
(左から)藤澤涼架さん、大森元貴さん、若井滉斗さん
6thオリジナルフルアルバム『POPS』のリリースに際し、大森元貴さんの発案で発足した「雑誌表紙ジャック」企画。ananはアルバム収録曲「瞞し」の世界観をグラビアで再現するとともに、インタビューでメンバーの内面に迫りました。Webではその一部、楽曲の制作秘話をお届けします。
何を大切にしているか見つけ直すきっかけにもなった
── 「瞞し」は、アルバムの中でも特に歌詞に注目が集まる曲になりそうだと感じました。本人としてもそんな予感はありますか?
藤澤涼架(以下、藤澤) ありますね。別れというか諦めというか、心の中の揺れにフォーカスした曲なので、受け取るものが一番大きいのはこの曲だろうと思っていました。
大森元貴(以下、大森) アルバムの中でも最初に書いたよね。当初はスタッフ間で「大森に何があったんだ!?」という空気すらあって。これまでは諦めがあってもその先に何を歌うか、自己解決する形で締めてきたんですけど、「もういいや」で終わっちゃう曲って、結構初めてなんです。30代に入るタイミングで、人間関係にしても自分の中の正義をどう掲げていくかがテーマで。僕は少し悲観主義的なところがあるので、全てがまやかしであると歌ってみたらどうだろう、というのが取っ掛かりです。
── お二人はこの曲を受け取った時、どう感じましたか。
若井滉斗(以下、若井) 僕と涼ちゃんが1か月スタジオにこもって、各々の楽器と向き合っていた時期で。たまに元貴が来て「そうじゃない、もっとアルバムには必要なものがあるんだ」と言ってくれている中で出てきた曲だったので、ちょっとドキッとしました。
大森 いや、それ嫌だよね。そんなつもりは全然ないけど。
若井 曲としても「もういいや」まで言い切るんだ、と思って。でも人間ってそうだよなとも思うし、結局はそうなれないのも人間だし。
藤澤 僕はもう、練習するたびに泣いてしまって。
若井 泣いてたね、涼ちゃん(笑)。
大森 初回限定盤の特典映像(アルバムの制作過程を追ったドキュメンタリー)をチェックしている時に、二人がよほど僕を心配しているんだなというシーンがあって。でも、6枚目のアルバムを出すと言った時に、このくらいまで正直に歌わないと嘘になってしまうなと思ったのが率直なところです。
── これまでの曲はどんなに悲観的になっても「それでも」と踏みとどまっていたのに、今回は「もういいや」で終わります。
大森 そう。これまでのミセスの曲を、下手をすれば否定しかねないことを歌っているんです。「この悲しみには価値がある」「この虚しさには意味がある」と信じてきたのに、もういいや、と。2番のサビでそれが書けた瞬間に「完成したな」と思いました。ただ、「もういいや」と言えるのは、そこに期待していたからで。何を大切にしているか見つけ直すきっかけにもなった。後ろ向きにも聞こえるけど、僕の中では前向きなんです。こういう考察すらも「もういいや」なんですけど。
── 言葉がストレートに刺さる歌とピアノだけの導入から、後半ではバンドが前に出てきます。
大森 アルバム全体で「バンドサウンド」を意識しているので、この曲もバンドが入ってからはかなり武骨にいきたいと話していました。こういうバラードでは若井が影に徹してくれるのが今までのセオリーだったのを、どう崩すか。1番の後のイリアン・パイプス(バグパイプの一種)はデモから入れていて、哀愁があるんです。故郷や帰る場所はそれぞれ別なはずなのに、同じ景色をみんな思い浮かべてしまうような。
藤澤 元貴が紡いだ言葉を大切に届けるのはもちろんですが、そこにメンバーがいて楽器を鳴らしている。そこから受け取れる感情を、このアルバムの中でも一番わかってもらえる曲だと思います。
── 6thオリジナルフルアルバム『POPS』では、新曲を1曲ずつ別の雑誌に託し、曲の世界観で表紙と撮影、インタビューをする試みを展開しています。この試みは、どういう経緯で始まったのでしょうか?
大森 まず、「そんなの見たことないよね」というワイルドアイデアから始まっています。僕らもアルバムを作っておきながら「この中にアルバム曲というものは存在しないよね」ということを考えていて。全部がリード曲という感覚で、全曲に独自のカラーがあって世界観があって、全部MVを作ろうと思えば作れる。それなのに見つけてもらえずにアルバム曲として消化されていくのは、悲しいしもったいない。新曲たちが輝ける場所を考えた時に、雑誌で深く話を聞いてもらったり、世界観を見せられたりするのは、僕が受け手だったら「狂っていて面白いな」と。そんなことは可能なんでしょうか、とお願いしたところ、ありがたいことに実現していただけました。
── アンアンに「瞞し」を選んだ理由はなんですか?
大森 アンアンって、自分を知ること、見つめることだと思うんですよ。人を知る、人が輝いているところを見る。ビジュアルだけじゃなく、そんな精神性を感じていたんです。「瞞し」もまさにそういうテーマの曲なので、アンアンでこの曲の話をしているのがいいフックを持って届くんだろうなと予想しました。こんな楽曲を預けたので驚かれたと思いますが、そこがいいかなと。「すごく新鮮だ」と思ったんです。

Profile
Mrs. GREEN APPLE
ミセス・グリーン・アップル 大森元貴(Vo/Gt)、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)による3ピースバンド。2013年結成、'15年メジャーデビュー。'26年1月からフェーズ3に入り、9月30日に3年ぶりのオリジナルフルアルバム『POPS』をリリース。同日からファンクラブツアー「Ringo Jam Tour“ SHADOWS”」を12月28日まで開催中。
大森元貴
おおもり・もとき 1996年9月14日生まれ、東京都出身。ボーカル&ギター。全楽曲の作詞・作曲を手がける。ソロでも活動し、8月26日に映画『白鳥とコウモリ』主題歌「灰色」を配信。俳優としてドラマや映画にも出演。
若井滉斗
わかい・ひろと 1996年10月8日生まれ、東京都出身。ギター。テレビ朝日『M:ZINE』のMC、NHK Eテレ『ハングルッ!ナビ』の生徒役など、個人でもレギュラー番組を複数担当し、幅広い活躍を見せている。
藤澤涼架
ふじさわ・りょうか 1993年5月19日生まれ、長野県出身。キーボード。今年1~3月放送のTBS日曜劇場『リブート』で連続ドラマ初出演。フジテレビ系『めざましテレビ』内の企画「涼ちゃんの動物メモ」が9月からレギュラー放送に。
anan 2514号(2026年10月7日発売)より































