ときめき不足の人は読むべし! いくえみ綾の新作はアラフォー女性漫画家の恋

2021.4.22
『日々是(ひびこれ)ファブ郎(ろう)』というヒット作は持っているが恋愛には縁がなく、胸キュンな少女漫画を描きたいという夢は遠のくばかり…。いくえみ綾さんの『ローズ ローズィ ローズフル バッド』の主人公は、そんな40歳の女性漫画家・神原薔子(しょうこ)こと神原正子。これといった不満はないけれど、「ときめきが足りない」「毎日が燃焼不足」と感じている女性たちに、ずーんと刺さるストーリーだ。
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「なんとなくノリで40という年齢にしてしまったんですが、もう少し上でもよかったかなと思っています。ただ、アラフォーで漫画家を生業にしているようなキャラであれば、生活や生き方についてのちょっとぼんやりした甘い考えもまだ許されるかなという気持ちもありましたね。そのあたりは彼女の個性なので見逃してください」

変化のファーストステップは、正子と19歳の鷹野廉(れん)との出会いだ。エンガディナーというお菓子をきっかけに交わした会話で、一瞬だけときめきを思い出した正子だったが、すぐ忘れてしまうあっさり感もリアルで、共感ポイントかも。

「自分も食べることや飲むことが好きなので、それに鈍感だったり正直だったりの愛すべき面…愛されるといいのですけれど…をプラスしてちょっと変な人にしてみました」

また本作では、〈ファブ郎〉という作中作のキャラクターがナレーター兼ツッコミを入れる係として存在している。それによって読者は、正子の恋や悩みをある種の第三者的な視線からも知ることになる。

「モノローグや描写にないところも説明できて便利な上に、読者さんにもわかりやすく伝わると思うので、やってみたかった手法でした。ファブ郎の造形は、『こんな小さいキャラだし、いちいち服描くのめんどいな、裸でいんじゃね? なら相撲じゃね?』みたいな思考だったかと。ひどいですね!(笑)」

1巻では、これから正子の恋路を複雑にしそうな人物が続々登場。ドラマ制作会社で働く廉の父・鷹野怜は正子に興味津々。正子の初の女性担当・堂垣や、廉と仲のいい女友達の存在も、ひと波乱起きそうな予感がある。さらにそれは正子の仕事の展開とも関わっていきそうで、ハラハラどきどきしっぱなしだ。

「正子は人より遅れているところがあるけれどゆっくり成長すればいいなと思っています。が、正直、成長しなくてもいいのかもなとも思っています。正子は何やっても割と勝手に動いてくれるので、描いていてとても楽しいです」

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『ローズ ローズィローズフル バッド』1 本作で描かれる魅力的ないくえみ男子は、オトナな鷹野怜と爽やか大学生の廉という父子対決。正子のみならず、読者も翻弄されそう。『クッキー』で連載中。集英社 660円 ©いくえみ綾/集英社

いくえみ・りょう 北海道出身。著書多数。集英社『ココハナ』で「1日2回」、小学館『月刊!スピリッツ』で「おやすみカラスまた来てね。」を連載中。

※『anan』2021年4月28日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)