15~39歳のAYA世代のがん事情…進行が早く、難治性も

2018.8.11
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「AYA世代のがん」です。
社会のじかん

人生のイベントが集中する世代のため負担は大きい。

AYA世代とは「Adolescent & Young Adult」、思春期と若い成人の15~39歳の人をさします。実はAYA世代のがん対策は遅れており、今年3月、厚生労働省は「がん対策推進基本計画」のなかに初めて組み込みました。AYA世代のがんは、他の世代に比べて患者数が少なく、がんの種類も多様なため、治療法がまだ確立されていないんです。また、AYA世代は小児と成人領域の狭間の世代だということもあります。15歳未満は小児科で対応しますし、40歳以上は成人病予防としての健康診断も一般化されています。ところがAYA世代は健康に意識が向く前に、受験や就職、結婚、出産など、人生の様々な課題にぶつかる時期です。そのため、がんが発覚しても、学校や仕事はどうするのか。誰にどこまで公表するのか。患者の環境や生活によって異なるため、個別のニーズを考慮した診療連携体制を構築することが肝要といわれています。

国立がん研究センターは今年初めて、AYA世代のがんの現状を公表。2009~’11年までの人口10万人あたりの罹患率を日本の総人口に当てはめると、1年間にがんと診断された数は、15~19歳が約900例。20代が約4200例。30代は約1万6300例。10代は白血病、20代は卵巣がんや精巣がんなどの胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、30代は女性乳がんが最多。AYA世代は進行も早く、希少な難治性がんであることが多いのです。標準的治療が確立されていないため、治療の選択肢も限られます。病気のストレスに加え、思春期特有の悩みも重なりますし、家族や友人らとの人間関係、将来への不安も抱えることになります。治療の副作用による脱毛や、むくみなども大きな負担に。

僕の知人のデザイナーの広林依子さんは、26歳のときに乳がんが発覚。余命宣告をされ、生きた証を残したいと、昨年亡くなるまでメディアに出続けました。治療費を稼ぐために、描いたイラストをインスタグラムにアップして売ることもしていました。彼女を支えていたのはパートナーとご家族です。これまで目が向けられていなかったAYA世代のがん。周囲の広い理解と早急な対策を望みたいですね。

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堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。

※『anan』2018年8月8日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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