「撮影、すごく楽しかったです。普段は遠征ばかりでおしゃれをする時間もほとんどないので、新鮮な気分でした」
リラックスした様子で撮影の感想を語ってくれた、奥原希望選手。今年の世界選手権を制したバドミントン界の女王だ。もともと、奥原選手がこの競技を始めたのは、高校でバドミントン部の顧問をしていた父親の影響だったとか。
「小学生のあいだは父がコーチ代わり。私のために練習メニューを考えたり、出場した全試合をビデオに収めてくれたりしていました。反省点が多いのは、どうしても結果が出なかった試合なので、負けた時の映像は後で必ず見返すのですが、その時間がものすごく憂鬱だったのを覚えています。自分が負けた試合を見ても、ちっとも面白くないですから(笑)」
自分の好きなことに関しては、徹底的にのめり込む。それはバドミントン以外の分野でも同じ。
「勉強では数学が得意だったのですが、それだけは誰にも負けたくなくて。海外遠征で授業に出られないことがあっても、テストのために深夜まで猛勉強していました。気づいたら夜中の1時くらいになっていて『もう寝なきゃ』と焦るけれど、『もっともっと解きたい』と思う自分もいて。バドミントンでも、時間を忘れて練習してしまうので、コーチに止められることが多かったですね。私はただ負けたくないからやっていただけなので、それを“努力”と呼ぶのは少し違うと思うんです。とにかく、自分が納得いかないまま残しておくことが嫌なんだと思います」
奥原選手の持ち味といえば、コート内を縦横無尽に駆け回るフットワークの軽さ。身長156cmの小柄な体型ながら、長身の海外選手を粘り強いプレーで圧倒する。
「“身長が小さいから不利”とよく言われるのですが、私はそうではないと思います。バドミントンはラリーの配球や駆け引きが魅力の一つでもあるので、身長が高い、低いも含めて相手をどうやって崩していくかを考えることが大事。不利と思ったら先はありません」
そんな奥原選手が心から尊敬しているアスリート。それは、フィギュアスケート元日本代表選手の浅田真央さん。
「みんなの期待を一身に受けながら、最後まで自分が好きな競技と向き合って戦い続けたところに感銘を受けました。悔しい思いをしても何度も立ち上がって挑戦する姿勢に、アスリートとしての真の強さがあると思います。実際にお会いしたことはないのですが、どこからその強さが生まれてくるのか、もしお話しする機会があったらいろいろ聞いてみたいですね」
実はこれまで、膝の怪我に悩まされ続けている奥原選手。たくさんの挫折を味わいながらも、コートに立ち続ける強い精神力は浅田さんに通ずるものがある。
「ここまで来たら、私の中に“やめる”という選択肢はないんですよ。自分の目標も、もはや一人の目標ではないし、みんなの思いも背負って戦わないといけない。怪我を経験したことで、そういう自覚がどんどん出てきましたね。もちろん、目標は東京オリンピックの表彰台で『君が代』を皆さんと一緒に歌うこと。この夢が叶うまで、他の大会で優勝しても絶対に満足することはないと思います」
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