おうちごはんが楽しみになる、器使いのちょっとしたコツ。
日々のごはんの延長に素敵な器を加えよう。
器にこだわるのはハードルが高く、料理が得意な人ができる楽しみというイメージがあるかもしれない。しかし最近は、作家ものの器でも比較的買い求めやすく、デザインや使い勝手も親しみやすいものが増えている。
「器を選ぶとき、まず大切にしたいのはサイズ感。普段よく食べるメニューや自分の適量をイメージして、この器にはこの料理をのせたいと具体的に思い浮かべて選ぶのが、使える器を選ぶコツです。洋食が多いか和食が多いかでセレクトも多少変わってきますが、最初はどちらにも使えるような、シンプルで飽きのこないものがおすすめです」(UTSUWA KESHIKI店主・安野久美子さん)
器選びのハードルを高くするもうひとつの理由が、揃えなければというプレッシャー。茶碗、汁椀、大皿、中皿、小皿……など、用途別に器をひと通り揃えようとすると、たとえ1人分でも結構な量になってしまう。
「ひとつでいろんな使い方ができる器があれば、少ない数でも大丈夫。食事は生活に欠かせないからこそ楽しみが多いほうがいい。日々使う器をちょっとこだわるだけで、満足度が変わってきますよ」
器使いの3つのアドバイス。
○○用にこだわらない。
飯碗、パスタ皿、サラダボウルなど、用途をイメージしやすいような名前がつけられていることが多いが、それにとらわれると役割を狭めてしまう。「呼称は便宜上のものと考えて、“◯◯用の皿”と決めつけないのが上手に使い回すコツです。使い方のバリエーションが思い浮かぶものを選びましょう」
アクセントカラーを大切に。
器の組み合わせは難しそうに思えてしまうが、色使いに関しては洋服を選ぶのと同じ感覚でOK。「基本的には好きな色を集めて構いませんが、たとえば黒一色だったらポイントで鮮やかな色を差し込んでみると、食卓に変化が出ます。白っぽい料理には濃い色の皿を使うなど、料理が映える色にするのも大切」
盛り付けは2割の余白を意識。
素敵な器を使うのであれば、盛り付けまでこだわりたいもの。「盛り付けがうまく決まらない原因の多くは、盛りすぎ。器のサイズに対して控えめに盛り付けて、余白を2割ほどとるとバランスがよく、美しく見えます。その点、リム(縁)があるお皿は、自然と余白が生まれるので初心者におすすめです」
手始めに集めたい7つの神器
いろんな用途を兼ねられて、組み合わせも自由自在な器を安野さんが紹介。まずはこの7種類さえあれば大丈夫。使い方のポイントも指南します。
【A】八寸皿(約24cm)
いろんな料理を盛り付けるワンプレートとして活躍。
一般的に大皿と呼ばれるのは八寸以上だが、最初の一枚として使いやすい大皿は、フラットな八寸皿。「洋食の定番であるハンバーグやオムライスを盛り付けたり、一皿におかずやご飯などさまざまな料理を盛り付ける、ワンプレートごはんに便利。写真のようなリムや装飾があるタイプは料理が映えます」。人が来たときは、大皿料理用にも使える。
八寸皿(6000円)はしもとさちえ/Instagram ID sachie_hashimoto
【B】蕎麦猪口
ほどよいサイズ感がポイント、何にでも使える万能選手。
名前にとらわれてしまうと、もったいない器の代表格。「猪口というのは本来、何にでも使える小さな器のことなので、ぜひフリーカップ感覚で使ってほしいです。たとえばスープやみそ汁のような汁物にもいいですし、ヨーグルトやフルーツ、デザートを盛り付けても。コーヒーやお茶など飲み物にもちょうどよいサイズ感。小鉢にしても素敵ですよ」
蕎麦猪口(2700円)増田哲士/Instagram ID stsmsd
【C】小さいボウル
ご飯、スープ、サラダなど“兼ねられる”フリーカップ。
白いご飯が毎食欠かせないような“お米党”なら、お気に入りの飯碗があったほうが気分が上がるけれども、そうでない場合はあえて飯碗を外すという選択も。「飯碗もやはり名前に縛られてしまうので、ご飯をよそってもいいし、スープカップやサラダボウルにも使えるような、ひとつでいろいろ兼ねられる小さいボウルがあると便利でしょう」
カフェオレボウル(2500円)石渡磨美/Instagram ID utsuwa365
【D】深さのある皿
一皿で満足感の高いボリューム重視の料理に。
自炊で多くなりがちなのが、パスタやカレーのような一品で満足できるメニュー。「深さのある大きめの皿は、パスタやご飯ものに重宝します。丼代わりとしても使えるほか、シチューやポトフ、煮物など汁気のあるおかずの器としても便利です。いろんなサイズや形状があるので、自分にとっての適量をイメージしながら選ぶとよいでしょう」
深皿(5000円)su-nao home/Instagram ID sunaohome
【E】オーバル皿
おかずプレートや魚料理など盛り付けが決まるスグレモノ。
オーバル皿とは、楕円形の皿のこと。丸い皿に慣れていると使い方が難しそうに思えるものの、実は逆。「丸皿はどこに盛り付ければよいか意外と悩ましかったりするのですが、オーバル皿は余白をあまり気にする必要がなく、料理を左右に配置するだけできれいに見えます。魚料理やおかずプレート、サラダ、デザートなどいろんな料理に合います」
オーバル(3500円)藤原 純/Instagram ID jin0815
【F】六寸皿(約18cm)
副菜やご飯をのせたり、取り皿やお菓子皿としても。
平皿でもう一枚欲しいのが、八寸皿とサイズ的に相性がよい六寸皿。「八寸皿と六寸皿は、いろんなパターンで使える名コンビ。たとえば八寸皿をメインディッシュにしたら、パンやご飯を六寸皿に盛り付ける、といった使い方が。サラダやちょっとしたおかず、デザート、スイーツなどにも使いやすいサイズで、取り皿にもぴったりです」
六寸皿(2900円)うつわうたたね/Instagram ID utsuwa.utatane
【G】豆皿
小さいからこそ汎用性が高くてアクセントにもなる。
かわいらしい豆皿はいろいろ使えるだけでなく、食卓のアクセントにもなるスパイス的な役割を持っている。「たとえばタレや塩、漬物などをのせて添えたり、大きな皿の上に置いてレイヤーにしたり、箸置きとしても使えます。値段も比較的手頃ですし、デザインもいろいろなので、選ぶ楽しさも。一枚持つなら、多少深さがあるものがよいでしょう」
豆皿(1700円)安福由美子/Instagram ID yumikoyasufuku
やすの・くみこ 器と食の道具のギャラリー『UTSUWA KESHIKI』店主。著書に『うつわ使いがもっと楽しくなる本。』。インスタグラム@utsuwa_keshiki
※『anan』2021年3月17日号より。写真・津留崎徹花 器コーディネート・安野久美子 取材、文・兵藤育子
(by anan編集部)