鈴木福「もう子役じゃない。俳優にならなくてはと自覚して意識が変わりました」

現在22歳の鈴木福さん。思慮深さも覗かせつつ、無邪気なやんちゃさとまっすぐさはそのまま。情報番組のパーソナリティからミュージカルまで、幅広く活躍を続ける今、俳優として想うこととは。


早くから大人の世界で過ごしてきたからか、22歳にして自分のことも周りのことも冷静に見つめる目を持った人。それでもふとした瞬間、無邪気な素顔をのぞかせ、年相応のやんちゃさも持ち合わせる。今の鈴木福さんは、どんな大人に?

── まずは間近に控えるミュージカル『RENT』について、フルオーディションで決まったマーク役ですが、参加したきっかけは?

以前からよくしていただいている山本耕史さんが日本版の初代のマーク役で、耕史さんにとってすごく大切な作品だと伺っていたので興味がありました。そんな時にオーディションに声をかけていただいて、ミュージカルも好きでしたし、ご縁を感じて受けてみようと思いました。

── ご覧になったことは?

ちょうどお話があった頃に耕史さんが『RENT』に出演されていたので、それを観ています。前情報も何もなく行ってしまったのですが、エネルギーがすごい舞台で、とにかく圧倒されました。

── ご覧になって、演じてみたい気持ちになったわけですか?

これを自分がやれたらどうなるんだろうと思いました。ただ正直、当時20歳で、歴代のマーク役の方々と比べて年齢も下だし、キャラクター的にも自分のイメージとは違う。実力も足りてないだろうから、受かるかわからなかったのですが、受かった時はとても嬉しかったです。

── 今、作品や役と向き合っている段階かと思いますが、どこに魅力を感じていますか?

マークは、映像作家として生活のために意に染まない仕事をするんですが、そこに満足していると自分で思い込もうとするんです。でも、それが本心ではないのはわかっていて葛藤する。僕自身、ずっと自分を信じて生きていけるかといったらそうじゃない。きっとご覧になる方も、自分を信じたい時もあれば、自分のことを好きになれない時もあるはずで、共感できると思うんですよね。他にも、それぞれの悩みを抱え、時にカッコよく、時にカッコ悪く、もがきながら必死で生きようとする個性的なキャラクターたちがたくさん登場します。彼らのそういう姿に、生きる意味や価値、生きることの本質とは、みたいなことを深く考えさせられるんです。もがく時間も大事だけれど、そのうえで「まあいっか」も、楽になってもいいよと肯定してくれる。そういう作品じゃないかと思っています。

── これまであまりミュージカルのイメージがなかったのですが、お好きだったんですね。

そうなんです。幼少期からディズニーのミュージカルやアニメーションを観て育ったんです。その頃から歌って踊るのが好きでしたし、舞台に立つのも好きだったんですよね。なので2017年に初めて『ビッグ・フィッシュ』という作品でミュージカルに出演した時、稽古中も本番もずっと楽しくて、毎日生き心地がいいというか、吸っている空気が美味しかったんです。その後、『カラフル』というミュージカルをやらせてもらった時は、音楽に感情を連れていってもらえるような感覚がありました。それまでは音程を大事に歌うことにばかり必死になっていたけれど、役としての感情を音楽にのせて歌うことの大事さに気づかされ、役者として成長させてもらいました。その後に出演させていただいた地球ゴージャスの舞台『儚き光のラプソディ』も含め、大事なターニングポイントにミュージカルがあるんですよね。

── 『カラフル』では、何がそうさせたんだと思います?

自分の中で明確に、あの日のこのシーンというのがあるんです。自殺した子が主人公の物語なのですが、その時のことを思い出すシーンですごく苦しくなって涙が出て歌えなくなってしまいました。自分で感情を作ってそこまで持っていくのではなく、自然と役と自分の感情が繋がった、今まで味わったことがない感覚でした。

お芝居のうまさって顕著に出るんだなと

── 昨年と今年、NYにも行かれたとか。

ミュージカルを観たいというのもありましたし、向こうで演技レッスンを受けてみたかったのもあります。でも一番は、『RENT』の舞台であるNYのイーストヴィレッジを、自分の目で見て、その空気を感じたいと思ったんです。劇中にNYに実在する地名や店名が出てくるのですが、実際に訪れたことで、自分の頭の中に景色が鮮明に浮かぶんですよね。

── 向こうのレッスンを受けてみて、得るものはありました?

たまたま僕が受けたのが、俳優だけではなく一般の方も参加するクラスだったんですが、プロだろうがプロじゃなかろうが、お芝居のうまさって顕著に出るんだなと思いました。何気ない仕草ひとつでも、それがニュアンスになる場合もあれば、無駄に感じる場合もあって。考えさせられることが多かったです。

── 意外にもアグレッシブなんですね。

僕たぶん、まとまった休みができたら、日本にいないタイプの人間だと思います。少し前から、自分の知らないことや知らないものを見たり経験したい気持ちが強くなっていて。今年の年始には、韓国で『RENT』が上演されていたので観に行きました。

── やはり行った先で、お芝居を観ることが多いんですね。

『RENT』でマークが「仕事に逃げている」と言われるシーンがあるんですが、最近、もしかして自分もそうなのかなと思ったりしています。前は好きでゲームとかもやっていたんですけれど、気づけば、仕事に繋がる以外の趣味の時間を削いでしまったなと。

自分にとって子役時代は大切な過去です

── 子供の頃からこの世界にいらっしゃいますが、自覚的にこの仕事をやっていきたいと思われたのは、どのあたりからですか?

