2015年、台北を舞台にした小説『流(りゅう)』で直木賞を受賞した東山彰良さん。同じく台北を舞台に綴った新作『僕が殺した人と僕を殺した人』についてお話を伺いました。

連続殺人鬼は誰かという謎の背後で描かれる絶対的な友情物語に涙する。

東山彰良

東山彰良さんは5歳まで台北で過ごし、両親とともに福岡に居を移したのは9歳のとき。東山さんにとっての原風景ともいえる台北の廣州街を舞台に『流』を描いたが、

「ここ数年、場所で遊ぶことを覚えたせいか、まだ書き足りなくて(笑)」

『僕が殺した人と僕を殺した人』でも、同じ街を舞台に選んだ。

「中心となる4人の少年たちは、僕の実年齢により近いので、自分が知っている当時の台北を描けると思ったんですね。1984年に13歳という設定なら、17歳だった『流』の主人公・秋生(チョウシェン)が抱いたような恋愛やアイデンティティといった悩みはまだ遠く、より男の子同士の友情の話に終始できると思いました。僕自身は、大好きな友達のために大それたことをした経験はありません。憧れながら手に入れられなかった友情のまぶしさを、物語の中で自分なりに体験してみたかったのかも」

だが、本書は、いわゆる友情物語というだけではくくれない。切なくて残酷で、それでも一筋の光が差すような重層的なドラマが待っている。

全米を震撼させていた〈サックマン〉と呼ばれる連続殺人鬼の弁護を引き受ける〈わたし〉は、30年前、台湾にいたころにサックマンを知っていた。現代のアメリカと30年前の台北、2つの時空を行き来しながら物語は進むが、犯人は4人のうち誰なのか、なかなか見えてこない。

「実は書き始めたとき、僕も犯人が誰なのかわかっていませんでした。4人全員にあった可能性が少しずつ狭まり、これしかないというところまで来たときに、『彼だったのか』と。前に戻って伏線などを加筆修正し、いまの形になりました。自分でも想像がつかなかったようなことが書けて初めて、読者へも驚きのある物語が届けられると思っています」

東山彰良

蒸し暑くて牛肉麺の匂いがそこら中で漂っていそうな廣州街の喧噪や、ケンカやいざこざが絶えない濃密な人間関係などが活写され、物語のリアリティを増幅させている。

「台湾を描写する上で大切にしているのは、民間信仰の厚さ。物語にもありましたが、大切な問題は神様に決めてもらうんです。信心深さとスマホ文化とが同居し、それが不思議ではないのが台湾の風土。そこをうまく物語に溶け込ませることができていたらうれしいですね」

ひがしやま・あきら 作家。1968年、台湾生まれ。2003年にデビュー。’09年、『路傍』で大藪春彦賞、’15年、『流』で直木賞、’16年、『罪の終わり』で中央公論文芸賞受賞。著書多数。

ユン、ジェイ、アガンとダーダーの兄弟。みな問題ある家庭に育ちながら友情を育んでいた4人だが、ある計画がとんでもない結果を招き…。文藝春秋 1600円

※『anan』2017年7月5日号より。写真・土佐麻理子(東山さん) 小川朋央(本) インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)


【人気記事】
本当に細くなる!? 噂の「脚パカ」で簡単エクササイズ!


【彼女気取りかよ…】男が友達に晒した「ドン引き女子LINE」3つ
小食でも水ぶとりぽっちゃりに悩む女子への生活習慣アドバイス(PR)


【男子戦慄!女のムダ毛…】モテ女必見「脱毛サロン」の選び方4つ - Sponsored

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line

Today's Koyomi

今日の暦
2026.4.
25
SAT
  • 六曜

    ⼤安

  • 選日

    ⺟倉⽇

周りの空気に流されて、⼼にもないお付き合いをしていませんか。今は⾃分を安売りしたり、⽬先の得にこだわったりするのは禁物です。違和感を無視しないようにして、⼼の中の⽢えを潔く⼿放すことで状況は晴れ上がってくるでしょう。⾃尊⼼を持ち、誠実さを軸に据えることで、本当に守るべき⼤切な絆が⾒えてくるはずです。

エンタメ

Recommend

こちらの記事もおすすめ

Today's Update
【web限定】和山やま『ファミレス行こ。』ロングインタビュー! 聡実と狂児の“その後”を描いた続編が完結
【web限定】和山やま『ファミレス行こ。』ロングインタビュー! 聡実と狂児の“その後”を描いた続編が完結
Entertainment
Today's Update
画家・伊藤若冲の傑作40点が集結。福田美術館「若冲にトリハダ! 野菜もウリ!」
画家・伊藤若冲の傑作40点が集結。福田美術館「若冲にトリハダ! 野菜もウリ!」
Entertainment
思い続けて時空を超える、 イケメン吸血鬼と老婦人の純愛。漫画『ザハの恋』
思い続けて時空を超える、 イケメン吸血鬼と老婦人の純愛。漫画『ザハの恋』
Entertainment
【From Editors】ジュニア王・第7弾のテーマは“開拓王”。KEY TO LIT・猪狩蒼弥さん、B&ZAI・本髙克樹さん、西村拓哉さんが登場!
【From Editors】ジュニア王・第7弾のテーマは“開拓王”。KEY TO LIT・猪狩蒼弥さん、B&ZAI・本髙克樹さん、西村拓哉さんが登場!
Entertainment

Movie

ムービー

Regulars

連載