社会のじかん

なんと110年ぶり 法改正で「性犯罪厳罰化」も課題あり…

ライフスタイル
2017.08.23
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「性犯罪厳罰化」です。
社会のじかん (639×447)

今年、性犯罪に関する刑法改正案が可決され7月に施行されました。性犯罪の大幅な法改正は、明治の制定以来110年ぶりのことです。

内閣府の2014年の調査によると、異性から望まぬ性行為を強要された女性が警察に相談できた割合は約4.3%。これほど低い理由は、まず、相手が知人や家族など、身近な人の場合が70~75%で、告発するのが困難ということ。次に、「自分にも非があったのでは?」と思いとどまってしまうケース。第3に、行為に合意がなかったことを、証拠集めからすべて自分で立証しなければいけないという、高いハードルがあるからです。

今回の刑法改正により「非親告罪化」され、被害者以外の第三者でも起訴できるようになりました。また、男性被害者のケースも鑑み、強姦罪を「強制性交等罪」と名前を変更。刑の下限は、懲役3年以上から5年以上へと引き上げられました。

しかし、その服役の間に再教育プログラムが組まれているわけではありません。性犯罪の再犯率は6割といわれています。欧米では服役後はGPSをつけたり、州によっては去勢を課し、徹底した再犯防止対策を行っています。

今回、残念ながら改正されなかったのが「本人の立証が必須」という点です。冤罪を生む可能性もあるので慎重にと見送られてしまいました。

被害者が警察に訴える際、欧米では警官、医者、弁護士が一堂に会し、1回の説明ですませる配慮をしていますが、日本にはそれができる、被害者支援ワンストップセンターが各都道府県に1つしかありません。起訴のあとも、欧米は警察、検察官、裁判官が同席して一度話せばすむ司法システムを整えていますが、日本はまだまだなんです。

「魂の殺人」といわれる性犯罪。今回の改正は一歩前進ですが、まだ課題を積み残しています。もしもあなたが性暴力を受けたなら、「私にも非が」などと決して自分を責めないでください。どんな状況であれ、犯罪は犯したほうが悪い。一人で抱え込まずに、性暴力被害者支援ワンストップセンターや性暴力救援ダイヤルを使って、助けを求めてください。

堀潤
堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2017年8月30日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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