あるタイミングくらいから、子役なの? 俳優なの? って聞かれるようになってきたんです。その頃は、子役って言われるのはちょっと…と思っていたけれど、じゃあ俳優ですと言うのもカッコつけている気がして、どっちでも好きに呼んでくださいと思っていました。ちょうどそんな15歳の時に中村義洋監督の映画に出させていただいたのですが、監督に「もう子役じゃないんだから、自分で考えてやって」と言われたんです。中村監督は、僕が5歳の時に初めて大きな役をくださった方で、成長を見せたいという気持ちで臨んでいただけにショックでした。子役は、基本的に指示を受けて動くのですが、僕自身が子役時代から何も変わらないスタンスで仕事をしていて、俳優になるための努力を何もしてなかったことにそこで気づいたんです。ちょうど周りから、「仮面ライダーを目指せる年齢になるね」と言われていた時期で、そこを目指せる俳優に、自分自身でなっていかなくてはいけないんだと自覚するきっかけになりました。

── 今年3月に亀梨和也さんのYouTubeチャンネルに出演され、「今年はとことんやってやろうという気持ちがある」とおっしゃっていたことについても伺いたくて。

ずっと、自分は主役タイプの役者じゃないから脇役で輝く人を目指していこうと思ってきました。どんな役でも役者として評価してもらえる場所をいただければいいと思っていたんです。でも『惡の華』というドラマで主演をさせていただいて、自分もこういう場所に立てる可能性があるのかな? と思ったんです。今年1月に主演した映画『ヒグマ!!』が公開されて、これから『RENT』があって、自分ももっと欲を持って目立つ場所を目指していきたいし、そのために頑張りたいと思って。それが自分の中での大きな変化でした。以前は、自分から前に出ていこうというような意識がなかったけれど、今はやれることを全部やって、作品の中の自分の居場所をもっと大きくしていきたいです。

── ただ、そういうポジションになれば、責任を背負う怖さもあるのかなと思いますが。

もちろんあると思いますし、大事なことですけれど、僕にとっては作品を一緒に作っている方々とどう濃い時間を過ごすかのほうが重要で、先ほど挙げた作品でそういったことに気づくことができたんです。

── それと繋がっているのかわからないですが、今回の撮影の際、「いつも心にケンティー(中島健人)を」とおっしゃっていましたが、あれはどういう意味ですか?

今年ドラマで共演させていただいて、健人くんは自分で目立ちにいって目立てる人じゃないですか。しかも見ていて元気になるし、映画が好きで映画の番組をやったり、海外でも活躍したいと言ってそれを実現させていたりする。僕はアイドルじゃないし、役者としてのタイプも違うので、彼と同じようにはなれないけれど、人としてのあり方みたいなものをお手本にしていきたい。年齢がちょうど10こ上なんですが、10年後の自分が、あんな仕事の取り組み方や前向きな姿勢であれたらと思います。

── 子役時代のイメージが強いですけれど、そのことについて、ご自身はどう考えていますか?

子役時代がなかったら今の自分はなくて、今の立ち位置にも置いてもらえなかったかもしれない。そう考えると、僕の中では誇りというか大切な過去で。それより、これからどうなっていくのか、次にどんな作品をやるか、楽しみにしてもらえるかどうかのほうが大事だなと思っています。

── 俳優のみならず、バラエティやMCなど幅広いお仕事をされていますけれど、ご自身の未来像はどのように考えていますか?

自分に興味を持ってもらえるような活動はしていきたいです。でもやっぱり、僕は芝居の現場から出てきた人間ですし、「鈴木福って何している人?」って聞かれた時に、最初に「俳優ですよね」って言われる人でいたいです。何より、自分のやりたいことや目標が、俳優業の中にあるんですよ。

Profile

鈴木福

すずき・ふく 2004年6月17日生まれ、東京都出身。幼少期に出演した'11 年のドラマ『マルモのおきて』が大ヒット。主題歌も担当し注目を集める。近作に、ドラマ『仮面ライダーギーツ』『コンビニ兄弟』、W主演ドラマ『惡の華』、主演映画『ヒグマ!!』など。来年3月開幕の舞台『四畳半の大宇宙』への出演が決まっている。

ミュージカル『RENT』は、10月15日に東京・シアタークリエで開幕。その後、広島、福岡、愛知、大阪にて公演。エイズがまだ不治の病だった20世紀末のNYイーストヴィレッジを舞台に、映像作家の卵であるマーク(鈴木)ら若き芸術家たちの葛藤や愛を描く。

https://www.tohostage.com/rent2026/

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写真・小笠原真紀 インタビュー、文・望月リサ

anan 2515号(2026年10月14日発売)より
Check!

No.2515掲載

思考力の高め方

2026年10月14日発売

AIやSNSの普及、発達に伴って、人間の思考力の低下が問題になりがちな昨今。カラダを鍛えて筋肉をつけるように、物事を考える力を身につける方法をレクチャーします。

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