいると知った娘が主人公。

「10代からずっと考えてきた女性性について書こうと思いました。母と娘は姉妹のように仲のいい部分もあれば近すぎて反発し合う部分もある。その場合、娘のほうが思うことが多い気がするので、娘視点で書くことに。タイトルは娘が母から自立することと、母親が母親の役割から離れることの二重の意味があります」

誠実で切実な描写を堪能したい。

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紗倉まな『春、死なん』 妻を亡くして一人暮らす70歳の富雄は、2世帯住宅に住む息子とも疎遠。ある日、思わぬ再会があって……。表題作と「ははばなれ」を収録。講談社 1400円

さくら・まな 作家、AV女優。1993年生まれ。初小説『最低。』は映画化もされた。他の小説に『凹凸』、エッセイ集に『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』『働くおっぱい』など。

※『anan』2020年3月25日号より。写真・土佐麻理子(紗倉さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)

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