いいね!で終わらせない 本当にイイ話はSNSに上げちゃダメ?

2018.11.24
日頃から親交のある、占い師・しいたけ.さんと精神科医の名越康文さん。数々のクライアントをカウンセリングしてきたおふたりが、anan世代の“生きづらさ”に寄り添います。現代女子ならではのお悩み「時間がない」「認めてほしい」に答えていただきました。じっくり読んで、心の重荷を下ろしましょう。

[お悩み]認めてほしい!
私を価値がある人間だと思ってほしいし、努力していることを認められたり、褒められたい。

名越康文

S(しいたけ.さん):自己承認欲求って、ひと昔前までは肩書とかどこに住むかとか。あとはブランドだったり、そういう所有によって満たされていたところがあると思うんですけど、この流通の革命的な発達によって、たとえば大学生が高級ブランドを持っていたとしても、「え、すごーい」にはならないんですよね。

N(名越さん):ネットショッピングでいろんなものが買えるのは本当に素敵なんですけど、そこにストーリーがないことは否めないよね。昔だったら「日本にはないものだからパリに行って買ってきた」とか、そういう付加価値がついていたはずなのに、今はもうそのもの自体の価値しかない。そうなったら…、どうすればいいんでしょうか?

S:僕がやってる自己承認欲求の満たし方は本当にシンプルなんですけど、不便をもう一回取り戻すようにしているんです。たとえば、これから先、何年も付き合っていきたい家電はネットで買いません。というのも、家電量販店に行って店員さんといろいろ話をして、そこにストーリーを生み出さないと幸せを感じることができないから。

N:なるほどね。

S:だから、本当にあったいいお話とかはSNSに書いて「いいね!」で消費させないで、誰かに話すようにしてほしいんです。不便を取り戻さないと、「いいね!」で終わっちゃうから。

N:夜9時になると交通機関が止まるような田舎に「ここの商品がどうしても欲しいから」っていう理由で買いに行くだけで幸せな気分になれる。そういう打ち明け話をされたら、自分だけでなく、周りの人もその時間が特別なものだと感じるのかもしれないね。

S:僕の兄も京都にしか売ってないお酒が好きなんですけど、ネットで見つけて「あったよ、兄ちゃん!」って言ったら、それは京都まで行って、重いと思いながら買ってくるのが尊いことなんだと。

N:結果だけじゃ「いいね!」の一瞬で終わることも、道に散々迷った話や売り切れでわざわざもう一度行った話なんかが加わると、相手の中に記憶として残る。そこで初めて承認された喜びが生まれるのも事実なんですよね。

S:やっぱり、SNSに完結してる南の島の写真しかない人は、ちょっと疲れる(笑)。「いいね!」で終わらない、たいしたことないきつねうどんの写真を載せる人に、信用度が高まってきている気がします。

[お悩み]…時間がない!
毎日何かに追われるように過ごしていて、達成感もないままあっという間に時間が過ぎています。

N:カウンセリングだったら、「あなたはまだ怠けてますよ」って言います。で、早めにこけさせる。

S:ほう!

N:こういう方たちって、時速80kmくらいで走行してるわけでしょ。だから「100km出せ!」って言って、早く折れさせます。それでこれ以上動けませんっていう時に、「足元も大事なんですよ」って。やっぱり、走り続けている人に止まれなんて言っても無理なんですよ。

S:確かに! 僕も「好きになった人が既婚者です」って相談を受けた時、直感で「どんどん行きましょう」って言ったことがあります。周りの人はもう止めてるはずなので、それでもダメなら…と。

N:達成感のなさって、今の状況に納得していないからでは? 「本当は何が欲しいの?」って自分に問うことも大事ですよね。「本当はこうしたい、でもまだ私には…」と言うなら、「だったら、いつまでにそれ狙う?」みたいな。そのほうがかえって早く自分のやりたいことにたどり着く気がするんです。

S:僕も疲れてる時、ずっと携帯を見続けちゃう癖があって、それをやめられない時は、もう目が潰れるまで見てやろうって。そうするともう見たくなくなるというか、デメリットがわかるんですよね。

N:本当にその通り。

S:僕、前に先生が話してくださった、「ゲームが大好きすぎて、それがやめられないってことはゲームが本業なんだと思うことにした。だから幸せな気持ちでゲームをするために、精神科医という副業を頑張ってるんだ」っていう考え方にすごく救われたんです。僕も副業でしいたけ.をやっていると思えば、いい意味で肩の力が抜けるというか。副業なんだから失敗しても、「それは別に副業ですから」って言い訳を用意できる気がして。

N:肩に力が入ったパンチなんて、絶対に当たらないからね。肩の力を抜いたほうが、かえって本来の力が出せるんです。

S:SNSが普及して、私生活でも本業というか、本体がたくさんある人たちが多い気がするんです。そうすると、いい写真を撮らなくちゃいけないし、イケてる会話もしなくちゃいけないしで、時間もあっという間になくなってしまう。だから、喫茶店でダラダラ話すとか、人に説明できないようなことを心の中で本業にすると、副業に対して、いい力加減で取り組める気がするんですよね。

なこし・やすふみ 精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。NTV系『シューイチ』ほか、さまざまなメディアでコメンテーターとしても活躍。著書多数

しいたけ.さん 占い師。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究するかたわら占いを学問として勉強。著書に『しいたけ占い 12星座でわかるどんな人ともうまくいく方法』(小社刊)ほか。最新刊『しいたけ.の部屋 ドアの外から幸せな予感を呼び込もう』(KADOKAWA)が12月15日に発売予定。しいたけのブログ https://ameblo.jp/shiitake-uranai-desuyo/ 名越先生から「体癖」について学ぶなど師弟関係にある。ツイッターでのふたりのやりとりに注目者多数

※『anan』2018年11月28日号より。イラスト・100%ORANGE 文・菅野綾子

(by anan編集部)


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