
代表的なお腹の不調として挙げられる、下痢や便秘、腹部膨満感や腹痛など…。「ストレスのせい」「体質だから」と放っておくと、トラブルが悪化する可能性も?! そこで、最新情報に精通する医師の簡単カウンセリングを実施。自分の現状を知ろう。
教えてくれた方々
Profile
長瀬みなみ
腸活プロデューサー。日本発酵文化協会上級認定講師。腸活の実践により慢性便秘を解消したことから、腸内細菌の重要性に注目。腸内環境の正しい知識と発酵食の魅力を発信中。著書は『ムリしない腸活』(緑書房)。
田代知映
医学博士。日本消化器病学会専門医。「渋谷からだと心のクリニック」副院長。専門性の高い炎症性腸疾患の治療に多く携わる。クリニック内の婦人科や心療内科などと連携し、患者の症状改善を心身両面からサポート。
この不調おかしいかも…。気づくのが治療の第一歩
“痛み”や“炎症”は悪いもの、なくなればいいものと考えがちだが、異常を素早く察知して発動し、修復と防御を促してくれる存在。どちらも全身を守るためには大切な、いわば警報システムだ。問題なのは、強すぎたり長引くこと。
「特に、人と比べることが難しいお腹まわりの不調は“体質だから仕方ない”と受け入れてしまいがち。なかでも下痢や便秘は、身近な不調ゆえ“いつものこと”と見過ごしやすいですが、その状態が続くのは異常だと知ってほしいです」(医学博士・田代知映さん)
下痢や便秘の裏に、慢性的に腸の粘膜に炎症が起こる病気が潜んでいる場合もある、と田代さん。また、以前はストレスのせいと括られがちだったIBS(過敏性腸症候群)に、様々な原因が紐づけられるようになり、SIBO(小腸内細菌異常増殖症)などの病気の存在も認知されてきた。自分の下痢や便秘に潜む病気の可能性を下記でチェックして、お腹と上手に付き合う方法を学んでいこう。
下痢と便秘の裏にある、病気の可能性
臨床現場でのデータを反映させた、超簡易的なチャートを田代さんが作成。そこから導かれる病気の代表的なものを抜粋し、症状や対策を解説します。


※チェックはあくまで簡易的な方法なので、すべての人に当てはまるわけではありません。心配な症状があれば、医師に相談してください。
病気の知識を身につけ、自分のお腹を守る方法を知る
ここでは上記の簡易診断が導いた内容から、読者にとって身近な疾患5つを抜粋し、解説します。チェック項目には、各疾患の傾向をリストアップしたので、医師に相談する際には活用して。命に関わらない疾患でも、自己判断でのケアが逆効果になる可能性もあるので要注意です。腸炎や大腸ポリープなど、そのほかの疾患が気になる人は早めに病院で検査するのがおすすめ。
IBS(過敏性腸症候群)
検査では異常が見つからないのに、腸の働き方や感じ方に乱れが生じるトラブル。
CHECK
✅️ 腹痛やお腹の不快感が繰り返し起こる
✅️ 下痢や便秘を繰り返す
✅️ 排便すると症状が軽くなる
✅️ ストレスで悪化しやすい
慢性化した下痢や便秘を、いつものことと軽視しないで
臓器自体には炎症や潰瘍などの明らかな異常が見つからないのに、排便に関連する腹痛や腹部不快感が慢性的に続く疾患。症状の現れ方には個人差があり、下痢や便秘、腹部膨満感、ガス(おならやげっぷ)の増加など、内容も症状の重さも様々。
「これまで“ストレスのせい”とされがちでしたが、実は自律神経の乱れ、アレルギー疾患や腸内細菌異常、PMSによるなど、その原因は多様。食事や生活習慣を見直しても改善しない時は、大腸カメラで粘膜の状態を把握したり、婦人科の検診を受けることも、原因を見つける近道になります。自分に合った改善方法を見つけるためにも、悩みを抱えず、消化器内科や婦人科などの専門医に相談してみましょう」(田代さん)
IBD(炎症性腸疾患)
自己抗体で腸に炎症や潰瘍ができ、慢性不調がもたらされる原因不明の難病。
CHECK
✅️ 数か月にわたる腹痛、下痢
✅️ 時折血便がある
✅️ 発熱や強い倦怠感がある
✅️ 体重が減少した
早期に受診し、治療を始めることが重要
免疫の異常によって腸に慢性的な炎症が起こる病気の総称。代表的なものが潰瘍性大腸炎やクローン病で、20〜30代で発症する人が多く、患者数は年々増加傾向に。IBSと似た症状もあるが、違いは腸粘膜に病変があること。数週間下痢が続き、腹痛や強い疲労感を伴うなど、日常生活に大きな影響を及ぼす。原因は不明で、腸内細菌叢の影響、食事・環境要因、遺伝的素因などが複雑に絡むとされる。
