
Werkstattschau: Dafi Kühne(ダフィ・クーネ:ワークショップショー)/Gewerbemuseum Winterthur, Switzerland(ヴィンタートゥール工芸博物館)/展覧会ポスター/2024
現在、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで展覧会「ダフィ・クーネ:ポスターを構築する ―形をつくる、版をつくる、表現をつくる―」が開催中。会期は8月26日まで。グラフィックデザイナー、そして活版印刷職人のダフィ・クーネが生み出す、鮮やかな色彩と独創的な発想が光るポスター作品から、その情熱の秘密に迫る。
一枚一枚に宿る、職人の息づかい
デザインをし、活字を組んだり、リノリウムを彫ったりして版を作り、色を重ねたポスターはインキの匂いや手触りまで感じられるよう。本展ではグラフィックデザイナーで活版印刷職人のダフィ・クーネの作品を取り上げる。
活版印刷は15世紀にドイツでグーテンベルクが技術を確立して以来、1970年代頃まで世界で商業的な大量印刷を担ってきた。柱状の金属に文字を浮き彫りにした「活字」を組んで版を作り、インキを載せて紙にプレスする。およそ600年続いてきたシンプルな工程に新風を吹き込み挑戦を続ける存在がクーネだ。
スイス・アルプスの麓にあるスタジオには総重量40tの活版印刷機や活字など印刷に欠かせないさまざまなものが設置され、版を組む上でのパーツ作りから印刷機を使って刷るところまで一貫して行われている。クーネの言葉で言うと、一枚たりとも「PDFが最終成果物としてスタジオの外に出ることはない」。
「今の時代に活版印刷の全プロセスを一人で行うクリエイティブ魂。こんな人はほかにいない、ぜひ紹介したいと思いました」とキュレーションを担当する尾澤あずささん。本展のためにポスターを制作する際も、日本語は樹脂で凸版を自作し、モチーフとなる形に「メカノパーツ」というヴィンテージのモジュール式組み立て玩具を使うなど、表現を広げようとするデザイナーかつ職人としての姿が垣間見られたという。
もう一つ、クーネのポスターを特別にしているのは際立った発色、特にグラデーションの美しさ。
「“グラデーションの魔術師”と勝手に呼んでいます。いま主流のオフセット印刷の場合、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の掛け合わせで、理論上は何億色も作れるとされています。活版の場合は印刷機のローラーに載せたインキの色がそのまま印刷される。グラデーションの調子を100%コントロールすることは不可能です。クーネ氏独自のフォーミュラはあるでしょうけれど、それはまさにフィジカルな経験から作り上げられたもの」
一枚の紙の上に形や色を構築するため、さまざまな素材や道具が用いられている。会場では制作のプロセスを記録した映像や実際に使われた版の展示も。インキの匂いや印刷の質感、それらを捉えようとさまざまな感覚が立ち上がってくるとき、一枚一枚の刷りを通し、何かを掴もうとする情熱の温度もまた伝わってくるかもしれない。

Photography by Peter Hauser
information
ダフィ・クーネ:ポスターを構築する ―形をつくる、版をつくる、表現をつくる―
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F・B1 開催中~8月26日(水)11時~19時 日・祝日休 入場無料 TEL. 03-3571-5206
anan 2504号(2026年7月15日発売)より



































