大人の“初恋”に胸がキュンッ 『はじめてのひと』に共感する理由

2019.5.21
「大人になってからもいろんな“はじめて”は起こり続けるんだ、と気づきまして。嬉しいことも、そうでないことも、胸を揺さぶられる“はじめて”には、その出来事を通して自分が少しずつ育ってゆく前向きな響きがあるように感じたんです」

大人の女性に訪れる“はじめて”に切なさが止まらない!

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大人の女性が出逢う“はじめて”をテーマにした連作集を描こうと思ったきっかけを、谷川史子さんはこう語る。たしかに年齢を重ねて、わかったつもりになっていても、“はじめて”は思いがけないところからやってきて、大人げなくときめいたり、動揺したりしてしまうもの。3巻までに描かれてきたのは、結婚に踏み切れない女性や、自分以外の人と仲良くしている親友に嫉妬する女性、そして谷川さんが「離れる読者の方がいることも覚悟した」と打ち明ける、妻子ある人を好きになってしまった女性など。最新刊では、同級生に10年間も片思いしている女性と、恋愛に縁遠い女性が登場する。

「後者は“遅れてきた初恋”がテーマです。年齢的には35歳と十分大人で、思慮や理性や自信のなさで身動きの取れないヒロインなのですが、甘酸っぱい感情に首まで浸からせたいと思って描きました」

いろんな読者に「この子、自分に近いかも」と思ってもらえるよう、幅のあるキャラクターを心がけているというだけあって、登場する女性たちの恋愛や人生に対する価値観はさまざま。別の回で脇役として出てきた人が、ヒロインとして再登場したりして(逆もしかり)、すぐそばにいる人のまったく違う物語を楽しめるのも、連作集だからこそ。

「改めて振り返ると、ひとりひとり誰にでも大切にしたい人生がある、ということを描きたいのかなと思います。小さな出来事や事柄に心惹かれることが多いのですが、それをひとつのお話に仕上げるのに短編は向いていて、連作集はそのバリエーションだと感じます。短編を多く描くと型みたいなものができて、既視感のある展開になりがちなのが難しいのですが、『この人とこの人が友人だった』などと設定すると、描いた本人なのに、世界は広くて狭い! と感心できたりして楽しいですね」

谷川作品の真骨頂といえる“切なさ”と“はじめて”の親和性の高さにしみじみ。日々のささやかな“はじめて”を大切にしたくなるはず。

『はじめてのひと』 “はじめて”をめぐるシリーズ連載。4巻では、以前からチラチラ登場しているお堅いイメージの博物館職員・北別府さんが主人公に。意外な素顔がかわいすぎ! 集英社 440円

たにかわ・ふみこ 1986年デビュー。『おひとり様物語』(既刊8巻)を『Kiss』で連載中。今秋、都内で原画展を開催予定。詳細は本作連載中の『ココハナ』のTwitterなどで告知します。

※『anan』2019年5月22日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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