――オファーがあった時の心境は?
木村多江:同世代で今、活躍なさっている阿佐ヶ谷姉妹さんを演じることに不安になったんですが、原作のエッセイを読ませていただいて、優しく、のほほんとした気持ちになれる作品をお届けしたいと思いました。
安藤玉恵:私は多江さんとは違って、プレッシャーはゼロだったんです(笑)。面白い作品になるという直感が当たって、だいぶのびのびと、楽しく撮影させてもらっています。
――ネタもやるとか?
木村:はい。ずっと練習しているんですけど、0.1秒の間で面白さが変わる難しさを実感しています。玉ちゃんは、阿佐ヶ谷姉妹さんにお会いした時「ネタをやろう」ってとんでもないことを言いだして(笑)。
安藤:お二人の前でやっておけば、怖いモノがなくなるかなと(笑)。
――役作りでどんなことを?
木村:いろいろ試して、江里子さん感が出る魔法のメガネに出合えたおかげで、ビジュアルは近づけましたね。あと髪型は、実際の江里子さんより少し長めに、今くらいだと似るんだなって発見しました。
安藤:髪型は私も、美容室で10枚くらい写真を並べて、どれがいちばん私がやった時に美穂さんに見えるのか検証しました。ポイントは前髪で、サイドを丸く切ると美穂さんらしくなるんです。
木村:それと、江里子さんは実際にお会いした時も早口で、ちょこちょこ動いていたので、演技に取り入れています。
安藤:私のほうが早口で動きもちゃきちゃきしてるんで、江里子さんに近いですね。普段の多江さんは、おっとりしていてエレガント。美穂さんは、じっくり考えてお話しされるので、返答する時の間が独特なんです。そこやちょっと猫背なところを取り入れています。
木村:なんだか普通に喋っていてもおかしい感じを出せたらいいなって。
安藤:お二人の独特の空気感が伝わるといいですよね。
――阿佐ヶ谷姉妹にお会いになって感じたことは?
木村:美穂さんがぼそっと言うことを江里子さんがちゃんと拾って温かく包んでいるのが素敵でした。今の時代、色々ありますけど優しさや思いやりとか日常のささやかな幸せを体現して支え合うお二人が羨ましい。
安藤:たくさんの人と繋がらなくても、一生一緒にいられる人がひとりいれば十分心強いし、温かな気持ちになれますよね。
木村:今の私は、玉ちゃんが現場にいないと不安になっちゃう。阿佐ヶ谷ロケ以外は名古屋で撮影していて、ホテルの朝食だとか、日常の何でもないことをLINEし合って共有できるこの距離がすごく幸せ。
安藤:私はホテルの朝食はすべて食しましたから!
木村:玉ちゃんは食べるのが好きだもんね。野性的で、自由にしていて、すごく魅力的なので、私はのびのびさせてあげたい(笑)。演技でも自由に仕掛けてくるよね? アドリブにどんどんツッコんでいかなきゃいけないから、日々、訓練です(笑)。
安藤:多江さんに助けられています。私、ふじきみつ彦さんの脚本から、なんていうか挑戦状をいただいたと勝手に感じているところがあって。びっくりさせたいというか。
――お二人の関係性も素敵で、阿佐ヶ谷姉妹のように暮らしを共にしても上手くいきそうですね。
木村:食の好みも合いますしね。
安藤:食べる量と回数が多い私が圧倒的に食費を使いそうだけど(笑)。あの~、お酒は飲んでも…?
木村:飲みたいだけ飲んで!
安藤:よかった!
よるドラ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』 同名原作エッセイをドラマ化。脚本は、阿佐ヶ谷姉妹と親交の深い、ふじきみつ彦。ピンクのドレス姿がそっくりと話題で、阿佐ヶ谷ロケで本人と間違われたというのも納得。NHK総合にて、毎週月曜22:45~放送中。
写真右・きむら・たえ 1971年生まれ、東京都出身。映画『ぐるりのこと。』で第32回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。映画『あなたの番です 劇場版』が12月10日、『前科者』が来年1月公開予定。
写真左・あんどう・たまえ 1976年生まれ、東京都出身。近作にドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』、映画『犬部!』など。来年3月舞台『命、ギガ長スW(ダブル)』出演予定。
※『anan』2021年11月17日号より。写真・小笠原真紀 取材、文・小泉咲子
(by anan編集部)