東京ヤクルトスワローズ・池山隆寛監督に聞く、「私と神宮」

プロ野球・東京ヤクルトスワローズの本拠地であり、学生野球の聖地でもある神宮球場は、今年で竣功100年。背番号1をつけて活躍した現役時代から時はめぐり、1軍監督として神宮の地に戻ってきた「ミスタースワローズ」、池山隆寛監督に神宮球場への想いを聞いた。


共に歩んできた球場。遠回りをしたけれど、またここに帰ってこられた

夏の午後、神宮球場のスタンドは灼熱の暑さだ。「あっついなぁ」と額の汗を拭いながらも穏やかな笑顔で撮影に応じてくれたのは、東京ヤクルトスワローズ監督、池山隆寛さん。1984年の入団以来、スワローズ一筋でプレーし、華麗なショートの守備と通算304本塁打を放った長打力でファンを魅了。野村克也さんが監督を務めた’90年代には、中心選手としてチームの優勝に大きく貢献した。豪快なバットスイングから、「ブンブン丸」の愛称で呼ばれていたことも有名だ。

そんな、神宮球場でもっとも輝いた選手の一人である池山さんが今年、1軍監督として神宮のグラウンドに帰ってきた。

「神宮球場は選手としての自分を成長させてくれた場所で、ホームという安心感も昔からあります。でも、私が入った頃、’80年代のヤクルトの試合は、まだお客さんが少なかったんです。今でこそヤクルトも人気チームになって、たくさんのファンが神宮球場に来てくれるようになりましたけど、当時はスタンドがガラガラっていう日も多かった。巨人戦のときだけお客さんが一杯に入るので、『よし、やってやるぞ』と闘志を燃やしたのを覚えています。やっぱり球場の雰囲気がそういう気持ちにさせてくれるんですよね」

スワローズといえば、「東京音頭」に合わせて傘を振る応援スタイルが名物。実はこの傘振り応援を考案したのは、ある伝説のスワローズファンだ。チームの私設応援団長だった岡田正泰さん。池山監督とも交流があったという。

1992年から1999年まで、「ミスタースワローズ」と呼ぶに相応しい活躍をした野手のみに与えられる背番号1をつけた。

「岡田さんは優勝祝賀会のときなどにいつも私のところに来て、声をかけてくれました。傘を振るアイデアを発案したのは有名ですよね。当時、お客さんが少なかったから、どうしたら応援が盛り上がるだろうかと考えてくれたという逸話を聞いて、とてもありがたいと思いました。最初は普通のビニール傘だったんですよ。それが今では応援してくれる人が増えたから、傘のサイズがずいぶん小さくなって、いろんな絵柄やキラキラしているのも売っていますよね。東京音頭のときにスタンド一面がキラキラと光っているのが、私にとっての今の神宮球場らしい景色。7回の攻撃前と、点が入ったときにも傘が開くので、縁起のいいものでもあります。選手たちがどんどん打って、点を取って、神宮球場を賑わせる。そういう試合をしたいですね」

傘の花が開いて快勝した日も、あまり開かずに負けてしまった日も、池山監督はいつも同じようにスタンドのファンに手を振りながら引き上げていく。

「勝っても負けても、その日の1戦を全力で戦った結果です。来てくれたお客さんにとっては、もちろん勝ったほうがいいでしょうけど、負けてしまっても感謝の気持ちを表したいと思っています。『ファンあってのプロ野球』というのは、野村監督の教えなんです。野村さんが監督になられたときは、長らく優勝から遠ざかっていたので、まず選手たちを知ってもらう、覚えてもらうことが大事だということで、私たちはメディアにもよく出ていました。ファンがいてくれるからこそ、という気持ちは今も変わりません。ヤクルトファンはあったかいですからね。選手たちにも、どんなにスケールの大きな選手になっても、その部分を忘れずにいてもらいたいと思います。そういう姿勢は、必ずファンの心に響くはずです」

いつでも池山監督の野球人生と共にあった神宮球場。開場100年を迎えたこのタイミングで1軍監督に就任できたことに、ひときわ縁を感じている。

「私自身、いろいろと遠回りをしましたが、監督として帰ってきたのが偶然にも神宮球場の100年という特別な年でした。こんな光栄なことはなかなかない、というか私一人だけですよね。自分の人生と共に歩んできた球場。ここに帰ってこられたことを、本当にうれしく思います」

Profile

池山隆寛(東京ヤクルトスワローズ監督)

いけやま・たかひろ 1965年生まれ、兵庫県出身。'84年、市立尼崎高校からドラフト2位でヤクルトスワローズに入団。2002年に現役引退後、楽天とスワローズでのコーチを経て、'20年からスワローズ2軍監督。'26年、1軍監督に就任。

Information

100年を記念する試合を開催

東京六大学選抜と東京ヤクルトスワローズによる明治神宮外苑創建百年記念奉納試合が11/14(土)に開催される。六大学の応援団も応援に参加予定。チケット等詳細はHP(www.jingu-stadium.com/lp/100th-game/)で。

記念企画展も要チェック

神宮球場における東京六大学野球、東都大学野球、プロ野球の試合や出来事に関わる貴重な資料124点を展示。いつもは神宮球場の球場事務所にいるつば九郎のぬいぐるみも出“鳥”中!

● 野球殿堂博物館/東京都文京区後楽1-3-61 東京ドーム21ゲート右 開催中~11/24(火) 10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで) 月曜休(祝日、東京ドームでの試合開催日は開館〈試合開催時~18:00〉) 大人 ¥800ほか TEL. 03-3811-3600

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写真・内田紘倫(The VOICE) イラスト・加納徳博 取材、文・黒澤彩

anan 2513号(2026年9月30日発売)より
Check!

No.2513掲載

応援の流儀 2026

2026年09月30日発売

目標に向かい頑張る人を見守ることで、心が躍り、パワーをもらえる──。そんな“応援”をテーマに制作する特集。さまざまな人のインタビュー&心理的考察から「応援」が私たちにもたらすものを探ります。

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