肩こりや首の痛みの鍵は実は頸長筋にあり!
スポーツドクターの金岡恒治さんによると、肩こりと呼ばれる症状のほとんどは、首や筋肉の誤った使い方に起因するという。鍵を握るのは、頸椎(背骨の首の部分)を深部で支える「頸長筋」。
「私たちは約5kgの重い頭を頸椎だけで支えています。そして多くの人は、頸椎の負担を軽くする役目を持つ頸長筋を使えていません。さらにスマホやパソコンの多用で長時間頭を下に傾けることで頸椎に大きな負担がかかり、骨と骨をつなぐ椎間関節が損傷されてしまう。その傷めた関節を守るため周囲の僧帽筋や肩甲挙筋がこわばり、首や肩がさらに正しく動かせなくなる悪循環に。これが慢性的な肩こりを引き起こします」
頸長筋の機能不全や姿勢の悪さは肩甲骨を支える菱形筋にも悪影響を及ぼし、それも肩こりの原因に。こうした痛みやコリは、日常的に頸長筋を働かせれば改善へ。
「頸長筋を機能させる方法は簡単です。あごを引いてから首を動かす。これを徹底してください。首や筋肉を正しく使えるようになると、頸椎の椎間関節や僧帽筋の負担が減り、肩甲骨の動きもスムーズになって肩こりはラクになるでしょう。あごを引く意識づけから始めてみましょう」
【頸椎・椎間関節】
頸椎は7つの椎骨が積み重なって構成され、可動域は広いが構造は繊細。骨と骨は椎間板と呼ばれる軟骨組織と椎間関節でつながっている。椎間関節は軽度の損傷や炎症なら、頸長筋を正しく働かせることで回復可能。
【頸長筋】
頸椎の前面に直接付着している深部筋。首を前後左右に動かす時も、ひねる時も、頸椎に寄り添って動く。重い頭を支える首がぐらつかずなめらかに動かせるのは、頸長筋が頸椎の骨をひとつひとつ支えているから。
こんな姿勢になってない?
スマホを見る時は「猫背」に、パソコン作業の時は首を前に突き出す「カメ首」になりがち。これらの姿勢を続けると僧帽筋などが緊張状態となり頸椎を傷めたり肩が凝る原因に。あごを引き、姿勢を正すことを意識しよう。
【CHECK】頸長筋、使えてる?
頸椎の可動域からあなたが頸長筋を使えているかどうかチェックしよう。
- 背筋を伸ばし、骨盤を少し前に倒して座る。
- 首が痛まない最大限まで頭を後ろに倒し、視線を上に向ける。
- 右を向いて斜め上を見る。
- 左を向いて斜め上を見る。
→頭を傾けた側の椎間関節で微細な損傷が生じていると痛みや引っかかりを感じる。
□痛みを感じる
□引っかかりを感じる
□シャリシャリ音がする
1つでも当てはまる人は要注意! 頸長筋を使えておらず、椎間関節が損傷しているかも。
頸長筋 基本
まずは頸長筋の動きを感じる基本動作から! 水平あご引きは毎日、前曲げ・後ろ反りは時間のある時にチャレンジ。
【水平あご引き】頸長筋の動きを感じる基本動作(3回)。
あごを引いた状態なら頸長筋は働く。あごを水平に動かしながら正しい位置を覚えよう。
基本姿勢
背筋を伸ばして肩の力を抜き、まっすぐ前を見る。
- 基本姿勢からあごを水平に前に突き出す。
- 肩の位置を変えず、あごと頭部を水平に後退させる。
【NG】頭部が前に傾くと頸長筋が働かない。視線はまっすぐを意識。
【前曲げ・後ろ反り】あご引き姿勢を保ったまま、頭を支えるトレーニング(各3回)。
頸長筋を使って首を動かす感覚を覚えよう。首の骨全体をしなやかに動かすイメージで。
前曲げ
- 自然に顔を前に向ける。
- あごを水平に引く。
- あごを引いた状態で頭を下に向けていく。
- ゆっくり頭を限界まで下げていく。首に負担がないよう、ゆっくり頭を戻す。
後ろ反り
- 自然に顔を前に向ける。
- あごを水平に引く。
- あごを引いた状態で頭を後ろに倒していく。
- いけるところまでゆっくり頭を倒す。首に負担がないよう、ゆっくり戻す。
金岡恒治さん スポーツドクター。早稲田大学でスポーツ医学の教育と研究に携わる。腰痛治療研究の第一人者で、シドニーやアテネ、北京五輪の水泳チームドクターも務めた。著書に『首・肩・腕の痛み・しびれ 自力で克服! 名医が教える最新1分ほぐし大全』(文響社)など。Spine Conditioning Stationにてセカンドオピニオン外来実施中。
ブラトップ¥12,100 レギンス¥16,500(共にヴオリ/ナージー/ジュンカスタマーセンター TEL:0120・298・133)
※『anan』2024年4月10日号より。写真・中島慶子 スタイリスト・白男川清美 ヘア&メイク・浜田あゆみ モデル・横川莉那 イラスト・松橋てくてく 取材、文・熊坂麻美
(by anan編集部)