
4年に一度行われるFIFAワールドカップがいよいよ開幕。8大会連続出場の日本代表が目指すのは“最高の景色”だ。森保ジャパンが誇るエースストライカー&アタッカーが語る今大会への想い、そして担うべき役割への覚悟とは──。
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AIのように自動的に浮かぶプレーイメージと選択肢
森保ジャパンが“最高の景色”を見るためには、彼の活躍が欠かせない。最前線で存在感を増し続ける背番号18の輝きなしに日本代表の躍進は考えられないと言っていいほど、替えが利かないエースストライカーへと進化を遂げている。それが上田綺世選手だ。
日本代表の試合を観れば、自然と最前線でプレーする彼の存在感に目が奪われていくことだろう。多くの攻撃が彼を経由して展開され、フィニッシュにも絡んでいく。前線で体を張ってボールを収めるプレーで攻撃の起点となり、巧みな身のこなしで相手のマークを外しながらゴール前に抜け出す。そして何より際立つのはシュートシーンでの高い決定力と判断力だ。
今シーズンはオランダの名門フェイエノールトでリーグ戦25ゴールを挙げて得点王に輝いた。日本代表では昨年10月のブラジル代表戦で劇的な決勝ゴールを決め、初めてサッカー王国を撃破する逆転劇の立役者となった。 日本のエースへと進化を遂げてきた中ですべての背景にあるのは、彼が幼少期から父親と積み重ねてきた思考と情報の蓄積だ。得点を決めた試合後の取材エリアでゴールシーンについて聞くと、わずか数秒間に無数の判断があったことを克明に説明してくれる。そのメカニズムの一端を本人が明かす。
「自然とプレーイメージが浮かんでくるんですよ。サッカーは常に状況が変わるスポーツなので、AIのように自動的にたくさんの選択肢が出てきて、可能性の低いものが瞬時に消えて、ゴールに至る確率の高いプレーを選んでいる。子供の頃から父と話したり、自問自答して、どうすればうまくプレーできたのか、もっとできたことがあったんじゃないかと考え続けることで選択肢やアイデアが増えていきました」
例えば、ゴール前で何となく待っていたら、そこにボールが来なければシュートは打てない。誰がどんな状態でクロスを入れるのか、相手との位置関係などの状況から判断して、何が起こるかを想定しながら可能性の高い選択肢を選ぶことでゴールの確率を上げているという。もちろんうまくいかないこともあるが、「それでも可能性の高いプレーを継続し続けることが大事」だと信じて取り組み続けてきた。
もはや“ゴールマシン”と表現したくなるような脳内解析だ。パワフルなシュートについて「誰よりも打ち込んできた自負がある」と話すのと同様に、イメージトレーニングの量と質にもこだわって自分のスタイルを作り上げてきた。「だから試合中のワンプレーごとに得られる情報量は、他の選手とは違うと思う。それが僕の成長率になっている」と進化の理由を語る。
前回大会とは全く違う立場、クオリティで開幕を迎えられる
今から3年半前、カタールで行われたFIFAワールドカップで日本代表に選出された上田選手は、コスタリカとの第2戦で先発出場するチャンスを得た。チームはドイツとの初戦に続いて連勝したい状況だったが、初めての大舞台で立ち上がりから思うようなプレーができず、前半だけで交代。試合も0-1で敗れてしまう。
「自分には何もできなかった。それが現実でした。決してコンディションは悪くなかったけど、プレーだけじゃなくて判断や選択もうまくいかない。その理由を即座に考えて思考を巡らせていくほど、頭が動いて体が動かなくなっていく感覚。初めて経験するW杯のインテンシティと雰囲気の中で実力がついてこない状態で、自分が武器にしているものを全部出そうとした結果が前半だけでの交代でした。悔しかったです。でも、要は何も通用しなかったんですよね。まだ自分はあの舞台で活躍できる選手ではなかった」
森保ジャパンが第3戦でスペインを破ってベスト16に進出する中、そこから彼に出場機会が巡ってくることはなかった。初めてのW杯は悔しさを噛みしめる大会となってしまった。
