大島育宙「『ラヴィット!』がもはやお笑いの本道に」 無限まやかしがバラエティのトレンドを分析

2022.12.29
ポッドキャストで人気を集める考察系ユニット・無限まやかしに、バラエティのトレンドについて話を聞きました。
Entame

大島育宙(写真左):『ラヴィット!』がもはやお笑いの本道になっちゃいましたね。最初は視聴者も慣れなくて不安だったけど、続けていたら市民権を得た。

高野水登(右):出演者もだいぶ若いですよ。

大島:そう。関西のお笑い番組がまだ全国区では知名度のない若手芸人をひな壇にじゃんじゃん出すっていうノリが実現できてる。川島(明)さんが出演者全員を知ってるから。

高野:菩薩のように手を広げて…。

大島:瞬発的なブームで売れた若手は再ブレイクまでが長いけど、いわゆる「第七世代ブーム」が落ち着いてからもそこから出てきた若手たちに、ちゃんと場所を作ってる。その役割は大きいと思うな。

高野:『M‐1グランプリ』をはじめ、賞レースも年々過熱していきますね。

大島:ここ2年くらいで『M‐1』と付いたコンテンツが熱狂的に支持されるようになり、芸人が予選選出や敗退の動画を公開することが増えた。それ自体はドキュメンタリーでネタではないし、芸人が裏側を見せすぎていないかとも思っていて。いつかこの時代を振り返って「何か違ったよね」となるかもしれない。ある種パンデミックのような状況がどこまで続くんだろうと興味深いです。

高野:僕はライトユーザーなので、『キングオブコント』も『R‐1グランプリ』もちゃんと全部見てますよ。

大島:もちろんいい側面もたくさんあります。注目度が毎年高まるぶん「決勝に行ったけど意味がなかった」はなくなっているはず。予選動画がYouTubeに上がるから、決勝までの期間にライブの動員も増えるし、仕事も入る。頑張って結果を出せば、福利厚生があるというか。

高野:バラエティはコンプライアンスに縛られがちですよね。BPOが話題になるし、時代的な制約もある。

大島:『ロンドンハーツ』が、「キモイけど面白い芸人」っていう企画をやってたけど、ここまで愛のあるタイトル付けられたら全然いいって思っちゃいました(笑)。プロデューサーの加地(倫三)さんが「うちはこれでやる!」って腹を括ってるんだと思うけど、やっぱり芸人ファーストな番組だなって。カカロニの栗谷さんやモグライダーのともしげさんのことも激推ししてて、狩野英孝さんをスターに押し上げた時よりも、さらに泥くさくなってる気が。テレビの熱を感じましたね。

高野:若手の芽というところで言うと、フジテレビの「水曜NEXT!」枠で『ここにタイトルを入力』という番組を作ったディレクターの原田和実さんに注目してます。まだ入社3年目とフレッシュな方ですが、構成がものすごく面白い。企画も出演者も毎回変わるんですが、第1回は「バイきんぐ小峠の今夜もグダグダ気分」という収録済みのVTRに合わせて小峠さんがMCをするという奇天烈な内容。あれはヤバかった。

大島:テレビ朝日の小山テリハさんにも注目しています。2016年入社で、「バラバラ大作戦」立ち上げ時に『あのちゃんねる』を作った方。いま手掛けている『イワクラと吉住の番組』は、二人が静かに話してるだけなのに、なんかいい。3時のヒロインの福田麻貴さん、Aマッソの加納さん、ラランドのサーヤさんが出演する『トゲトゲTV』のように、ロケや大喜利でゴリゴリのお笑いを見せる芸人もいれば、吉住さんとイワクラさんみたいに従来の深夜番組とは違う刺激の笑いを作る芸人もいる。今こういう番組作りができる小山さんはすごいなと思いますね。

原田和実さん

予定不調和な笑いを生む、期待のルーキー。

Entame

2020年フジテレビ入社。『ネプリーグ』のAD を経て『ここにタイトルを入力』を手がけた。『内村と相棒』では内村光良が番組で持っている数々の“棒”に注目した。

『イワクラと吉住の番組』

決め込んだエピソードがないから面白い。

Entame

蛙亭イワクラとピン芸人の吉住の持ち味を活かした、気負わないトーク番組。ゲストやSNSの悩みにそっと寄り添う。テレビ朝日で火曜26時16分から放送中。

無限まやかし お笑いコンビ「XXCLUB」の大島育宙(左)と脚本家・高野水登(右)によるユニット。映画やドラマ、漫画、小説などのフィクション=まやかしを無限に食べ、感想や考察を無限に話す。SpotifyとYouTubeチャンネルで「無限まやかし」配信中。

※『anan』2022年12月28日‐2023年1月4日合併号より。写真・五十嵐一晴 ヘア&メイク・松橋亜紀 取材、文・飯田ネオ

(by anan編集部)