
4年に一度行われるFIFAワールドカップがいよいよ開幕。8大会連続出場の日本代表が目指すのは“最高の景色”だ。森保ジャパンが誇るエースストライカー&アタッカーが語る今大会への想い、そして担うべき役割への覚悟とは──。
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3年半で大きく立場を変え、代表に不可欠なアタッカーに
「彼は誰なんだ!」「こんな選手がフランス2部にいたのか!」
今年3月に行われた日本代表のヨーロッパ遠征。サッカーの母国イングランドを撃破した試合で力強いドリブル突破を披露し、冷静なラストパスで決勝ゴールをアシストした中村敬斗選手のプレーに、スタジアムで視察していた各国の関係者が沸いたという。
左サイドからの鋭く軽快なステップのドリブルで相手をかわし、ゴール前で得点やアシストに絡むアタッカー。今大会で優勝を目標に掲げる森保ジャパンにおいて、チャンスメーカー&ポイントゲッターとして一気に存在感を高めている期待の星だ。
昨年10月のブラジル戦では逆転勝利を呼び込む同点ゴールをマークし、自身も「イングランド戦やブラジル戦は自信になった」と話す25歳。ひとたび彼がボールを持つとスタジアムの空気が変わり、周囲に「何をしてくれるんだろう」というワクワク感を覚えさせる選手へと成長を遂げた。
5歳の頃に初めてテレビで観戦したW杯は、出場を夢見る憧れの場所になった。三菱養和SCユースから17歳でガンバ大阪とプロ契約すると、各年代で日本代表に選ばれて18歳で海外移籍を実現。しっかりと結果を出し続けることでオランダ、ベルギー、オーストリア、フランスと戦いの場をステップアップさせて夢に近づいていく。だが、そんな俊英も2022年のカタール大会は一人のサッカーファンとして観戦。ドイツとスペインを撃破して勝ち上がる森保ジャパンを「すごいな」と思いながら、当時は代表未招集で「遠い存在だった」と振り返る。
あれから3年半、彼の立場は大きく変わった。カタール大会後の’23年3月に代表デビューを飾ると、デビュー2戦目での初ゴールを皮切りに10試合8得点の大活躍。ゴールに直結する勝負強さを見せ続けて評価を上げ、日本代表に不可欠な存在になっていく。
「正直言って驚きました。初招集された当時はオーストリアでかなり結果を出していたんですけど、そこまでしっかりチェックしてくれているんだなって。日本代表で生き残っていくためにはインパクトを残さなければと考えていたので、最初に結果を出して自分の存在感を印象付けられたのは大きかった。周りはテレビで見ていた選手ばかりで、最初は自分が同じピッチに立っていることがうれしかったけれど、その中で結果を出していかないと代表に選ばれ続けるのは難しい。あまり先のことを考えるのは好きじゃないので、代表でも所属チームでも目の前の練習や試合で一つずつ積み上げて、結果を出すことを大事にしてきました」
一見すると、順風満帆なサッカー人生に思えるかもしれない。だが、厳しい環境で成長してきた点は特筆すべきものだ。すでにヨーロッパで5つのクラブを渡り歩き、スタッド・ランスへの移籍で“5大リーグ”の一つとされるフランスでのプレーを実現。カップ戦で決勝に進出するなど結果を残しながらチームは2部に降格。クラブ事情もあって自身の移籍は叶わず、W杯イヤーを前にカテゴリーを下げて戦うことを余儀なくされた。それでも常に全力を出し続けることを信条にしてきた彼は中心選手としての責任を全うし、置かれた環境で成長を遂げていく。
「日常のレベルを考えたら、リーグ・ドゥ(フランス2部)が高いとは正直言いにくいです。ただ、フランスはスピードやパワーといったフィジカル自慢の選手が多くて、2部はさらに顕著になる。相手からもすごく警戒されるし、その中でどうやって点を取るか、どうやってアシストしていくかを考えることで必ず成長できると思っていました。個人的にはスタッド・ランスでチームを引っ張る存在なので責任も感じていますし、仕掛けのバリエーションも増えた。フランス2部で成長できた部分は少なくないと思っています」
自分に求められているのはゴールに直結するプレー
