2018年、当時15歳だったグレタさんは、気候変動に対して何もしない政府に抗議するために、毎週金日にひとりでスウェーデン議会前に座り込みを始めたのね。それがSNSで一気に拡散され、世界中の若い人たちの心を動かすことに。ここでポイントは「若い人」ってことよ。それまで「あたしには関係ないも~ん」と思ってた若い世代が、グレタさんの活動から「やば。これってあたしらの将来かかってんじゃん!」と覚醒したわけよ。そのムーブメントの大きさは、報道されてもいるし、本作の中でも映されます。で、国連での名言「How dare you!」よ。世界中のリーダーが集まる中、物怖じせずに「なにしてくれちゃってんの!」と怒ったんだもの。そりゃ、多くの大人たちは「子供が首を突っ込むことじゃない!」と怒ったけど、それ違うのよね。子供だから怒ってるってことを知ってほしいから、敢えての本音を言ったまで。だって、世の中ぶっ壊しておいて「あとはよろしく~」って、全てをなすりつけて定時で帰るダメ上司みたいなもんじゃない?
あの問題提起があったからこそ、地球温暖化問題はそれ以降のニュース・トピックのトップになり、若い人たちのみならず、大人の意識も変わっていったわけですよ。それをたった一人の少女がきっかけ作りしたのがエポックであり、彼女自身の苦しみになっていったのよね。だってこのSNS時代、一度注目を浴びたら、徹底的に称賛と批判にさらされるんだもの。この作品で重きを置かれているのは、その重圧に向かい合っているグレタさんね。特におもしろいのが、彼女がそこまで注目を集める前から密着していたおかげで、彼女のビフォーアフターがはっきりと分かることね。彼女はアスペルガー症候群ということを公言しているじゃない。その症状に向き合いながら、自分の姿勢は全く変わらないの。変わったのは、彼女を取り巻く環境と、それに対応しなきゃいけなくなった忙しさ。彼女に関する噂で一番多いのは「彼女は大人に操られている」ってことだけど、それも全部デマだってことが明らかなのよね。自分の考えをはっきり言える子だっただけじゃなく、それを支えてくれる家族がいたから成立してたっていうことがはっきりと描かれているわよ。全力でサポートする気で観てちょ!
『グレタ ひとりぼっちの挑戦』 監督・脚本/ネイサン・グロスマン 出演/グレタ・トゥーンベリ、スヴェンテ・トゥーンベリ、エマニュエル・マクロンほか 配給/アンプラグド 10月22日より新宿ピカデリーほか全国順次公開。©2020 B‐Reel Films AB, All rights reserved.
※『anan』2021年10月27日号より。文・よしひろまさみち
(by anan編集部)