人間的な引き出しが、色気として表れるんじゃないかと考えています。
「色気って…なんなんでしょう。以前、役柄の参考になればと思って色気について調べていた時、たまたま見つけた本に“隙が色気だ”って書いてあったんです。確かに、完璧すぎる人よりも隙がある人のほうが惹きつけられますよね。ただ、その隙っていうのをどこでどう出すのかを真面目に考えすぎてしまって、結果、よくわからないっていう…(笑)」
軽やかな口調でそう言って笑う。
「ただ、色気って年齢を重ねることで増すものだと思っているんです。色気を感じるのも年上の方のほうが多いです。いろんな経験を経ることで人間的な引き出しが増えて振る舞いが熟練されてくると、それが色気として表れるんじゃないかと」
映画『HOKUSAI』で共演した田中泯さんは、そんな理想的な年の重ね方をしているひとり。
「泯さんみたいにカッコいい年の重ね方をしたい」と語る。
「お話を伺っていると、自分のことを大切にしながら、丁寧に毎日を過ごされているんだろうと感じます。僕、誰にも負けたくないっていう気持ちが強い人間だと思うんです。でも、負けたくないっていう、その勝負の基準はなんなんだって言われたらわからない。自分が勝手に決めたルールで勝ったの負けたのって、すごくばかばかしいですよね。他人を自分の基準にするのはやめて、やるべきことに集中するのが30代に向けたいまの課題です」
本人は自らの色気には自覚がないのかもしれない。しかし、前述の映画で柳楽さんが演じた葛飾北斎は、内から溢れ出るような絵への情熱とともに、燃えるようなエネルギッシュな色気を放っていた。
「僕がいま俳優をここまで続けられているのは、お芝居が好きな気持ちと、根拠のないエネルギーがあったから。きっと北斎も、若い時ならではの怖いもの知らずなところがあったんじゃないかと思ったんです。うまいことやれたかはわからないけれど、自分にも同じようなところがあったと思うので、その経験を引っ張り出してきた感じです」
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映画の中に印象的なシーンがある。絵がなかなか認められず各地を放浪していた北斎が、海を目の前にして走り出す場面だ。
「台本にはとくに何の説明もなかったんですけれど、自分が演じる以上、場面に説得力を持たせたいという気持ちがありました。いろいろ考えた時に、あれは人生を諦めようとしていたのかもしれないと思ったんです。それを監督に相談したら、それでいきましょうってなって。たくさん悩んだけれど、提案できる現場でよかったです」
迷いや不安もさらけ出しあがき続ける。完璧じゃないからこそ、骨太ないまの柳楽さんの魅力に繋がっているのかもしれない。
「失敗することをあまり恐れすぎずチャレンジしていきたいと思っているんですよね。役を成立させるためにした努力も失敗も、全部無駄にはならない。そうやって役者としての幅を広げていければいいなと思っています」
やぎら・ゆうや 1990年3月26日生まれ、東京都出身。映画『HOKUSAI』は5月29日に全国公開。6月27日に30歳記念のアニバーサリーブック『やぎら本』が発売、7月には主演ドラマ『二月の勝者』も控える。
シャツ¥24,000 パンツ¥36,000(共にアトウ/シアンPR TEL:03・6662・5525) シューズはスタイリスト私物
※『anan』2020年4月1日号より。写真・宮崎健太郎 スタイリスト・長瀬哲朗 ヘア&メイク・佐鳥麻子 取材、文・望月リサ 協力・AWABEES
(by anan編集部)