そもそも…便って、どうやってできるの? 何でできてるの?
食べたものが食道と胃、腸を通り、肛門から出てきたものが便。“便=食べかす”と考える人も多いが、正確にはそうではない。
「実は便の半分程度が水分で、残りの3分の1が腸内細菌の死骸、3分の1が古くなって剥がれ落ちた腸粘膜の細胞、そして最後の3分の1が食物残骸。食べかすはほんの5~10%程度にすぎません。大便は“大きな便り”と書くだけあって、体にまつわるさまざまな情報をたくさん教えてくれる存在なんです」(医師・石井洋介先生)
毎日の習慣で、これからに備えよう。「観便」で、不調サインを見逃さない!
便は体の中のさまざまな情報を伝えてくれる貴重な存在。色や形、硬さ、匂いなどには、体からのさまざまなシグナルが表れているといいます。
「イカスミパスタを食べた翌日の便がいつもより黒かったり、また、食物繊維をたくさん摂った次の日は、いつもより便の量が多かったり。便には日々の食生活の影響が色濃く出るものです」
と語るのは、消化器外科が専門の石井洋介先生。食生活以外にも、腸など消化器官の病気のヒントが最初に現れるのが便だそう。
「食べ物を食べる口から、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、そして肛門。便はそれらすべてを通り出てくるので、例えば胃から出血がある、腸のどこかにポリープができた、といったことによる何かしらのサインが“いつもと違う便”となって出てきます。しかし、日々自分の便の様子をチェックしている人はあまりいませんから、せっかく便が異変を知らせてくれても、見逃す人が多いです」
そのサインをキャッチするためにしたいのが、「観便」。字のごとく、便の観察、です。
「自分のいつもの便=『平便』が大体どういうものかを知っていれば、“あれ、今日はなんか違うかも?”と変化に気がつくことができます。便は食べ物の影響を受けやすいので、前の日に食べたものによって、“今日は黒いな”“今日は硬いな”といったことはよくありますし、飲み会続きのためにお腹がゆるくなっているのかも…といったことに気がつくこともあります。でも一方で、例えば黒い便が何日も続いたり、便が以前より細くなった、あるいは全部出しきれていない感じが続いている…ということがあった場合、消化器系の病気であることもゼロではありません。また、便に血が混じっているときは、大体の人が“痔かな?”と思うものですが、消化器のどこかから出血している可能性もあるんです。日々便を観察する習慣がついている人は、そういったことにいち早く気がつけるともいえます」
消化器系の病気は、若い世代でも少なくはない、と石井先生。
「病気の早期発見はもちろん、日々の自分の体を知るためにも、ぜひ便を見る『観便』の習慣を身につけてください!」
実際に「観便」してみよう!
石井先生によると「観便」は医学用語なのだそう。まずは2週間観察をして、自分の“いつもの便”を知ることからスタート。
「気をつけたいのは、いつもと違う便が続くときです。普段から便が細い人は、その細さを心配する必要はないのですが、突然細くなり、それが続いている、というときには、ちょっと注意をしたほうがいい。逆に1日細かったけれど、それ以降はいつもどおりに戻ったということであれば、それほど心配はありません」
「観便」記録のつけ方。
・まずは2週間、ログをとってみる。
・軟らかさ(番号)と、色を記録。
・食生活も一緒にメモしておく。
用を足した後、チラッとでいいので、便の状態を目で確認。触ったり、匂いを嗅ぐ必要はなし。「ブリストルスケール」の当てはまる番号と色の記録を2週間続けると、自分の平便が見えてきます。
【CHECK POINT 1】便の形と軟らかさを観察!
形状から、腸の状態がある程度予測できる。
便の状態を観察するための目安になるのが、「ブリストルスケール」。1997年に英国の大学で発表され、医療現場でも広く使われている。「形や硬さは7タイプに分別されており、3~5の範囲が正常な便で、9割方の人の便がこの範囲に収まるといわれています」(石井先生)
【TYPE1】コロコロ便
硬くてコロコロの、ウサギの糞のような便。水分不足が原因といわれている。
【TYPE2】硬い便
ソーセージ状ではあるが硬い便。こちらも水分不足が原因のことが多い。
【TYPE3】やや硬い便
表面にひび割れがある、ソーセージ状の便。水分不足ではあるが、正常の範囲。
【TYPE4】普通便
表面がなめらかで軟らかいソーセージ状。またはヘビのようなとぐろ状態。
【TYPE5】やや軟らかい便
はっきりとしたシワのある、軟らかい半固形状の便。水分が多く含まれている。
【TYPE6】泥状便
境界がほぐれていて、ふにゃふにゃで不定形の便。文字のごとく泥のよう。
【TYPE7】水様便
水っぽく、固形物があまり含まれていない液体状の便。ほとんど水のことも。
【CHECK POINT 2】茶、黒、赤、緑、白…便の色を観察!
食べ物の影響もあれば、病気のことも?
同じ黒い便でも、イカスミを食べたからという場合もあれば、胃から出血がありその血に胃酸が反応して便が黒くなることも。「食べ物の色が影響している場合、1~2日で元の茶色に戻りますが、病気の場合はそれが何日も続きます。継続性があるかどうかを見ることが重要」
いしい・ようすけ 消化器外科医、日本うんこ学会会長。19歳で潰瘍性大腸炎により大腸全摘手術を受けたことで医師を志す。医療やアプリなどを通し観便の大切さをPR。著書に『便を見る力』(イースト・プレス)が。
※『anan』2024年7月31日号より。イラスト・カメダ
(by anan編集部)