「決勝トーナメント1回戦でクロアチアにPK戦で負けて、泣き崩れて悔しがったり、それを励ましている選手がいました。でも、僕はアジア予選にほとんど出ていないし、そこまでの過程で何も貢献できていなかったから、悔しがる権利すらないという感覚でした。そこから一気に練習して、すぐに払拭できるものでも、大きく改善できるものでもないのは分かっていたので、次の大会に向かって積み上げを継続していくリスタートになった感じです」
思い返せば、経験とデータの蓄積で自らをレベルアップさせてきた。鹿島アントラーズでプレーしていた当時もシーズンを重ねるごとに4得点、10得点、14得点とゴール数を増やし、ベルギーのセルクル・ブルージュでいきなり22ゴールを奪ってフェイエノールトへの移籍を勝ち取った。そしてオランダでも年々得点数を伸ばし、今シーズンはリーグ得点王を手にした。情報を蓄積し、それを活かすためのフィジカルと技術を身につけ、しっかりと結果を残してきた自負は揺るぎない。
そんなタイミングで再び世界に挑む大舞台が巡ってくる。森保ジャパンが掲げた目標は優勝。上田選手にその挑戦を成し遂げる準備はできているのか。「今回はアジア予選に多く出させてもらって、試合に出る責任と結果にも向き合ってきて、W杯はかなり現実的なものになってきました。チームの目標は優勝なので、とにかくそこに貢献したい。何より前回大会の経験があるし、個人的にやれることはやってきた。本当に充実した期間を過ごしてきたと胸を張って言えるので、まずはすべてを出し切りたいし、その上での結果が楽しみ。うまくいくかもしれないという積み重ねを続けてきた自信はあるし、結果を残せる権利もある。前回のW杯とは全く違う立場、クオリティ、選手になって今を迎えられているので、僕にとってこの3年半はすごく充実した時間になったと思っています」
決して大言壮語で虚勢を張るタイプではない。継続して地道に取り組み、自分と向き合ってきたからこそ感じられる手応えがある。あとは自らの得点確率を上げると同時にチームとして勝つ確率を上げていく作業だ。そこにも上田選手は世界を極める可能性をしっかりと感じ取っている。
「強豪国との距離が縮まってきたのは事実だと思うし、そういったチームにもボールを保持する時間を長くすることで勝率を上げられる。速攻でゴールを決めて勝つパターンを含めたら、五分五分以上の戦いができるかもしれない。そういった戦術を連動させて、チャンスを増やして、結果に結びつけていく作業は今の日本代表ならできる。世界に対しても勝敗は紙一重、勝利が現実的なところに来ていると思う」
等身大の自分と向き合ってきた中で確固たる自信を感じさせる。前回大会のデータは間違いなく今大会で活かされるはず。そして試合を重ねるごとにアップデートされて上昇カーブを描いていくことだろう。歓喜に沸く日本代表の中心に背番号18がいる。そんなシーンが増えれば、間違いなく日本代表は大きな目標に近づいていくはずだ。
Profile
上田綺世
うえだ・あやせ 1998年8月28日生まれ、茨城県出身。182cm、76kg。法政大学から鹿島アントラーズ、セルクル・ブルージュ(ベルギー)を経てオランダのフェイエノールトへ。今シーズンは25ゴールでリーグ得点王に輝いた。日本代表通算38試合16得点。
二人の活躍に注目を!
FIFAワールドカップ2026
6月15日(月)5:00 日本 vs オランダ@ダラス
6月21日(日)13:00 日本 vs チュニジア@モンテレイ
6月26日(金)8:00 日本 vs スウェーデン@ダラス
※すべて日本時間
アメリカ、カナダ、メキシコで共同開催される今大会は、DAZNで全104試合がライブ配信され、日本代表戦に加えて決勝、準決勝、3位決定戦が無料視聴可能。NHKやフジテレビ、日本テレビの地上波でも開幕戦や決勝、日本戦などが生中継される。NHKBSプレミアム4Kでは全104試合を4K放送。時差の関係でライブ視聴は日本時間の深夜~午前帯が中心に。
写真・伊藤彰紀(aosora) スタイリスト・野口強(Stie-lo) ヘア&メイク・須賀元子(星野事務所) 取材、文・青山知雄
anan 2499号(2026年6月10日発売)より





























