
原作者であり、アニメ『千年血戦篇』の総監修を務めた久保帯人先生、黒崎一護役の森田成一さん、朽木ルキア役の折笠富美子さんの鼎談が実現。レアな裏話も満載です。
── まずは、『BLEACH』という作品のテーマやタイトルが決まった経緯から教えてください。
久保 キャラクターから物語が生まれるように描いているので、そもそもテーマは設けないようにしていて。最初に描いたキャラクターが黒い学生服×鎌を持ったルキアだったので、“死神”の話にしようと思ったのが始まりでした。
森田 いつの段階で、武器が鎌から刀になったんですか?
久保 鎌ではありきたりだなと思い、次に拳銃にしたんです。その状態で『(週刊少年)ジャンプ』の季刊誌の読み切り作品として描くことになり、予告用にタイトルとキャラクターイラストだけ編集部に送って。その時のタイトルは「Snipe」だったのですが、ネーム(漫画の設計図)を描き始めたら、『ジョー・ブラックをよろしく』という、スーツ姿の死神が主人公の映画が公開されて…。すでにあるものでは面白くないと思い、衣装を和服に変更し、武器も拳銃ではなく刀にして。そうなるとタイトルも変える必要があり、2回目の予告からタイトルを「BLEACH」に変えたんです(笑)。
森田 ヤバっ! 初めて知りました。そこで和風なタイトルにしようとは思われなかったんですね。
久保 読み切り後は長い話を描くつもりではいたので、イメージを固定させないために、ぼんやりさせておきたくて。黒のイメージのある死神から逆説的に思い浮かべられるものということで、白を連想する単語がいいなと思い、"BLEACH"(漂白)にしました。
── タイトルはもちろん、設定や、“斬魄刀(ざんぱくとう)” “卍解(ばんかい)” などの武器や技もどれも斬新でクールですよね。
森田 卍解のすごいところは主人公だけではなく、他のキャラクターも使うという点。だからこそ、声優さん独自の「卍解」の言い方があって面白いんですよね。
折笠 ルキアが初めて卍解するのは『千年血戦篇』に入ってからで。「私はいつかな」とずっと思っていたところ、原作では、アニメが一区切りしていた期間に卍解したので、兄さま(朽木白哉/くちきびゃくや)役の置鮎龍太郎さんが「ルキア、卍解したね」と連絡をくださったり(笑)。私もついに卍解という台詞を言えて(第2クール・19話)、感慨深い思いです。(最終クール・42話で卍解した浦原喜助 [うらはらきすけ] 役の)三木(眞一郎)さんも感慨深いとお話しされていましたね。
森田 しそうでしないっていう、“卍解するする詐欺”があってね(笑)。その筆頭がルキアで。
久保 卍解は隊長クラスの奥義という設定のもと、ルキアはもともと隊長ではないので、なかなか卍解させるタイミングがなくて。
折笠 『千年血戦篇』が始まると、「楽しみ」という声も多く、プレッシャーも感じていました(笑)。
── ちなみに、久保先生が使ってみたいものや思い入れの強い卍解を挙げるとしたら?
久保 使いたいものはないですね。やっかいそうなので(笑)。ただ、名前を一番捏ねたのは京楽春水(きょうらくしゅんすい)の“花天狂骨枯松心中(かてんきょうこつからまつしんじゅう)”。ギリギリまでいくつか候補があり、ジャンプ連載時は1回、“黒松”で出てるんです。でも、やっぱり枯松のほうがいいなと思い、コミックスで変えました(笑)。
森田 枯松心中というお名前はいわゆる古典ものをイメージしてですか?
久保 そうですね。浄瑠璃とか。舞台上に引きずり込む能力なので、それにちなんだ名前にしたいなと思ったんですよね。
── 奥深いバックボーンを持つ魅力的なキャラクターが多いのも『BLEACH』が愛される理由ですが、20年以上、一護とルキアに向き合ってきたお二人は彼らの関係性をどう捉えていますか。
森田 相棒でも、友達でも、兄弟でもなく、もちろん恋人でもないし。友達が一番近いのかもしれませんが、どこかしっくりこない…。
折笠 わかります。心の距離を表す言葉がないというか。ソウルメイトというとチープになってしまいますし。久保先生が引いた運命の線にぶわーっと入ってきて、ものすごい展開でうわーって翻弄されているみたいな感じ(笑)。
森田 されまくったね。『BLEACH』に出てくる人物って、こいつは友達とか、一つに決められない人物が多いなと、演じる上で思っていて。一つの要素やイメージで語れないし、演じられない。ただ先ほど先生が「テーマを決めない」と仰っていたので、最後まで一護を掴み切れなかったことにも合点がいきました(笑)。
久保 どのキャラクターも作劇上の役割はありますが、役割以上の固定したものは作らないようにしているんです。新しく生まれたキャラクターとも関われるように。多くの人物と関わったほうがキャラクターの多面性が見えるし、特に一護は一番ほかのキャラクターと関わるので、誰よりも”面”が多い。結果、わかりにくさを感じるのだと思います。
森田 なるほどー!! 納得です。
久保 一護とルキアも役割でいうと、一護が物語の主人公で、ルキアは一護を別の世界に連れていく役目。なので、ピーター・パンとウェンディ、のび太とドラえもんのようなイメージなんですけど(笑)。そんな二人が出会うところから始まるので、相棒として描こうという意識はありました。
── 一護とルキアを演じてきた中で、試行錯誤されたシーンや成長を感じた場面はありますか? 森田 いつも試行錯誤ですよ。
折笠 私もそうですね。
森田 成長に関しても、一護は切れ目なく常に変化していたなと。
折笠 私は「尸魂界篇」で一護たちが助けに来てくれる時、ルキアはずっと一人で幽閉されているので、台詞はモノローグが多くて。
久保 掛け合いがないですよね。
折笠 そうなんです。スタジオにはみんなの声が近くにあるけど、私はひとり。しっかりルキアと向き合える時間を与えられたので、それ以降、自分的にもマインドが変わったんじゃないかなと。ルキアはもともと”軸”のあるキャラクターですが、「尸魂界篇」以降、心の強さが広がったような気がします。
久保 僕自身は何か変えようと意識して描いてはいないのですが、話が進み、関わる人物が増えていけば、キャラクターたちも自ずと変わっていく。その様を楽しめるのが長期連載作品の醍醐味でもあると思うんですよね。
── 『千年血戦篇』のアフレコは、ほぼすべて久保先生も立ち会われたそうですが、森田さん、折笠さんに求められたものというと?