所属クラブと代表チームの双方で着実に成長を遂げ、結果を出し、イングランド戦の活躍であらためて世界から注目されることになった。そんな彼が、幼い頃から憧れていたW杯の舞台に立とうとしている。先を見すぎず、それでいて成長を誓って過ごしてきた日々は今、彼を一回りも二回りも大きくさせている。
「W杯の舞台で活躍するために必要なものは、やっぱり積み上げだと思います。試合では自分が普段やってきたことしか出せないし、特別な舞台だからといって特別な力が出せるとも思わない。だから常に100%の力で取り組んで、普段の練習や試合で全力を出すようにしてきました。それが間違いなく今につながっていると思います」
森保ジャパンが掲げた世界一という目標に向かって、チーム一丸となり、本気で頂点を目指して大舞台に挑む中、攻撃にアクセントを加えるアタッカーとして大きな期待を集めていることは自分自身でもしっかりと理解している。その心境を素直に「ワクワクしています」と話す彼が、目標達成に向けて自身が果たすべき役割を明かす。
「日本代表ではウイングバックやシャドーという攻撃的なポジションを任されていますし、自分のプレースタイル的にもやっぱりゴールに直結するようなプレーが求められていると思っています。ただ、それは自分自身の得点じゃなくても、得点に結びつくプレーやゴールに向かっていくプレーでもいい。もちろん自分の色を出してアピールしたいけれど、それ以上にやらなければいけないのが、守備も含めてハードワークする部分。それができなければ世界の強豪国とは戦えないので、そこは最低限のベースとして大事にしています。やっぱりW杯という舞台でチームとして“最高の景色”を見たい。そのためにしっかりと献身性を出して、みんなで力を合わせて戦いたい」
5月上旬、スタッド・ランスでの今シーズン最終戦を1試合4ゴールという大活躍で締めくくった中村選手。それこそがフランス2部で覚悟を持って成長してきた証しでもあるだろう。日本代表が真剣勝負で世界と対峙する時、間違いなく彼の突破力、決定力が勝負を分けることになるはずだ。そこは自分自身が期待している部分でもある。テレビで見ていた前回大会、日本代表はドイツとスペインを相手に数少ないチャンスを活かしてゴールを奪い、世界を驚かせるアップセットを起こして決勝トーナメントに勝ち上がった。迎える今大会、彼の勝負強さが日本代表の未来を左右する可能性は十分だ。
「奇跡のゴール一発で勝っても、勝ちは勝ち。1試合に1本あるかどうかのチャンスを決めるところは自分が得意とする部分だし、スタッド・ランスで慣れている戦い方でもある。そういう展開になったらゴールを決める自信もアシストする自信もあります」
変幻自在のステップで相手ゴールに迫り、豪快に撃ち抜くシュートで今度は世界を驚かせる。ピッチで見せる魅惑のプレーが森保ジャパンの、そして彼自身の未来を切り拓いていく。
Profile
中村敬斗
なかむら・けいと 2000年7月28日生まれ、千葉県出身。181cm、73kg。17歳でガンバ大阪とプロ契約し、18歳で海外移籍を実現したアタッカー。華麗なドリブルと果敢なシュートでチャンスに絡み、勝負強く結果を積み重ねてきた。日本代表通算24試合10得点。
二人の活躍に注目を!
FIFAワールドカップ2026
6月15日(月)5:00 日本 vs オランダ@ダラス
6月21日(日)13:00 日本 vs チュニジア@モンテレイ
6月26日(金)8:00 日本 vs スウェーデン@ダラス
※すべて日本時間
アメリカ、カナダ、メキシコで共同開催される今大会は、DAZNで全104試合がライブ配信され、日本代表戦に加えて決勝、準決勝、3位決定戦が無料視聴可能。NHKやフジテレビ、日本テレビの地上波でも開幕戦や決勝、日本戦などが生中継される。NHKBSプレミアム4Kでは全104試合を4K放送。時差の関係でライブ視聴は日本時間の深夜~午前帯が中心に。
写真・伊藤彰紀(aosora) スタイリスト・野口強(Stie-lo) ヘア・TAKUMI メイク・藤尾明日香(kichi.inc) 取材、文・青山知雄
anan 2499号(2026年6月10日発売)より





























