セックスとの向き合い方は、実に千差万別。しても、しなくてもいい。大事なのは、自分の気持ち。タレントの大久保佳代子さんに、今のセックスとの距離感を聞きました。


大久保佳代子「もっと楽しんでいたら…と思うけど、性欲に支配されない今だって楽しい」

ウブな恋バナからキワどいセックスの相談まで。リスナーのお悩みをポッドキャストで軽やかに受け止める大久保佳代子さん。

「自分が思ってた以上に性愛の話ってこんなに多様なんだと驚いてます。毎週、読むだけで胃もたれを起こしそうになるほど大量のメールが来るんですが(笑)、どれも表現力、状況描写が巧みで、読ませる文章なんですよね」

さまざまなエピソードに対して、笑ってツッコんだり、冷静に諭したり。大久保さんの言葉、一つひとつに共感が集まる。

「できるだけ一方向だけの考えを言わないようにしています。“不倫? ダメに決まってるでしょ”とバッサリ言ってしまえば、それまで。もちろん倫理的に良くはないけど、“人を好きになっちゃうってどうにもならない時もあるよね”と受け止め、反対側や斜めからの意見も伝えるように」

セフレの異様な行動に戸惑う人、一回り以上年下の浮気相手にガチ恋した人、既婚上司に言い寄られているが一線を踏みとどまっている人など。これまでいろんなエピソードが寄せられてきたが、大久保さんが特に印象に残っているのは、彼氏がセックスのあとに毎回“反省会”を開くという話。

「彼が自分の改善点を挙げて、次に活かそうとするという。いわゆるPDCAです。そんなのムードもへったくれもないけど(笑)、そこまでちゃんと性に向き合ってるってすごいなって。あと、オーラルセックス中に眠くなるという女性からのお悩みも印象的でした。“くわえている間、眠気と戦ってる”ってなんか可愛いなって」

エピソードはぶっ飛んだものが多い。大久保さん自身、もっと楽しんでおけば…と思ったことも。

「でも、私も若い頃は性欲に支配されていました(笑)。異性と出会ったら、まず、この人とどうやったらそういう関係になれるかと考えてばかり。その人に気に入られたいから、自分を取り繕ったり、あえてそっけない態度をとってみたり。声をかけられれば、欲望の赴くまま関係を持ったことも」

そんな大久保さんも今は性欲が落ち着き、異性をセックスできるかどうかではなく、人として見るようになった、という。

「そう考えると、性欲が減って寂しいなと思いつつも、とても楽ですね。無理して女を演じずに、本来の自分でいられるから」

ただ、年に数回、無性にイチャつきたいと思う夜もある。

「そういう時、リスナーさんからのメールを読むと、“私も面倒くさいなんて言わずに行動してみようかな”って思う。でもね、もう無理はしません。自然体の自分を好きになってくれる人がいたらラッキーというスタンスで。そして、もし、パートナーができたら、やっぱりセックスはしたい。だって、楽しいってことは知ってるから。そしたら、ちゃんとコミュニケーションがとれる関係でいたいな」

若い時は自分から“これは無理”や“こうしてくれたら嬉しい”などなかなか言えなかった。

「自分のしてほしいことを言葉にするのが難しくて。でも、日常からちゃんと意思疎通が図れている二人だったら、セックスの場面でも自然に言えるんじゃないかなって。セックスは最も深い領域のコミュニケーション。いろんな人の性愛話を聞いてそう思うようになりました。そして、年を重ねた今だったら、ポップに言い合える関係が作れるかもと」

若い頃に比べたら性欲は落ちたかもしれない。でも、性の営みが終わったわけではない。肉体的な快楽だけを求めるのではなく、心のつながり、精神的な親密さに重点を置くようになった。

「年齢を言い訳にせず、性についても、人との関係についても、もう少し図々しく楽しみたいと思う。一人旅をした先でいい出会いがあるかもと期待したりして」

性は成熟し、自分らしい形に育っていくもの。大久保さんのまっすぐな性愛観を聞くと、そんな豊かな性のあり方が見えた。

Profile

大久保佳代子

1971年生まれ、愛知県出身。1992年、お笑いコンビ「オアシズ」でデビュー。TBSラジオによるPodcast『大久保佳代子とらぶぶらLOVE』が人気。著書『パジャマあるよと言われても』(小社刊)ほか。

イラスト・サイトウアケミ 取材、文・浦本真梨子

anan2458号(2025年8月6日発売)より
Check!

No.2458掲載

愛とSEX

2025年08月06日発売

平成景気のさなかの 1989 年。「女性ファッション誌」として、当時の女性の目線での SEX を特集。そのセンセーショナルな内容は、表紙を飾った金子國義さんのファッショナブルなイラストレーションと共に圧倒的支持を得ました。メンタル、フィジカル、メディカル、さまざまな視点から、愛と SEX をテーマに、時代の気分や社会状況なども反映させて特集してきました。現在も年間 50 冊以上の特集を刊行するanan の中で、一年を通じて最大部数を誇る名物企画。毎年、表紙とグラビアにご登場いただく方は、社会現象ともいうべき話題に。愛のある幸せな「SEX」を、年に 1 度、特集し続けています。

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