「悪性ではありませんが、慢性的な疾患です。近年治療が一気に進化し、症状に合わせた治療の選択肢が増え、治療成績も上がっています。早期の治療介入がQOLを上げることにつながるので、下痢が慢性化しているなら、早めに検査を受けましょう」
婦人科系トラブル
婦人科系トラブルと腸のトラブルは、切っても切れない関係にあることを知ろう。
CHECK
✅️ お腹の不調が毎月同じタイミングで起こる
✅️ 月経痛が強い、経血量が多い
✅️ 骨盤周辺が重だるい、下腹部に圧迫感がある
✅️ 婦人科の診察を受けたことがない
女性のお腹の不調は、婦人科系も含めて捉える
月経痛や月経不順などで婦人科を受診し、実は腸に問題があった、という場合もあれば、便秘の原因が大きな子宮筋腫というケースもある。
「婦人科の病気が原因で、下痢や便秘などの症状が出ている場合は、ピルなどの治療で改善することがあります。女性の場合、子宮や卵巣が大腸のすぐ近くにあるため、子宮内膜症が進行すると、子宮や卵巣が大腸と癒着し、月経時以外でも腹痛や便秘などの症状が続くこともあります。腸と女性特有の病気は、とても深く関係しているので、子宮筋腫や子宮内膜症などが、腸のトラブルの裏に潜んでいる可能性もあります。月経にまつわる悩みを“月イチの悩みだから仕方ない”と我慢したり、放置しないでほしいです」
薬剤性腸炎
鎮痛薬や胃薬など、長期服用している薬の影響で腸の不調を招くことも。
CHECK
✅️ 長期間服用している薬がある
✅️ ある薬の服用開始後に下痢が出現した
✅️ 腹痛や腹部不快感がある
✅️ 服用を中止すると改善することがある
長期服用している薬を今も必要か見直してみる
月経時に、また頭痛や腰痛などの疼痛緩和のために鎮痛薬を長年飲み続けている人。さらに、胃酸を強力に抑える薬を長期間内服している人は要注意。
「鎮痛薬は、痛みや炎症を抑える一方で、腸の粘膜を弱め、長期間服用し続けることで腸のバリア機能を低下させます。また、胃酸を強く抑える胃薬も、胃酸は抑えられますが、長期服用で腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌が増えることで下痢などの便通異常を引き起こすことがあります」
どれも、生理痛や胃潰瘍などの治療には大切な薬。ただ原因不明の腸の不調が続いているなら、一度医師に相談を。長年服用している薬が、今も必要なのかを定期的に見直すことも大切だ。
SIBO(小腸内細菌異常増殖症)
本来細菌が少ないはずの小腸に異常増殖し、お腹の張りが気になるように。
CHECK
✅️ 食後に強い膨満感がある
✅️ 少量の食事でもお腹が張る
✅️ 下痢と便秘を繰り返す
✅️ おならやげっぷが多い
お腹の不快な張りは、食事の内容が原因かも
小腸で腸内細菌が異常増殖し、細菌が作り出すガスがお腹の張りや胃酸の逆流などを引き起こす病気。IBSと診断された人がSIBOを併発している場合も。
「SIBOの症状はIBSやそのほかの腸の疾患とも似ているため、自己判断は困難。検査で原因を見極めることが大切です。また、腸にいいとされる発酵食品でも、食べすぎるとかえって症状が悪化することも。最近は、お腹の張りなどの原因になりやすい糖質を一時的に控える“低FODMAP(フォドマップ)食”も注目されています。ただ、自己判断で行うと栄養バランスが偏り、体調不良を招きかねません。腸の不調が続くなら、SIBOの可能性も視野に入れ、検査や治療法を専門医と考えていきましょう」
病気になる前にやっておきたい検査や検診のススメ
お腹のトラブルを改善する第一歩は、自分の腸の状態を知ることから。最近は、自宅で詳しい腸内細菌検査が受けられるサービスも。検査結果をもとに、不足している菌や腸内環境の特徴がわかり、自分に合う食事内容や腸活に役立てられる。一方、IBDや大腸ポリープなど、腸そのものに異常があるかを調べるには、やはり大腸内視鏡検査が最も頼れる検査だ。異常が見つからなければ、IBSやPMS、婦人科疾患など他の検査に進め、自分に合う対策の検討につながる。最近は内視鏡検査の技術が進歩し、以前より体への負担が少なく、安心して受けられる。
anan 2504号(2026年7月15日発売)より

