久保 お二人の演技に注文をつけるところなんてなかったですよ。ただ、森田さんがめちゃくちゃ聞いてくるので、「森田さんがやるものが正解なので思うままにやってください」とお伝えしました。
森田 その言葉が一番怖い。何か裏があるんじゃないかと(笑)。
久保 森田さんは収録後、「もう一回やりたいです」と自ら仰り、録り直すことも多くて。それを僕や監督たちは「最初のほうがよかったね」なんて言いながら見ていたんですけど(笑)。
森田 最初のほうが新鮮でいいと思うんですが、こだわりたくなっちゃうんですよね。
折笠 その気持ちわかります。でも、鮮度が命(笑)。
久保 僕としては熱意を感じて嬉しかったですけどね。『千年血戦篇』はオリジナル要素も多く、特に一護は多いから大変だったかと。一人で延々と修行する場面とか。
森田 そこは原作にないので、どういう空間なのかわからず。「ここの空気は薄いんですか? 重力かかってるんですか?」と先生に確認しながら収録しましたね。
久保 汗だくになりながら演じてくれていたのも印象深いです。
── 最終クール「禍進譚」が絶賛放送中ですが、ファンの方々にメッセージをお願いします。
森田 久保先生をはじめ、キャスト、スタッフの皆さんが最高の知恵と思考と技術を結集させて作り上げた自信作なので「ぜひ見てください」という言葉しかないです。
折笠 私も同じ気持ちです。原作はもちろん、(前アニメの)『BLEACH』を見て育った人もキャストやスタッフとして参加していたり、本当に“BLEACH愛”に満ち満ちた作品になっていると思います。
久保 僕は、文字がわからない人が見ても楽しめる漫画が理想だなと思いながら描いているのですが、アニメの監督たちが「先生の漫画を読んだ時と同じ感覚になるようなものを作りたい」と仰っていて。実際、『BLEACH』を知らない状態で見ても楽しめる作品になっているので、ファンの方々はもちろん、知らない方にも見てもらえたら嬉しいです。
Profile
久保帯人
くぼ・たいと 1977年6月26日生まれ、広島県出身。'96年、漫画家デビュー。2001年、『週刊少年ジャンプ』にて「BLEACH」の連載がスタート。'05年、同作で「第50回小学館漫画賞」少年向け部門を受賞。ほか、代表作に『BURN THE WITCH』など。
折笠富美子
おりかさ・ふみこ 12月27日生まれ、東京都出身。出演作に『スイートプリキュア♪』(南野奏/キュアリズム)、『あたしンち』(立花みかん)など。
森田成一
もりた・まさかず 10月21日生まれ、東京都出身。主演作に『キングダム』(信)、『TIGER&BUNNY』(バーナビー・ブルックスJr. )などがある。
information

『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』
最終クール「禍進譚(かしんたん)」では、死神と滅却師の全面戦争がついに決着を迎える。一護たちは宿命の敵・ユーハバッハを討つことができるのか。テレ東系列ほかにて毎週土曜23時より放送中。
写真・内田紘倫(The VOICE/P.72~75) ヘア&メイク・KASUGAI BOTAN(M's hair&make-up/久保さん) 河口ナオ(森田さん) 木村ゆかこ(addmix B.G/折笠さん) 山中悠樹(éclat/杉山さん) 馬上えりか(フリンジ/松岡さん) 横島梨紗(安元さん) 畦上絵美(addmix B.G/伊藤さん) 取材、文・関川直子 Ⓒ久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ
anan 2508号(2026年8月19日発売)より

































