妊娠&出産にまつわるお金のこと。
妊娠・出産は病気やケガではないため、切迫流産や帝王切開などを除いて健康保険は適用されない。健診や分娩は自由診療となり、出産の平均額は約50万円と高額だが、国や自治体の助成を受けられる。
「健診費は自治体が一部を負担し、出産は健康保険から出産育児一時金という手当てが支給されます。この出産育児一時金は今春、42万円から50万円に増額されました。“平均金額分をもらえるなら、自己負担はなし?”と思うかもしれませんが、公定価格のない分娩費は、病院の規模やオプションなどでまちまちなうえ、年々上昇傾向に。病院を選ぶ際は内容と金額も確認しましょう」(ファイナンシャルプランナー・西山美紀さん)
国は近年、少子化対策として、不妊治療の保険適用や育児休業給付制度の改正など、妊娠や子育てを支援する政策に力を入れている。
「不妊治療の助成金を出す自治体や、出産・育児の支援制度を設ける企業も増え、全体的にサポートは手厚くなっています。ただ、見落とされがちな情報や内容の変更も多いので、自分の住む自治体のHPを調べたり、勤務先に支援制度の確認を。サポートを最大限に受けて負担を減らすには、きちんと調べることが重要です」
出産に基本でかかるお金…全国平均約50万円
出産育児一時金として50万円の支給があり!
出産費用は地域や病院によって差があり、全国平均で約50万円。出産育児一時金は、今春から子供ひとりにつき42万→50万円に。また、妊娠から分娩まで15回ほど健診に通うのが一般的で、費用は自治体ごとの助成制度を利用できる。「出産育児一時金は病院を通して申請する方法が簡単。健診費は妊娠の状況や検査項目でも変動しますが、1回5000~8000円程度の自己負担額になることが多いです」
育休中に受け取れるお金…育児休業給付金
180日目まで…賃金の67%、181日目以降…賃金の50%
出産して8週間経過後から180日目までは賃金の67%、181日目以降は原則子供が1歳(最長2歳)になるまで賃金の50%相当額が2か月に1回支給される育児休業給付金(雇用保険の被保険者が対象)。「昨年10月から、子の出生後8週間以内に最大4週間まで父親が取得できる『産後パパ育休』が施行され、この期間も賃金の67%が支給されるようになったほか、育児休業の分割取得ができるように」
変わりゆく国のサポート
【出産費用の保険適用】
今後の少子化対策に、政府は出産費用の保険適用を検討すると表明。これを受けて厚生労働省は、医療機関ごとに出産時の平均入院日数と合計負担額を公表する取り組みも含め、2026年度を目途に議論を進めていくという。「保険適用が実現したら、出産育児一時金を減額するなど連動した変更があるかもしれません。自己負担額が増える方向には進まないはずですが、注意深く見守る必要がありそう」
【不妊治療の保険適用拡大】
昨年4月から、タイミング法などの「一般不妊治療」、体外受精や顕微授精などの「生殖補助医療」が保険適用に。治療開始時に女性の年齢が43歳未満であることを条件に、40歳未満は通算6回まで、40歳以上43歳未満は通算3回までの制限がある。「従来は医療費が数百万円以上かかる場合もありましたが、一般的な年収の人なら月9万円くらいの自己負担で済み、トライしやすくなりました」
【パパ・ママ育休プラス】
夫婦ともに育休をとることで、子供が1歳2か月になるまで延長して育休を取得できる制度。「母親が復職するタイミングで父親が育休を2か月間とったり、夫婦で同時期にとったり分割したり、育休制度の変更で状況に合わせた取得が可能になりました。育休関連の制度は要件がかなり複雑です。各企業は説明を義務付けられているので、夫婦で協力して子育てできるように勤務先に相談してみて」
西山美紀さん ファイナンシャルプランナーの資格を生かして、雑誌やWebでマネーの記事を執筆するほか、講演活動も。All About 貯蓄ガイド。著書に『お金の増やし方』(主婦の友社)などがある。
※『anan』2023年6月21日号より。イラスト・REDFISH 取材、文・熊坂麻美
(by anan編集部)