ドライヤーからの温風をツボに当てるだけで冷え知らずのカラダになれる、“ドライヤー温灸”。自宅にあるドライヤーで簡単にできるので、気軽に試して効果を実感してみてください。
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不調をまねく冷えの原因は“冷やす環境”にある
「昭和32年の調査では、日本人の平均体温は腋下計測で36.9°Cでした。ところが現代人はそれよりもだいぶ低く、なかには35°C台の人もいるでしょう。低体温はカラダが冷えている証拠であり深刻。すぐに対策をするべきです」(医師・川嶋朗さん)
冷えの原因は、冷房をはじめ、冷たいドリンクを飲んだり肌を露出する服を着たりと、昔よりも“冷やす環境”が増えたこと。
「がん、うつ、不妊は冷えが影響する3大疾患といわれています。カラダが冷えると基礎代謝が下がり免疫力が低下。さらに血液の温度が下がることで酸素や栄養素、免疫細胞を全身に運んだり、老廃物を流す機能も低下し、さまざまな病気を引き起こします。冷やす環境を減らしながら、冷えを改善するツボ刺激を習慣にしてみましょう。日本や中国の伝統医学である漢方医学では古くから、もぐさなどを使ったお灸が取り入れられてきましたが、同じ温熱刺激で誰にでも手軽にできる“ドライヤー温灸”がおすすめです」
今日から始められるドライヤー温灸、5つのポイント
POINT ① できれば朝晩、髪を乾かすついででOK
ドライヤー温灸はできれば1日2回、朝晩やるのが理想だが、ドライヤーを使うタイミングでツボ刺激をすると習慣にしやすい。また、冷えを感じた時にも行うといい。妊娠中は行わないこと。
POINT ② “ツボに近づけて離す”を5回繰り返す
適温は50~60°C。ツボを中心に、その周辺に温風を当てながらドライヤーを少しずつ肌に近づけていき、熱いと思ったら肌から離す。これを5回繰り返す。やけどに注意して。
POINT ③ ドライヤー温灸は必ず自分でやること
他人にドライヤー温灸を行うと、肌の感じ方や熱さの度合いがわからずにやけどしてしまう可能性も。必ず自分で行い、熱いと感じたらすぐに肌から離すようにして、無理せず行うこと。
POINT ④ 保湿をしっかりして冷やす環境を作らない
ドライヤー温灸をしたあとは肌が乾燥するため、しっかり保湿をしよう。またドライヤー温灸後に冷たい飲み物を摂ったり、薄着でいると効果が台無し。冷やす環境は作らないように。
冷え解消に効果的な6つのツボ
カラダを縦に流れる経脈と横に走る絡脈のルート上にあるツボは、全身に361か所あり、それぞれに違う症状を改善する役割を持つ。今回は冷え解消のための6つの万能ツボをご紹介!
① 百会(ひゃくえ)

軽い不調から冷えまでを改善する万能ツボ/多くの経絡が交じり合うポイント。頭のてっぺんのほぼ中央にあり、左右の耳に親指を当てて両手で頭を包み込むようにした時に、中指の先が当たる場所。強く押すと鈍い痛みを感じる人も。全身のバランスを調整し、痛みを和らげてくれる万能なツボなので、カラダに軽い不調を感じたら、ここをゆっくり数回押すと改善される場合もある。毎日ドライヤー温灸をすることで、健康増進効果が得られる。また、ストレスを感じやすい時には、このツボを刺激することで和らぐ。
② 中極(ちゅうきょく)

下半身の冷えを解消しぽっこりお腹対策も/おへその下に親指から小指まで、指5本ぶんを揃えて横に当てた時、小指の外側のおへその真下。または、恥骨の上端から指1本ぶん上の場所。腎機能を整えるツボで、特に下半身の冷えが気になる時や、頻尿などの悩みがある場合は、ここをよく温めると改善される。また、食べすぎや便秘が起こすお腹の張り“膨満感”は、消化不良だけではなく、冷えにより胃腸の働きが弱まることでガスが溜まることも原因の一つ。お腹まわりの冷えを解消することで“ぽっこりお腹”対策にも。
③ 合谷(ごうこく)

冷えからくる肩こりや代謝低下、肥満まで/手の甲の、親指と人差し指の骨が交わるところから、約1cm指先側のくぼんだところにあり、押すと鈍い痛みを感じることも。冷えからくる肩こりや頭痛だけではなく、汗かきで口が乾燥しがち、赤ら顔、便秘などにも効果的なツボ。また、年齢を重ねることで起こる、代謝の低下による肥満にも有効で、幅広い症状に対応する万能なツボとしても知られている。ドライヤー温灸の前に、反対側の親指の腹で、押し込むようにギューッと圧をかけて刺激してから温めると、より効果が高まる。
④ 足三里(あしさんり)

体温・免疫力・抵抗力アップに一役!/すねの骨の外側を足首から上に探っていくと、ひざの皿の骨の下にゴツゴツした膨らみがあり、そのすぐ下のくぼんだ場所。カラダ全体を縦長に走る経脈の、胃経にあるツボで、胃腸の調子を整える働きを活発にする。ここをドライヤー温灸で定期的に温めることで、健康維持、体力増進、体温・免疫力・抵抗力アップが期待できる。風邪の症状にも効果的。また、空腹ではないのにお腹が鳴る時は、胃が冷えて機能低下しているサイン。ここを温めたり、指で押すといい。
⑤ 三陰交(さんいんこう)

脾経、腎経、肝経の3つを同時に刺激/内側のくるぶしから指の幅3本ぶん上、すねの骨の後ろ側の、ややくぼんだ場所にある。指でギューッと押すと鈍い痛みを感じる人が多い。ここは脾経、腎経、肝経という3つの経絡が交わる場所であり、それらを同時に刺激できるため、便利で万能なツボとして知られている。指で押すのもいいが、ドライヤー温灸をすることで手軽に全身を温めることができる。また女性特有の不調にも効果的で、生理や更年期にまつわる悩みにも効果を発揮。ただし、妊娠初期の強い刺激はNG。
⑥ 湧泉(ゆうせん)

刺激するだけで元気が湧いて“腎虚”を改善/足裏の、親指と人差し指の付け根側のふくらみと、中指から小指側のふくらみが交わるところ。人という文字に似たシワの、ちょうど真ん中あたりにある。腎経の出発点に当たるツボで、ここにドライヤー温灸をすると、老化が原因によって起こる腎機能低下や虚脱感、疲労など、漢方医学でいうところの“腎虚”を改善し、体力と気力を高めることができる。刺激するだけで、元気が泉のように湧いてくることから、この名前で呼ばれるようになったとされている。
温灸向き最新ドライヤーもチェック!
“ドライヤー温灸”に使うドライヤーは、使い慣れた手持ちのものでOKだが、本来の用途から離れる使い方なので機能は要チェック。おすすめは活性酸素を中和してくれるマイナスイオンが出るものや、保湿機能付きなら肌の乾燥対策にも◎。温度調整機能や距離センサーがついたドライヤーなら、やけどの心配も少ない。
お話を伺った方
Profile
川嶋 朗
医師。大学病院での統合医療診療を日本で初めて立ち上げる。冷え研究の第一人者で、『人生100年時代の冷えとり大全120』(Gakken)、『キレイが目覚めるドライヤーお灸』(現代書林)ほか、冷えや健康にまつわる著書多数。
anan 2476号(2025年12月17日発売)より































